Lunch with a Honch rat


この記事の取材が目的でしたから、いつでもメモをとれるように当然タブレットをテーブルに出した状態で食事をしたのですが、結局メモを取ることは一度もありませんでした。そのくらい話が止まらなかった。タイトルにも黒人青年のなんとかって入れたかったんだけど、それだとなんか違うなぁって思って、インタビューに協力してくれた面白い黒人青年の軌跡みたいなものを軸に、ドブ板の事とか色々書いていきたいと思います。

「Honchにはゴミしか落ちていない」とよく聞きますが、これは真剣なおつきあいができそうな相手を、よりによってミートマーケットであるHonchで見つけようとしている人達の感じ方でしょう。そういう人達にとって、Honchに利便性だけを求めてふらつく男女達は確かにゴミと同じくらい価値がないものです。きちんとおつきあいしたいという自分の気持ちにつけこんで近づいて来ては、都合よく利用して去っていくのですから。Honchなんてそういう場所だと思って割り切って飲んでいれば結構楽しいものです。そのHonchを夜な夜なうろつくねずみのような若いセイラー達の一人である黒人青年、ディミトリ君に取材をお願いした時、彼はこう言いました。
「俺みたいな田舎者でいいの?ラップに出てくるようなhood ni**a(※)みたいなやつの方がよくない?」
彼のダークな肌はとてもなめらかで、ちょっと特徴のあるアクセサライズの仕方でその魅力を引き出していました。「胸毛はちょくちょく剃っている。ネックレスが絡むと痛いから」
(※)hood ni**a: hood(低所得者層居住区)で育った/暮らす黒人。わかりやすく書くと「悪そうなやつはだいたい友達」風の文化の中で育った黒人。セントルイス(ミズーリ州)、メンフィス(テネシー州)、あるいはサウスセントラル(カリフォルニア州)と聞いただけでうずうずするぶらぱんも多いのではないでしょうか?


実は私もhoodな子の方が記事としては面白いかなぁとも思ったのですが、そもそもhood ni**a達はhoodを抜け出してちゃんとした仕事に就こうとしつつ、どこかhoodであることにこだわるせいか黒人同士でつるみたがりますから、私のような日本人の中年女性とフリートークが成り立たないと思うし、他人種との間に垣根を持たず、「面白いやつなら誰でもいい」というディミトリ君に好感が持てました。それから彼、めちゃくちゃ可愛いんですよね。ヒモの素質あるな。末っ子特有のものなのかどうか知りませんが、ディミトリ君の生い立ちについて彼が話してくれたまま書きます。

南部の田舎町で肝っ玉母さんに愛されて育った少年時代


「俺が優しいって?えへへ、ありがとう。女性を尊敬しているだけ。姉と兄がいる。そして異母姉妹が二人。俺が幼い頃父親は出て行ってしまった。母はそりゃー頑張って俺達兄弟を頑張って育てたんだ。俺達にはさんざんfour-letter wordsを使うなって怒鳴るくせに、まだ幼い俺達を叱る時は F bomb連続投下(笑)。『Mom, それは使っちゃいけない言葉だよ~』と言い返してみるものの、聞いてもらえるわけはなかったな。
母が時々マリファナを吸っていたのも覚えている。俺らの前で堂々と(笑)。もちろん俺らがそれをこっそり吸おうとすればもうぼっこぼこにされたよ。家族四人、貧しい暮らしだった。でも母は頑張ったよ。兄弟三人、誰もjailに行かずに済んだ。No felony! 俺達が育った環境で犯罪にかかわらずに済んだっていうのはすごいことなんだ。母を誇りに思うよ」


田舎町を飛び出すために

「そんな母を一番傷つけてしまったのは、ネイビーのリクルーターが我が家を訪れた時。俺は自分が置かれた環境からなんとか抜け出して仕事に就こうと思っていたから、その手段が入隊しかなかった。大学に行くお金もないし、かといってこのままこの南部の田舎町に残っていてもセブンイレブンやグロサリーストアくらいしか働く場所がない。これは米軍に入隊するやつらに共通しているからマリアも聞いたことがあるでしょ?
軍に入ればとりあえず寝床と食べ物には困らないから自分でテストを受けた。母には知らせなかったから、ネイビーへの入隊が決まってリクルーターが家に来て母に話をした時、まさに彼女にとって寝耳に水だったんだ。怒りと、そして自分で言うのもなんだけど一番かわいがっていた末っ子が遠くにいってしまう悲しみで母は混乱して大変だった。そんな母を見て俺の心も痛んだけど、俺はこの町に残ってずっと貧しい暮らしをする気はなかった。ミリタリーに入れば今よりはましな生活ができる。そして実際に入隊してみて、色々窮屈な面が多いのは認めるけれど、やはり安定した生活はありがたいと思った。E4になれば、贅沢は言えないけれど自分のアパートも借りられるようになった」

