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【イベントレポ】2021.10.11小泉文明氏・白井智子氏『20代の過ごし方』

「今日死ぬかもと思って生きている」挑戦し続ける大人の根幹にある価値観

◆本イベントは東日本大震災の月命日である10月11日(土)に開催された【Next Action➔ Social Academia Project】のレポートです。震災から10年7カ月を迎え、新たにゴールデンエイジと呼ばれる16歳から29歳までの若者が次の10年の復興を実行していくためのプロジェクトです


1.お二人の紹介

株式会社メルカリ 取締役President(会長) 小泉文明氏
 早稲田大学卒業後、金融業界に就職し株式会社ディー・エヌ・エーや株式会社ミクシィ等ネット企業のIPOを担当。2006年から2012年までミクシィにジョイン。退任後はいくつかのスタートアップを支援し、2013年よりメルカリに参加。現在は鹿島アントラーズ・エフ・シーの社長も務める。

NPO法人新公益連盟 代表理事 白井智子氏
 幼少期を海外で過ごし、2つの国の教育のギャップに直面した経験から教育領域に進む。1999年、沖縄でのフリースクールの立ち上げに参加以来、フリースクールの概念を広め続ける。2020年からは新公益連盟の代表を務め、ソーシャルセクターを広く束ねて連携を強化し、複雑な課題に取り組む運動を推進している。

2.対談

1)お二人のこれまで
〈お二人の20代〉
小泉さん:
 大学卒業後、投資銀行に就職。株式上場のアドバイザー業務としてディー・エヌ・エーやミクシィなどネット企業をクライアントとする部署で働き、最終的には郵政民営化とミクシィのIPOに同時に関わっていた。郵政民営化は出世コースだが重要なことは上層部の意思決定で進むため、誰でもできる仕事に感じた。しかしミクシィやディー・エヌ・エーは会社として規模は小さいが世界へ出ようと頑張っていて、常に転職の誘いがあり必要とされていると感じた。そこで自分にしかできないことをやろうと思い、26歳で退職。「誰かがやれるなら誰かに任せて、自分は自分にしかできないことをやる」というのは自分のキャリアの軸となっていて、20代で意識していたこと。

白井さん:
 4歳~8歳までオーストラリアで過ごして、日本とオーストラリアの2つの国の教育を経験した。オーストラリアでは一人ひとりの個性を伸ばす教育を受けた。当時の日本は校内暴力が激しく、それを抑える為に管理しようという時代。大学まで進んだが1つの枠組みに当てはめて優劣を決める日本の教育に限界を感じ、卒業後は松下政経塾に入った。現場を知るために23歳で小学5年生のクラスに潜り込んで生徒たちと過ごした。当時は教育政策が子どもに届くまで10年かかる時代で、目の前で暗い顔をしている子どもを救うために学校を作りたいと考えるようになった。

 25歳で学校を作ろうと考えたときに、松下幸之助の「夢があったら語りなさい。そうすると応援者が集まってきて、情報も集まってきて自然と叶っているもの」という言葉をやってみた。そうすると1ヶ月で沖縄アクターズスクールのオーナーに出会い、10ヶ月後に生徒130人のフリースクールを開校した。フリースクールでは様々なバックグラウンドを持つ生徒一人ひとりと向き合って個性を伸ばしていくうちに、良くなりたくない子どもなんて一人もいないこと、きっかけさえあったらすごく伸びていって、素敵な子どもたちが育つことがわかった。

〈夢を語る〉
小泉さん:
 夢を語ることは愛され力のひとつ。方向性を示し、周囲の賛同を得るために、リーダーは夢を語らないといけない。メルカリも当初は無謀だと言われ、資金調達が難航していたが、言い続けていると共感してくれる人が出てきて投資をしてくれた。夢を語ることは恥ずかしく感じる方もいるかもしれないが、真面目に聞いてくれ、助けてくれる方もいる。

白井さん:
 私も自分が関わった法律が5年前に制定されたけど、フリースクールの立ち上げで大人から反対され続けていた時代にはそんなこと夢にも思っていなかった。色々な偶然が重なって起こった変革だと思う。でも現場から言い続けてきたこと、やり続けてきたことはもちろんベースにあると思う。

小泉さん:
 成功の理由をよく聞かれるが、わからない。運の要素もあると思う。ただ少なくとも自分たちでは何かしらやっていて、やりつづけていて、信じていた。だからやり続けること、何でもいいから1歩踏み出すことはすごく大事。そうすればいつか何かに引っかかるケースがあると思う。

