東大芸人     episode8:はまぐち

NSCで一番仲が良くなったのが笑鷺というコンビだった。笑鷺は大阪出身のあべとはまぐちからなる同級生コンビ。のちに僕はこの二人と、タイミングは違うが同居生活をすることになる。

はまぐちはなかなか辛い人生を送っている男だった。顔は昭和の男前と言った顔をしているのに、なぜか今まで彼女はおらず童貞。NSCに入り、これから芸人として走り出そうとしている時に、両親が自己破産をして、はまぐちが親に仕送りをしなければならなくなった。それでも、少しでも自分の借金を減らすために昼と夜のバイトを掛け持ちでやっていた。はまぐちには弟がいるのだが、最近学校にも行かなくなったらしく、引きこもりがちで弟にも仕送りをしていた。

そんな話を聞いていた時、はまぐちの携帯に知らない番号から電話がかかってきた。はまぐちが電話に出ると、それはアダルトサイトの請求の電話だった。

「もしもし。お前。うちのアダルトサイト見てたよな?」

「えっ?」

はまぐちは心当たりがあったようで、素直にそれを認めてしまった。

「悪いけど、その料金の未払いが50万溜まってるから、今すぐ払ってもらえる?」

「えっ?ほんまですか?」

「そうそう。今銀行から振り込める?」

あきらかな架空請求だ。今ならはまぐちも無視するだろうが、当時まだそんな経験もした事がなく、世の中に架空請求という詐欺がある事も知らなかった。はまぐちはその架空請求を信じてしまい、電話を切らず話を続けてしまったのだ。

「すみません。今すぐ50万は厳しいです。。」

「50万ぐらいあるやろう?お前何やってるやつやねん?」

「今NSCっていうお笑いの養成所に通ってます。」

「お前芸人の卵なんか。じゃあもう30万でいいから今すぐ払え。」

「30万もちょっと。。」

「何とかなるやろう?親に頼むとか。」

「両親はこの間自己破産してしまいまして。。」

「・・・そうなん?」

「はい。借金が出来ないので僕が借金してお金を送ってあげてるので」

「ほな女でいいから。芸人やったら女は何人かおるやろ。」

「僕まだ童貞なんです。」

「・・・そうか。」

「はい。」

「兄弟はいる?」

「弟がいます。」

「じゃあ弟に貸して貰ってくれる?」

「弟は今引きこもってしまいまして、弟の分の学費も僕が貸してあげてる感じなんです。」

「・・・そうなんやなぁ。」

「すみません。」

「いやいや。謝る事ちゃうねん。」

「でも30万も用意出来ないんで。」

「30万なんか別に払わんでええよ。」

「そうなんですか?」

「当たり前やろ。お前の家族はお前がしっかりしなあかんねんぞ。何騙されかけてんねん。」

「はい。すみません。」

「いいか?こういうのは架空請求と言って、本来払う必要のないお金やねん」

「はい。」

「こんなんある程度知識あったら防げることやぞ。」

「すみませんでした。」

「まぁまぁ。兄ちゃんも人生色々大変やと思うから。でもこの先絶対いい事あるから頑張れよ。」

「そうですかね。」

「そらあるって。こんな仕事してる人間が言うのもあれやけど。生きてたら絶対いい事ある。俺は兄ちゃんのこと応援してるから。元気だせ。」

「ありがとうございます。」

「ほな頑張れよ!」

そのまま電話は切れたのだ。はまぐちは自分のあったことをただ素直に答えて、アダルトサイトの架空請求から逃れる事が出来たのだった。悪い仕事をしているやつにも、良いやつがいるもんだ。悪いことしているけど良いやつだなんて。人間は難しい。


                             【続く】

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