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旅行する人。

インタビュー3:旅行する人。

~ウロウロ~

Mさん:京都に住む女性。図書館で働いている。取材時39歳。おでんの友人。

インタビュー:2017年春ぐらい

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●気づいたら、趣味は旅行だった。
おでん:Mさんの好きなことって何。
Mさん:うーん。旅行。旅行ですね。
おでん:確かに、会うたびに「どこどこへ行ってきた」って話を聞いてる気がする。どれぐらいの頻度で行ってる?月1ぐらいで行ってない?
Mさん:いやぁ、そんなには…。ちょくちょくは行ってるけど、連休があれば行ってるぐらいで…。年に5回ぐらいかな。
おでん:旅行は昔から好きだったの?
Mさん:好きは好きやったけど、昔は今ほど行ってなかった。学生のときとか、ほとんど行ってなかったし。
おでん:「どうやら、自分の趣味は旅行のようだ」と気づいたのはどれぐらい前?
Mさん:…どれぐらいやろ。10年ぐらい前かな。
おでん:何かきっかけあった?
Mさん:えー…。なんかあったかな……。…………。
おでん:……「これ」っていうきっかけがなくて、じわじわきた感じかな。
Mさん:んー…、じわじわと。そうかな。あるとき「なんか、やたら旅行してるな」って気づいた感じ。
おでん:そうか。

●福井で………。
おでん:一番最近はどこ行った?
Mさん:1泊2日で福井に行ってきた。
おでん:へー、いいね。東尋坊行った?
Mさん:行ってない。
おでん:恐竜博物館行った?
Mさん:行ってない。
おでん:えー、じゃあ…、なんやろう。えー…。
Mさん:えっと…、なんか、かこさとし記念館*に行った。
おでん:かこさとし記念館…。が、あるんだ。知らなかったよ。それが目的で行ったの?
Mさん:いや、そういうわけじゃないんやけど。
おでん:ふーん…。なんで福井に行こうと思ったん。
Mさん:期限が迫ってる青春18きっぷが余ってたから…。時間と距離で行けるところを考えたら、最終的に岡山か福井かなってなって。で、岡山の宿に空きがなくて…。
おでん:それで、福井になったと。
Mさん:そう。で、せっかく青春18きっぷを持ってるから、バスには極力乗りたくなくて。
おでん:あ、そうか。青春18きっぷは、電車は乗り降り自由だけど、バスには乗られへんのよね。
Mさん:そうそう。で、東尋坊はバスに乗らないと行かれへんねん。だから、「じゃ、いいわ」って諦めて。
おでん:なるほど。
Mさん:かこさとし記念館は電車で行けるねん。
おでん:そうか。
Mさん:だから…。
おでん:…そっか、だからかこさとしに行ったんや。…ちなみに、その1泊2日の旅のハイライトって何?かこさとし?
Mさん:かこさとし…というか…うーん…。泊まったビジネスホテルがすごいきれいやって、快適やった。
おでん:ビジネスホテル。
Mさん:大浴場があって…。…あと、海鮮ちらし寿司もおいしかった。
おでん:それはいいね。
Mさん:あ、あと、いい喫茶店に入った。王朝喫茶っていうねんけど。
<王朝っぽい雰囲気の喫茶店の写真を見せてもらう>
おでん:…いいねぇ!
Mさん:ステンドグラスとかあって、案外落ち着くねん。空いてたし。
おでん:ネットで調べて行ったの?
Mさん:いや、福井に着いて、これからどうしよっかなって思って、本屋でいろいろ見てたら出てきた。
おでん:喫茶店を紹介するような本?
Mさん:いや、んー、なんやろな、タウン誌みたいなやつ。「地元のだれだれさんおすすめの店」みたいなので載ってた。
おでん:へー。
*正式名「かこさとし ふるさと絵本館 砳(らく)」