2)今の社会と当時の社会の違い、今後どう変わっていくか
小泉さん:
 受験戦争的なレールが今より強烈だったが、インターネットの発達している今は多種多様なコミュニティや情報がネット上にあり、自らを自由に表現できる。でも逆に今の子たちは自分を表現するもの、好きなものを早いうちに見つけて突き詰めていかないと他人と比べて焦っちゃって、しんどいだろうと思う。自分の経験ではあるが10代の頃好きだったものが今につながっているので、まずは好きなものを見つけることが大事。

白井さん:
 昔から変わらず軍隊を育てるような教育、工場の労働力を育てる教育が続いている。当時はそれを疑問に思う人が少なかった。でも今は、既存の教育や社会システムが予測不可能な現代に対応していないという考えが色んな人の心に刺さる時代になった。今がその潮目だと感じてますます夢を語っている。いろいろなことがひっくり返る時代を迎えている。

3)次につくりたいムーブメントについて
小泉さん:
 メルカリはグローバルにしたいという夢があって、鹿島アントラーズでは2つの軸でやりたいことがある。1つはエンターテインメントをテクノロジーの力で次のフェーズに進めたい。テクノロジーの進化で余暇が増えることは本当に幸せなのかという疑問を持った。仕事から得られる承認欲求や満足感をどう生活の中から得られるかと考えたときに、スポーツの応援などエンターテインメントの感動値を最大化させて、テクノロジーの進化の裏にある心理的な不幸をケアしたい。

 もう1つは「まち」というプラットフォームを変えたい。鹿嶋市は日本の基礎的な自治体のサイズで、サッカーチームは共感を呼びやすい。加えてスタジアムで実験もできる。大資本主導型で大きなコンセプトを打ち出すのではなく、一歩一歩着実に進めていって10年後振り返ったらデジタル化されているまちを実現したい。

白井さん:
 公教育が社会的格差を生み出している現状を変えることに次の半生を捧げていきたいと考えている。政策に関わってみて気づいたが、本気で法律を変えたいと動いている議員は実は数人で、手が届かないように思える政策についてもその人たちに話すと動いてくれる。予測不可能な時代の今、現状を学びたい官僚の人たちとも直接繋がれる時代になってきている。格差を解消し、どんな子どもでも自分に合った教育に出会える世の中になることをみんなで言って動いていけばなんとかなるんじゃないかと思っている。

3.質疑応答

・長年プレーヤーとして活躍される中で、選択をする際の基準は?
小泉さん:
 企業活動の中では完全にミッションドリブンを意識している。人生においては、自分にしかできないことや自分がやらなければいけないことという視点をすごく大事にしている。明日死んでもいいように毎日チャレンジして楽しんでいる。

白井さん:
 私も小泉さんと同じで「今日死ぬかも」と思って生きている。仕事やプライベートなど選択で迷うことも多いけど今日死ぬと思ったらどういうことを言うか、やるかという風に考えている。そして結局はミッションドリブン。自分の目指す教育を実現するにはどうしたらいいか。夢や理想を追い続けるのは実は苦しい部分もあるけれど、どうしたらそれを楽しくやれるかを今は考えている。

小泉さん:
 自分に素直に生きるって言い訳ができないから実は結構大変だけど、それをやり続けると自分との向き合い方も見えてくるし、意思決定のレベルが変わってくる。

4.お二人から最後にメッセージ

小泉さん:
 みんなが思っている以上に周りはみんなを気にしていないから、自分とどう向き合うかという考え方が大事。僕は失敗も成功確率があがる成功へのプロセスだと思っている。結局は自分のやりたい軸で突き進むことが大事。唯一の失敗はその歩みを止めてしまうこと。自分の軸を決めて楽しんで進んでいけると、振り返ってみたときにいい人生だったと言えるのではないか。

白井さん:
 今の小泉さんの言葉は、松下政経塾の「五誓」の中にある「成功の要諦は成功するまで続けるところにある」という松下幸之助の言葉と重なる。
 何万人かの人に出会ってきた中で、現在まで友達として続いている人は、それなりに成功して実績も残していて、残りを消化試合として生きることもできるけど、そこで満足せず挑戦をし続けている人たちが多い。そういう人たちが結局、世の中の価値観を変えていくと思う。


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