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オウミさんの畑

このあいだ、オウミさんの畑へ、はじめて行って、3時間ずっと青菜を採っていた。

雑草しか生えてないじゃんと思った畑には、よく見ると、たくさんの生き物がいる。赤カブっぽい水菜、水菜っぽいつぼみ菜。半分が白い、菜の花。ハコベに、オオイヌフグリ。名前の分からぬ植物たちとネズミの穴。

『カブと水菜とつぼみ菜と、っていっぱい植えて自然交配させたんだよ〜。見たことない新種が生まれるの、おもしろいよねえ』

オウミさんが言うとおり、植えたはずのものと違うもの、見たことない形、葉っぱのものがたくさん生えている畑。同じものは1つもなくって、共存していた。
おいしい形はどれだろう、とオウミさんはいつも探しているらしい。

植えたタネと違うものが生えてきたら、タネ屋に文句を言う人だっているだろうに、オウミさんはすごく楽しそうだった。
オウミさん、きっと醤油ラーメンを頼んだのに味噌ラーメンが出てきた、となっても、「こりゃうんまいなあ」ってスープまでおいしそうに飲んでしまえるんだろう。最後までたっぷりと楽しめる人なんだろうなあ。


こんな感じ、いいなと思う。予想外に伸びたほうへ、思いがけず舞い込んだ場所で。そこで一生懸命うごいて、叫んで、あくまで自然に、たのしいと思える。そんな生き方がいいなあと思う。

やりたいことをやることが理想の生き方。そうやって生きていくべきじゃない?と謳われている昨今。やりたいことの道筋を自分できめて進んでいくのは、たしかに素敵なことで、きっと楽しい生き方なんでしょう。
だけど、自分の意図しない、なぜか来てしまった場所で、懸命にチカラを発揮しようとすることだって美しいんではないか。その場所で、笑っていられるのは強さではないか。

いつだって「やりたいこと」の選択を求められている気がするけれど、急いで答えを見いだす必要はきっと無い。
今いる場所で、根を張ろう、花を咲かそう、と努力をつづけながら、ふわりと風に乗っていける。そんな姿勢でいられたらいいな、と思う。

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