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局所免疫療法と紫外線治療

局所免疫療法には時間がかかる。そして、時間をかけたからといって、誰にとっても効く治療ではない。

でも、円形脱毛症の治療法のなかでは、比較的効果をあげているらしい。ガイドラインでの推奨度は3つしかないB<行うように勧める>(残りの2つはステロイドの局所注射と外用)。ちなみに推奨度A<行うように強く勧める>の治療法はない。

また、副作用の心配が少ないのも、利点らしい。

そんなにおススメのなのに、保険がきかない治療なので、そこそこお金がかかるのも、覚えておきたいところ。

局所免疫療法は、脱毛班にかぶれを起こす化学薬品(SADBEやDPCP)を塗り、脱毛の炎症からかぶれの炎症に変えて、発毛を促す(化学薬品を使うから保険がきかないようだ)。しかし、ただ塗っていけばいいのではなく、最初に体に薬品を覚えさせ、反応があれば、治療が可能と判断され、薬品の濃度を調整していく…というふうに手順がある。

感作

まずは「感作」と呼ばれる、薬品を体に覚えさせるパッチテストを行う。頭部に(腕などにする場合もあるようだ)薬品をパッチにして塗り、2日間そのままにして、「この薬品=かぶれる」という体質をあらかじめ作っておく。パッチは2日間張ったままにして置き、その間はお風呂やシャワーは入れない。

薬剤にはSADBEとDPCPの2種類あるが、私は有無をいわさずDPCPだった。薬品の反応の度合いが大きすぎた時のために、ステロイドの内服、外用を念のため出された。

2日後パッチを外してみるとポコッとパッチの部分の痕が赤く腫れていて、結構痒みもあった。外用を塗ったが、内服薬を飲むほどではなかった。

赤い腫れが起こらなければ、この先の手順には進めない。

薬剤の濃度を決める

パッチをした2週間後、医師により感作が確認されると、本格的にDPCPを患部に塗っていく。私は全部抜けているので、全頭に塗ってもらう。

この時点ではDPCPの濃度は決まっておらず、薄いものから少しずつ濃くしていき「塗ると2、3日ほんのり赤くて痒い」状態になる濃さをみつけていく。この濃度を決めるために毎週1回病院に行って薬剤を塗ってもらい、濃度が決まるまでに3か月近くかかった。0.1%から3%くらいまで試したが、結局0.3%の濃度で落ち着いた。

薬剤を塗ってわざとかぶれさせているので、当然痒い。特に1回目の時は薬を塗った頭だけでなく、首まで赤くなり、唇も腫れた。ジュクジュクしてしまう人もいるらしいが、私はそこまではいかなかった。「アトピー体質の人は反応が大きくでるかも」との噂を聞いていたが、なんとかそのあたりは大丈夫だったようだ(DPCPだったからかな?)。濃度を上げていく過程では、毎回痒くて仕方なく、夏だったこともあり、アイスノンで頭を冷やすことも多かった。3%ぐらいになると痒いだけでなく、頭全体がかなり腫れた。また腫れが少し収まると、日焼け後のように皮がたくさん剥けた。感作の時は2日お風呂に入れなかったが、普通に塗っていく段階でも、薬を塗って半日ぐらいはお風呂には入れない。

そして、目指すのはあくまでも「ほんのり痒い」程度。痒すぎになった後は、今度は濃度は下げていくのだが、3%が激痒だっただけに、あんまり痒くないのが逆に心配になってしまう。でも、やっぱり「ほんのり」がいいとのこと。

自分で薬剤を塗る

3か月かけて薬剤の濃度を決めると、今度は自宅で同じように週1回その濃度のDPCPを塗るようになった。毎週病院に行かずに済むが、自分で薬を扱うのは慣れるまで大変だった。何しろ、小さなワクチン的な瓶(最近ニュースでよく見るような容器です)から注射器で決められた量の薬を抜きとり、それを大きめの綿棒に少しずつ移して、何回かに分けて患部に塗るのだ。医療関係者でもないのに、注射器を扱う人生になるとは…。注射器の使い方は看護士さんにマンツーマンで教えてもらい、最初は「難しすぎる」と焦ったが、慣れたのか、なんとか使えるようになった。

ただ、患部に薬を塗るのは一人では無理だった。私は頭まるごと塗らなくてはならず、家族に毎回塗ってもらっている。無理したらできるのかもしれないが甘えている。一人暮らしの人や、家族に患部を見せたくない人などは、一体どうしているのだろう。鏡も限界があるので、感覚で塗っていくようになるのだろうか…。でも、慣れを期待するのは酷な気もする。

