見出し画像

第14節 湘南ベルマーレvs横浜F・マリノス 2019.05.31(完全マリノス視点)

このグラフは、試合別ロングパス数の推移。湘南戦はこれまでの試合と比較すると、ロングパスが明らかに増加しており、湘南に「空中を使わざるを得ない状況」を多く作られていたとも推測できる。

やはり、蹴れないポジショナルプレーはただのティキタカなのか・・・去年のマリノスなら、ビルドアップを妨害され、またもや為す術もなく敗戦を喫していたかもしれない。しかし今年のマリノスは違った。「ポジトラ(守→攻の切替)の改善」と「昨年よりバージョンアップしたビルドアップ」により攻撃の糸口を掴めるようになっていた。

スタメンはこちら。

◼️湘南ベルマーレの守備(1)

試合序盤を中心に多く見られた、GKまで追ってくる積極的な守備。前は逆サイドを切りながらプレッシャーをかけ、WBはSBにプレスへ行き、最終ラインはスライド。チアゴサイドではなく、ビルドアップ能力に長ける畠中サイドへ追い込まれる頻度が高いのは、畠中に渡る前にパギに利き足とは逆の足で蹴らせる狙いだったのか、頑なに畠中を使おうとしたマリノス側の意図なのかは分からない。湘南の最終ラインはマリノス1トップに対して3バックなので人がダブつき気味なのだが、このスライドによって効率的な配置に変化する。フォーメーションこそジュビロ磐田と似ているが、中身は名波式とは違うことが分かる。

ご覧のようにマルコスJrはシステム的には終始浮く形になっている。湘南的には「如何にビルドアップを妨害しカウンターへ繋げるか」、マリノス的には「如何に湘南のプレスをかいくぐり、マルコスJrへ届けるか」という分かりやすい構図で捉えることもできる。ポジショナルプレー vsストーミング、はじまりはじまり〜である。

◼️湘南ベルマーレの守備(2)

マリノスの先制後あたりから見せ始めた、深いところまで追ってこない守備。主にCBの体がサイド方向を向いた瞬間、CBが横パスを出す瞬間にプレスのスイッチを入れているように見えた。守備(1)に比べマンツーマン色が強く、マルコスを捕まえやすい。

局面その1

局面その2

前半は守備(1)と守備(2)を使い分け、マリノスのビルドアップを妨害。そして42分10秒、湘南のビルドアップ妨害がコーナーキックへと繋がり、その流れからマリノスは失点を喫し、同点に追いつかれる。

◼️湘南ベルマーレの守備(3)

後半48分あたりから、プレスの開始位置が更に後退し、おおよそ「CBの前の列にパスが出た時」となる。守備の基本的な仕組みは(1)や(2)と同じだが、プレスのスイッチが入るタイミングが遅いため、結果的に湘南は自陣に押し込まる時間帯が増える。最終ラインがスライドせず、2列目がボールサイドにスライドし対応するケースも増える。こうなるともはや撤退守備だが、ほぼマリノスにボールを支配されている中、1試合を通して(1)(2)をやり切るのは無理なので、(3)は省エネモードといったところ。ちなみにマリノスの2点目はこの(3)省エネモード時のもの。

◼️ポジトラ(守→攻の切替)の改善(1)

キャッチ後の素早いスローイングや、
速いリスタートでボールを運ぶ

(3分30秒、4分40秒、5分30秒、53分13秒、
53分28秒のシーンなど)

パギのキャッチ後の素早いスローイングは磐田戦でも見せていたように、今や欠かせない必殺技の一つ。また、被ファールも立派なポジトラ(守→攻の切替)なので、ファールでプレーが切れても集中を切らさず、相手の守備が揃う前の速いリスタートを狙う。うーん、これだけでも十分効果的。

◼️ポジトラ(守→攻の切替)の改善(2)

巷で噂の「マルコスシステム」の最大の強みは、ボール奪取からのカウンタールートが整備されたことかもしれない。整備されたと言っても内容はいたって簡単。「ボールを奪ったらマルコスへ」(実際にプレーしている選手にとっては簡単ではないかもしれない)。

「ボールを奪ったらマルコスへ」
05分27秒 奪取後マルコスへ
09分37秒 奪取後マルコスへ
15分00秒 奪取後マルコスへ
33分58秒 奪取後マルコスへ
(36分45秒 奪取後仲川へ)
37分34秒 奪取後マルコスへ
53分13秒 キャッチ後マルコスへ
74分14秒 奪取後マルコスへ
など

プレスを巧く嵌められビルドアップがうまくいかなくても、これだけチャンスの芽を作り出せるようになったのはかなり大きい。ここにきての総合的なポジトラ(守→攻の切替)の改善は、6シーズンぶりの優勝争いに加わっていく上で大きな武器になるだろう。

このグラフは、試合別パス総本数とパス成功確率の推移。12節のマルコスシステム導入後は、パスの総本数が減少傾向にある。これはポジトラ改善で「縦に速く」なり、後ろで作り直すケースが減ったからなのだろうか。今節のパス成功確率が今シーズン最低水準なのも、同様の理由(後ろで作り直すケースが多い方が、当然パス成功確率は高くなる)なのかもしれない。もちろん、湘南のプレスが効いていたことも関係しているのだろうが。