●準備し過ぎてはいけない。
おでん:この10年で一番印象的だった旅について教えてほしいんやけど。
Mさん:うーん、あ、ロシアかな。一人で行ったロシア。
おでん:いつ行ったの?
Mさん:いつやっけ。6年前かな。夏休みに1週間ぐらいかけて行った。
おでん:ロシアはもともと好きなんよね。
Mさん:うん、友だちや家族と行ったことはあって、そのときは3回めのロシア。でも、それまではウラジオストクとか東の方ばっかりで、西の方に行くのは初めてやった。もちろん、一人で行くのも初めてで。
おでん:どこへ行ったの?
Mさん:3カ所を転々とした。えっと、サンクトペテルブルグと、キジ島と、モスクワかな。やっぱり、東の方とは全然雰囲気が違ってて良かった。「あ、これがロシアやー」って思うような建物や景色がいっぱいあって。
おでん:キジ島ってどんなところ?
Mさん:湖に浮かんでる小さい島で、島全体が野外博物館みたいになってるねん。そこにある木造の教会は、屋根が丸くてしめじっぽい。色もしめじっぽい。…それが良かった。
おでん:ロシアへの一人旅が印象に残ってるのは、ロシアが好きだったからかな。
Mさん:それもあるけど、なんか、死ぬかもしれんと思ってたから、無事に旅をやり遂げて達成感があった。
おでん:え、危険な目にあったの!?
Mさん:いやいや、そういうわけではなくて。えっと、準備の段階で、テロとか犯罪とか、ロシアのマイナスな情報をいっぱい集めてしまって、ちょっと怖くなってしまっててん。…基本的に小心者やから、そもそも外国ってだけで怖いし。英語も喋れへんし。
おでん:そうやったんや。よう一人でロシア行ったな。
Mさん:ほんまに、行く前はすごく怖かった。だから、下調べと準備にめっちゃ力を入れてん。何時何分にこの駅に着いて、この駅のここにあるロッカーに荷物を預けて、このルートでここへ行って…って。
おでん:綿密な計画を立てたんや。
Mさん:そう。でもまあ、結局現地では全然怖い目に合わなくて、「あ、なんや」って思ったんやけど。「ちょっと下調べしすぎたな」って、反省もした。
おでん:下調べしすぎたらダメなの?
Mさん:いや、なんか、こなしていく感じになるやん。計画通りに動いて。スタンプラリーみたいになってしまうから。
おでん:スタンプラリーが好きな人もいると思うけど、そうじゃないんやね。
Mさん:んー…、スタンプラリーはスタンプラリーで、やったら楽しめると思うけど…。なんか、私は途中でめんどくさくなってしまうと思う。結構すぐ疲れるし。
おでん:その時の気分に合わせたり、そこで起こることに身を任せたりするのが好きなのかな。
Mさん:そうなんかな、どうなんやろう。

●旅行の楽しみとは何か。
おでん:今まで行ったところで、一番良かったところは?まず、国内で。
Mさん:えー……。なんか、どこも良かったから…。どこって言われると…。…………。
おでん:…じゃ、海外でいいや。
Mさん:えーー……。 どこ行ったやろう…。どこかな………。…………。
おでん:…あまり「ここが良かった」ってのがないのかな。
Mさん:そうやなぁ。だいたい、なんかしら楽しいから。
おでん:旅行をする楽しみって、人によっていろいろあるじゃん。買い物とか、観光とか、食べ物とか。Mさんにとって、旅行をする楽しみの第1位って何?
Mさん:えー…。ウロウロする…。知らない街をウロウロすること…。
おでん:ウロウロ…。
Mさん:小さいときから、よく分からないところでウロウロするのが好きやねん。帰り道のルートを変えたり、いつもと違う電車に乗って帰ったり、そういうのが好きで。…旅行はその延長なのかもしれない。
おでん:ははぁ。
Mさん:旅行先でも、家の建ち方とか、寂れ具合とか、商店街とか、街の様子を見るのが好き。「ここは公共施設が多いな、なんでかな」って考えたり、「自分が住んでみたらどうかな」って想像したりするのが楽しい。
おでん:なるほどなぁ。だから、有名観光スポットやスタンプラリー的旅への興味が薄いのか。
Mさん:…いや、それはそれでおもしろいと思うけど。
おでん:ちなみに、高齢になって足腰が弱って旅行ができなくなったらどうする?やっぱりつらいかな。
Mさん:今はつらいやろうなぁって思うけど、まあ、そのときがきたら「まあいっか」って思うかもしれん。…だいたい私、今、普段は旅行行くことと映画みることしか考えてないねん。だから、もし体が動きにくくなったら、映画の方に特化するのかも。
おでん:ああ、映画があるなら心強いね。
Mさん:…でも、映画館にも出かけられなくなったらどうするんやろ、とは思う。
おでん:映画はネットとかでみられるから、動けなくても大丈夫だよ。
Mさん:そうか。…じゃあ、大丈夫かな。ふふふ。


<おわり>