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予想もしていない答え。

お笑いの仕事をしていると、いつどのタイミングで仕事が入るかも分からないので、基本的には実家に帰ることは少なくなってしまう。

久しぶりに帰れたときは必ず墓参りをするのだが、大好きだったおばあちゃんが亡くなってからは、墓のある京都の田舎に帰る機会に恵まれず、半年ほど経った夏の終わりにようやく行くことが出来た。

大阪で放送のあったABCお笑いグランプリの決勝を見てくれていた祇園花月の支配人が、僕らを東京からわざわざ呼んでくれ、そのお陰でようやく墓参りに行けたのだ。僕の田舎は「下山」という駅から車で15分ほど走ったところにある。そこは小さな集落で、おばあちゃんが眠っている墓はその田舎の裏山にある。霊園なんて整った施設ではなく、僕らのご先祖さまの墓しか並んでいない小さなプライベート霊園。昔から街頭もない場所で、夜は本当に星がきれいだ。

そういえば小さい頃からずっとここに墓参りをしてきたけれど、よくよく考えたら”おじいちゃん”と”ひいおばあちゃん”、そして”ご先祖様”の墓しか分からずに僕は墓参りをしていた。おばあちゃんの墓も加えて4つの墓はわかるが、このプライベート霊園にはその倍の墓があるのだ。両親もこどもに説明しても分からないと思ってわざわざ教えなかったのだろう。恥ずかしい話だが、僕はそれ以外の墓を、とりあえず僕らと関わりのある大切なご先祖様と理解して、線香を供え、手を合わせていた。

しかしもういい大人なので、この機会にちゃんと知っておきたいと思った僕は、今回の墓参りで母親に他の墓のことを聞いた。

「おかん。俺よく考えたら、おじいちゃんとひいおばあちゃんとご先祖様のお墓しか分かってなかったわ。ほかのお墓が誰のお墓なんか教えてくれへん?」

すると、母親は黙りこみ下を向いてしまった。辺りに気まずい空気が漂う。その場を沈黙が支配し、もう秋がそこまで来ているのだろうか、ひぐらしがよく鳴いているのに気がついた。「よくない事を聞いてしまったのだろうか。」僕は急に不安になり、心臓の鼓動が少しはやくなっているのを感じた。しばらくしてから、母親が僕の持つ線香を「貸して。」と言って取り、僕が分からない誰かの墓の前で座り、その線香を供えてこう言った。

「おかあさんも分からへんねん。」

それは僕が予想もしていない答えだった。

  【終わり】

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田畑勇一(田畑藤本)

田畑藤本というコンビでお笑いをやっている田畑の方です。普段は相方の『東大』という肩書きが光過ぎていて全く輝けておりません。学歴社会の構図を日本一食らってる男としても有名です。ここに来たあなた。よく僕の方を見つけたね。

1人で誕生日ケーキ🎂

お笑いの世界で生きていると、何故かそれに反して悲しい事が沢山起こります。それを綴らせて貰ってるマガジンです。
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