◼️プレスのかいくぐり方

湘南の前2枚プレスに対して、和田や扇原(天野)、喜田らがアンカーポジションに入り、菱形を形成することで数的優位を作り出し、プレスを無効化できたシーン(13分42秒、14分2秒、47分18秒、61分55秒など)もあった。素晴らしかったのは14分2秒の扇原とティーラトンとマルコスの動き。

47分18秒のシーンも素晴らしい。アンカーポジションを取った喜田に対し菊池がマークにつく(釣り出される)が、CB間に落ちた天野とのワンタッチのパス交換だけで、簡単に最初のプレッシャーラインを突破できてしまう。4月の札幌戦などでは、これ(アンカー周辺にボールを当てたところ)を引っかけられロストするシーンが多かった。相手の矢印の逆を突く良いプレー。

ちなみに昨シーズンの似たようなシーン。

また、湘南が上述の守備(3)になるとハマの横浜駅(喜田)がラッシュを迎え、58分35秒の神乗り入れ(神フリック)や、59分20秒の神乗り換え(神ターン)でマルコスへボールを輸送しチャンスを演出し始める。

-------------------------

○八塚さんマリサポ説○

唐突だがここで小休憩を挟む。八塚さんマリサポ説である。

①フュージョンのゴールセレブレーションに倣い「マルゴチアリンス(9分6秒)」「エジガルジュニオール(11分13秒)」といった独自のフュージョンキャラを生み出す(選手をフュージョンさせ、わざと名前を間違えている説)


②「遠藤の仕掛け・・・(これで湘南は)ENDだっ!(9分50秒)」という「イ・チャンス!いいチャンスだ!」にも劣らないダブルミーニングによるマリノス贔屓とも捉えられ兼ねない実況(競馬における三宅正治・馬場鉄志の名実況ばりに仕込んでいた説)


③ドラゴンボールのパフォーマンスはマルコスJrのゴール時とは分かっていながらも、仲川の時もやってくれるかも・・・と淡い期待を抱いてしまうも、やっぱりやってくれず「出ないか・・・!仲川でしたからねぇ・・・」と落ち込むお茶目さ

これだけの状況証拠が揃っているので、八塚さんはマリサポである。

-------------------------

◼️先制点~浮いたマルコスJrへ~

得点シーンについて(1点目)。きっかけは10分46秒、コーナーキック後の作り直し(扇原のチアゴへのバックパス)。バックパスを選択することで、完全撤退で縦に圧縮されているスペースを広げる。バックパスが許せない人はアコーディオンを想像してみてほしい。蛇腹を広げ空気を取り込まなければ、音は出ないのだ(それっぽいことを言ってみたかっただけ)。※1

そして10分56秒、ボールは再度扇原を経由しチアゴ→和田へ。指宿は武富の位置を確認し、連動したプレスをかけられないと判断したのか、深く追うのをやめる。

これにより湘南は図ってか図らずか撤退守備のような状況になる。プレスに行かないということは、サイドへ追い込めない為スライドが行われない。スライドが行われないということは湘南は最終ラインで1人ダブつくし、ティーラトンも浮く。

そのまま左サイドを使ってもよさそうなところだが、まるでマルコスJrがフリーになるのを待っているかのように、和田はマルゴ・・・じゃなかったチアゴへ戻す。すると、マルコスを見ていた山口が体の向きを変える。チアゴにドリブルで運ばれても困るので食いついたのだろう。そのままマルコスはライン間でフリーに。

「ktkr(キタコレ)!」と言わんばかりにチアゴはフリーになったマルコスへ。あとはご存知の通り。


(※1)それでもまだバックパスが許せない人は56分55秒のシーンも見ていただきたい。これもまさにバックパスによりアコーディオンの蛇腹を広げ空気を取り込んだシーンで、パギがロングパスで蛇腹を一気に押し込み、最終的に「渓太イケー!」という音色を奏でた(言ってみたかっただけ)。ってあれ、これ蹴れるポジショナルプレーじゃない?

いや!やっぱりオラ、バックパス許せねぇ!という人がいたら、81分56秒の蛇腹シーンを見て、己で「渓太イケー!」という音色を奏でてみて欲しい。

◼️決勝点~復活のダイアゴナル・ラン~

得点シーンについて(2点目)。
その前に、まずは61分10秒の天野のダイアゴナル・ラン。


そしてその1分30秒後、今度は渓太がダイアゴナル・ランを決め、これが決勝点に繋がる。

天野のサイドチェンジでスライドを強いて、幅を取るティーラトンでWBを釣り出しチャンネル(WB-HV間)を広げる。相変わらず絶妙なティーラトンの溜め、そしてエントレリネアス(ライン間)からチャンネルめがけてダイアゴナル・ランを決め、切り返しも完璧だった渓太。素晴らしいゴールじゃないか!

◼️感想

すげぇ!すげぇぞ我が軍!
以上。


To Be Continued
(清水戦へつづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?