ちなみに、病院で毎週薬を塗ってもらっていた時の会計は1回税込み2,750円。家で塗る用の薬剤代は10mlで16,500円(注射器2本と当面の分の専用綿棒付)だった。1回0.5ml使用するので結構もつ(現在も少し残っていて、もうすぐ使い切ります)。注射器は医療廃棄物なので、古くなったら病院に持っていく。

月1回通院しつつ、2か月ほど毎週続けてみたが、顔の産毛が生えてきた程度で、「毛が生えた」とはいえなかった。2020年7月末に感作をして、同年12月半ばまで毎週DPCPを頭に塗っていた。

局所免疫療法とステロイド外用の併用

週1の塗布で変化がなかったので、次に局所免疫療法とステロイド外用の併用をすることになった。DPCPを塗る→3日間なにもしない→1週間朝晩ステロイド(ベルデモード)を塗る→3日間なにもしない→DPCPを塗る、を繰り返す。DPCPを塗るのは週1から2週間に1回になってしまうが、このサイクルをこなすことで効果がある場合もあるらしい。

しかし、私には大きな反応はなかった。鼻毛が入口のあたりに少し生えてきた程度。

この治療法に切り替えたころ(12月)は体調が絶不調で、夜も全然眠れなかった。うっかりミルクティーを午後3時頃に飲んだら、朝までばっちり眠れなかった。

食事を変える

血液検査などでは「特に異常はない」と各所で言われてきたが、「午後に紅茶を飲んで朝まで眠れないなんて、やっぱり体がおかしいんじゃないか?みんな午後に紅茶飲んでも夜は寝てるじゃないか。カフェインが残るということは代謝か?」と思い、年明け前後から、代謝が上がるようにタンパク質を意識して摂るようにした。いきなり肉を毎日食べる、というわけではなく、卵や納豆を毎日食べる程度から。それでも体調は格段によくなった。2週間ぐらい続けたら、まつ毛の産毛が少し生えてきた。

これはいいのかもしれない、と食事には更に気をつけ始めた。精製砂糖類、インスタント食品、小麦(パン、パスタ)をなるべく止めてみた。カフェインは不眠症になった時点で(脱毛症とほぼ同じタイミング)辞めていた。お酒も飲む機会をかなり減らしていたが、年明けからすっかりやめた。

厳格に制限をしてはいないので、たまにそういったものを食べてしまう時もある。ただ、生パスタや、ちゃんとしたお店のおいしいパンを食べたら、また朝までばっちり眠れなかったので、小麦粉は当面やめておいたほうがよさそう。牛乳もなんとなく控えていたが、久しぶりに多め飲んだら、お腹を壊したので、やっぱりやめておいた方がよさそうだ。

そんな風に過ごしていたが、まつ毛の産毛以上は生えなかった。体調も、全体として言えば良くなったが、不安定だった。

局所免疫療法+ステロイド外用+紫外線治療

そうして今年の2月、更に紫外線治療をしてみよう、ということになった。週1回エキシマライトを頭に当てる。紫外線を当てることで、過剰な免疫の動きが弱まることがあるらしい。ガイドラインでの推奨度はC1<行ってもよい>。

このクリニックで出来ることはもうこれぐらいしかなかった。ステロイド内服治療が残っているが、ステロイドパルス(ステロイドの点滴治療)が効かなかったので無理に飲まなくてもいいと思っている。医師は「パルスより内服が効く」と言っていたが、体が弱っているので長期的に飲むのには慎重になってしまう。

そして、この紫外線治療を2か月やってみて変化がなければ、いったん病院治療はやめようということになった。医師曰く、いま治験をしている新薬(JAK 阻害薬)が来年には出る見込みとのことで、それを待ってもいいんじゃないか、という話になった。

紫外線治療は最低週1回を複数回やらないと効果はわからない。だが、これは保険が効く。毎回の会計は1,500円程度。

具体的には機械につながれたドライヤーのような機器を使って、紫外線を直に当ててもらう。その最中、患者はバンドがない真っ白い水中メガネのような形のもので目を覆い(自分で支えて目を隠す)、何も見えない。

紫外線を当てたその日の夜には赤くなり、スタンプのように痕が残った。2重で光を当てるのはよくないので、少し感覚を開けて当てるらしい。日焼け後のように少し痛痒くなり、皮がむけた。