ここでディミトリ君がまだE1だった頃の写真を見せてくれました。現在の美しく鍛え上げられた筋肉質な体からは想像もつかない、華奢な体をネイビーのカバーオールズに包み、ちょっと不貞腐れたようなディミトリ君。自分で見てもおかしいらしく「髭もまだのばしてなかったし、なんか幼いなぁ」とつぶやきました。

hoodを抜け出すためにネイビーに入ったのに、自分達の中のhoodを追い出すことができないセイラー

「(54ってなんであんなギャングワナビーみたいなのばっかり集まるの?という私の質問に対し)ああ、この間久しぶりに入ったんだけどさ、黒人ばっかりで出てきちゃったよー(笑)。あの中にはGDも混じってるんだよ。Gangsta Disciples。あいつらもhoodを抜け出してちゃんとした仕事に就こうと思ってネイビーに入隊した。They left the hood, but they couldn't leave the street mind behind. で、あの店でhood ni**a同士で喧嘩を売ってどっちがhoodかって競い合う。バカみたいだろ。それで軍のセキュリティに捕まってrestrictionをくらう。54の後George'sに行ったらtoo white lol。
Honchを離れて六本木まで遊びに行けばネイビーのセキュリティもショアパトロールもいない。だからうんと羽目をはずせるかっていうと、確かにそれはあるよね。今俺達の間で人気があるのが1 OAK。あそこのVIPルームに女の子達を呼んで騒ぐんだ。でももう六本木はいいや・・・・酔っ払って電車で帰ってくるの、疲れるよ。一度寝過ごして終点まで行って色々大変だったから。
俺の知り合いで六本木で他の客ともめて、それで駆けつけた日本の警察官に暴力をふるって日本の留置場に入れられたやつがいる。そいつももちろんセイラーなんだけど、不名誉除隊になったよ。(ワンストライクでアウトって珍しいね、という私の問いかけに対し)うーん、ワンストライクなんだけど実はそこで捕まった時に受けたドラッグテストで陽性反応が出たんだ。やつは「酒に入れられただけだ。俺は知らない!」と言い続けたけど駄目。キックアウトーーー。不名誉除隊になったらその後の人生はかなり大変だと思うけど、そいつは仕事の心配はしなくていいんだ。親が金持ってるから。親が金持ちなのにネイビーに入った理由が「金をもらいながらいろんな国の女と遊んでみたかった」だから、羨ましいよな。俺なんて不名誉除隊になったらもう後がないんだから、トラブルに巻き込まれないようにすごく気を付けてるんだ」

ぶらぱん

「Honchは便利だよね。どんなに酔っ払っても、ドライブバイの心配もなく歩いてすぐ自分の寝床に戻ってこられるんだから。ドランクフードが入ったビニール袋を手にぶら下げて、ふらふらと。こんなことアメリカ本国の基地周辺じゃ絶対にできないよ。
女の子に不自由しないってのもあるだろうって?うん、そうだね(笑)。でも新人にはやっちゃいけないぶらぱんを必ず教えてあげるんだよ。『ほら、あそこにいる女、あいつとそれからあそこで踊ってるあの女、それから・・・』やったら何かしら病気を移されそうな女の子達。They get tossed around too much. 
女の子達だって男みたいにセックスを楽しんでいいと思うんだ。そういう欲求に対して僕は尊重するし、気持ちよくしてあげる自信もあるよ(ウィンク)。でもHonchで毎週のように黒人を求めてさまよっている日本人の女の子と話していて不思議に思うのが、なぜinnocentなふりをするのかってこと。『もう半年セックスしてないから・・・』とか。おまえ先週俺の友達とやったよな?ってみーんな知ってる。でも誰も突っ込まないよ。有名な子はある基地の付近に住んでいて、わざわざ横須賀に遠征してくる子。あれは黒人狂い」

そう言って締めくくるとディミトリ君はその女の子の名前(英語名を持っている)を教えてくれました。そのネーミングのベタさに笑いつつ、「実は君も一度その子のお世話になったんでしょ」と心の中で突っ込んでしまいました。
ランチを食べながら3時間ほど話し、笑い、店を後にしました。歩道を歩いていると、私をさっと奥の方を歩かせるようにして、自転車や他の歩行者にぶつからないようにしてくれるディミトリ君。きっと今週末もふらふらとHonchで楽しんでいることでしょう。彼がしてくれた話はまだまだありますので、ベッドのお話などは次回に持ち越します。


◆この記事は先日投稿した「ぶらぱんの不幸」という記事の続きです。
◆続編 "Lunch with a Honch rat Pt.2"を更新しました

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