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ラジャで日本人5選手が出場、中村慎之介は流血の激闘~2023年10月28日のRWS

2023年10月28日(土)にラジャダムヌンスタジアムで行われたRWS(ラジャダムヌン・ワールドシリーズ)には、メインイベントで現役ラジャ王者と対戦した石井一成を始め、日本人選手5人が出場した。

日本人選手5人が戦ったのは、いずれも3分3ラウンドのノンタイトル戦で、日本人選手側の試合結果は、2勝3敗だった。勝利したのは、日本人ムエタイ兄弟、石田そうま石田ゆうまで、共に初回KO勝ちを収めて観客の注目を集めた。(下記リンク(タイランドハイパーリンクス)参照)

出場した5人の日本人選手の中で、タイに拠点を移して7年間と、長期間に渡り現地で選手活動を続けているのが、”侍ファイター”中村慎之介である。今回のRWSでは直前でキャンセルとなったタイトルマッチ(ラジャ認定フェザー級タイトルマッチ)のピンチヒッターとして試合の直前に出場のオファーを受けた。(下記リンク(アウェーで40戦~)を参照)

中村自身は、ラジャでの試合経験は多いものの、近年は毎週金曜などに行われる”ラジャダムヌンノックアウト”への出場が多く、ラジャ最高の舞台として盛り上がっている毎週土曜のRWSへの出場は、今回が初めて。

10月28日のRWSの全カード、日の丸が並ぶ

RWSは世界中にDAZNで配信されるとあって、中村自身が、広く名前を売るチャンスでもある。中村は、元々RWSとは別に試合が組まれる予定もあり、試合準備はしていたとのことで、体重もライト級のリミットにも近く、試合前三日前のオファーにも拘わらずRWSへの出場を決めた。

中村は今年に入っては、クラビ島でのワンデートーナメントやコラートでの刑務所ファイトなど、厳しい遠征試合もこなしてきた。しかしながら、前戦は”ラジャダムヌンノックアウト”でイラン選手に痛烈なKO負けをして、暫くは休養し、ダメージを抜いていた。この日までに約半年のブランクがある。

試合前にバンテージを巻く中村
入場前に精神統一

中村の戦線復帰となる、中村対ジェレミー・デヴェレスはこの日の3試合目に組まれたが、その前の2試合目では中村と同じくRWS初戦の日を迎えた、ムエタイ兄弟の弟、15歳の石田ゆうまが相手のタイ人選手が失神する、派手な初回KO勝ちを飾った。

続く中村は31歳。今回は、急遽決定した再起戦ではあるが、勝てば世界に向けてPRできるなど、リターンは大きい。対戦相手のジェレミーはパリ出身のフランス人で、これまで17勝8敗1分と発表されていた。一方の中村は37勝16敗2分。

ジェレミーと共に、試合前にワイクルーを舞う中村
赤コーナー側からの中村、選手コール中

試合が始まり、1ラウンドは中村が積極的な攻撃を魅せ、左右ミドルキックと組み合ってからのヒザが有効、左ボディブローも何発か決めて、3人のジャッジが共に中村を支持した。RWSでは、全ラウンドオープンスコアで採点が発表され、劣勢側は挽回を余儀なくされて熱戦となるパターンも多い。

2ラウンドは、ジェレミーがパンチ、ミドルキックと前蹴りを効果的に繰り出し、中村になかなか距離を縮めさせない。距離は常にジェレミーで、中村は1ラウンドのように首相撲とヒザ攻撃の展開には持ち込めず、ミドルキック、前蹴りもクリーンヒットしない。このラウンドはジャッジ3名が共にジェレミーを支持し、19-19と採点は互角となった。

会場に採点が発表され、3ラウンドが「Judgement round」として、このラウンドで試合結果が決定すると、観客を煽る。このラウンドも2ラウンドのような展開が続くが、2分過ぎ、右の縦ヒジを額に被弾した中村は、額をカットして流血、そのまま試合は続行されたが、顔面血まみれで戦う姿は悲愴感を漂わせる。スイッチが入ったのか、猛攻を仕掛けて右ストレートでジェレミーを効かせ、パンチの連打でしつこく攻める。ジェレミーも打ち返し、中村はパンチを喰らうも両手を挙げて首を振り、「効いていない」「打ってこい」とジェレミーを挑発すると観客は沸きあがる。

攻め続ける中村
ジェレミーも左フックを返す

中村は打たれながらも前に出て、攻めだるまとなったがジェレミーを仕留めきれず、試合終了のゴングが鳴った。判定はどちらが勝ってもおかしくない競った内容だったが、レフェリー3者はジェレミーを支持し、3者共に29-27の採点でジェレミーが判定勝ちを収めた。

会場のスクリーンに映し出された、判定の結果を待つ2人

試合には負け、ラジャで連敗となったもののRWSの初戦で、観客を沸かせた中村には、再度RWS出場のオファーもあるだろう。テレビ解説も3ラウンド終盤の猛攻に”サムライ魂だ!”と連発していた。

試合を終えてリングを降りる中村

試合翌日のインタビューでは「額は15針縫ったが、それ以外はダメージもない」とした中村は、額の傷が癒えた後にすぐ、戦線に戻る予定で、「オファーがあればどこでも試合はする。コラートの刑務所やカンボジアでもリングに上がってきた」とコメントしている。

RWSスポンサーの薬用クリームのメーカーより、「今日の傷」に選ばれた額のカット。
実際の縫い跡が痛々しい。

この日は、日本でも活躍する元ラジャ王者の奥脇竜哉、RWSの前戦では元ラジャ王者JJにKO勝ちした石井一成も出場したが、それぞれ判定負け。

石井一成(イッセイ・ウォーワンチャイ)対パントーの試合も白熱

石井一成は1ラウンドに、現ラジャ王者のパント―・ポー・ラクブンとのパンチで腰から落ちるダウン、その後果敢に攻めるもパントーがラジャ王者の技巧を魅せてダメージを逃し、決定打を許さない。全ラウンド勇敢に攻め続けた石井が一歩及ばなかった。それぞれが持ち味を発揮した好試合となった。

※ラジャダムヌンスタジアムで現地観戦、写真は著者撮影のもの、中村陣営撮影のものと、RWSのYoutube、Instagram から。

↓ 中村慎之介対ジェレミー動画(ハイライト)

↓ 石井一成対パントー(ハイライト)




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