しかし、頭の毛は生えてこない。まつ毛の産毛が少し増え、黒い毛も数本出てきたが、治療の成果なのか、食事改善の成果なのか、体のきまぐれなのかは分からない。

2ヶ月やってみる、ということで残りはあと2回の予定。光の強さを徐々に上げているが、私には効果ないのかも。残念ながら。

潜在的亜鉛欠乏

そんな感じで病院治療の限界が迫るある通院日。

その日は不思議なほどにクリニックが空いていたので、前から気になっていたことを医師に相談してみた。

それは脱毛症の治療をし始めた頃から、湿疹とは違う種類の肌のかゆみがあるということだ。なにかピリっと肌に刺激があり、触ったり掻いたりすると消えてしまう。頻度や程度に変化はありつつも、これがずっと続いているのだ。

もともとアトピーなので、痒みに慣れているし、気にしないようにしていたのだが、ここまで続くのは何か変な気がする。内臓が悪いのか?と思い出し、セルフでお腹を揉んでたりしていたところだった。

「話を聞く限りは神経性のものかな…ビタミンB12で治療することもできるけどあんまり効かないかも…」と医師。

そういえば、このクリニックではまだ血液検査をしていなかった。ステロイドパルスをやった大学病院で「肝臓の数値が少し高いけど問題なし。」と言われ、その3か月後にこのクリニックに来たので、血液検査はしなかったのだ。

痒みに関しては、医師も看護士も「気にしすぎでは?」というような反応だったが、一応血液検査をすることになった。よっぽど思いつめた顔をしていたのか(そんなつもりはないのだが)、看護士さんには「なんで私ばっかりって思いますよね。泣きたい時は泣いた方がいいですよ」とまで言われてしまい、「そうじゃないんだよ…」という気持ちでいっぱいになったが、言い返すのも嫌なので黙っていた。不眠があることも既に相談しているので「毛がなくなったことを気に病んでいる人」的な扱いが加速したように感じた。そうじゃないんだと言いたいし、ただ不眠や変な痒みが気になっているだけなんだけど、毛がなくなったことを全く気に病んでないわけではないので、悔しかった。基本的にこのクリニックの医師にも看護士にも不満はないが、この件で初めて少し悲しい気持ちになった。

しかし、その血液検査で思いもよらない結果が出た。ALPが低いことが分かったのだ。ALPが低い人は亜鉛が足りない可能性があるらしい。更に血液検査をしてもらうと、潜在的亜鉛欠乏であることがわかった。欠乏症まではいかないけれど、少な目らしかった。また、亜鉛とシーソーの関係にある銅が基準値を超えて高かった。

私の脱毛にどれだけ関係があるかは分からないが、亜鉛欠乏で脱毛する場合もある。そこで、あくまで「毛が生えるかはわからない」けれど、亜鉛を摂ってみることになった。まずは1日50mg。病院処方の亜鉛は高いが、背に腹は代えられない。21日分で3,200円ぐらいだった。

そんな経緯で飲み始めたばかりの亜鉛だが、すでに睡眠には効果があるように感じている。漢方薬、睡眠薬などを飲んでも、また食事を変えて体調がよくなっても、中途覚醒をしていたが、それが収まっている。いまのところ。例の妙な痒みは、まだある(やはりビタミンB12なのか?)。

亜鉛は代謝と大きな関わりがあるらしく、「代謝が問題なのでは?」と考えていた私には嬉しい展開だった。頭には変化はないものの、これから期待したい(少しくらい期待してもいいじゃない)。

だが、すこしモヤっとする気持ちもある。実はALPの値は大学病院の時点でも悪かった。値があと1低ければ、ひっかかっていた。LDHも基準値よりも大幅に低かった(LDHは基準値より低くても「問題ない」とされることが多いようだ。今回のクリニックでの検査でも低かった。しかもLDHも代謝に関係があるようだ)。漢方をもらっている内科でも血液検査をしたが、検査項目にはALPが入っていなかった。今の皮膚科で血液検査をするのはだいぶ遅れてしまった。

過去に他の病院で「血液検査は問題ない」と言われても、新たな病院や医師に診てもらうことになったら、血液検査をしてもらったほうがいいのだな、と学んだ(せめて過去の検査結果を見てもらうとか)。脱毛症の人は血液検査で甲状腺のチェックなどはあると思うが、なにせ原因不明の病気なので、できる限り細かい項目を見た方がいい気がする。個人差もあるし。保険適応で細かく血液を見てもらうには限度がありそうですが…。

昨年4月に脱毛が始まってもうすぐ1年。いわゆる「円形脱毛症の病院治療」はだいたい制覇し、そして、いい結果も特に出なかった(未だスキンヘッドで眉もなし)。どうしようかと思っていたところだったが、亜鉛欠乏を糸口にもう少し色々と頑張ってみようと思う。LDH低値については今回も医師からは何も言われなかったが、何かしら対応する予定だ(ナイアシン不足なのかな?あとは今もやってるけど更なる腸活)。



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