見出し画像

長島・大野・常松法律事務所を研究する【北大法学部生に読んで欲しい】

長島・大野・常松法律事務所は公式サイトにおいて「日本のリーディングファームとして数々の大型案件を手掛けてきた」と高らかに宣言しています(*1)。業界をリードする存在であることを自負しています。

同事務所は国内5大法律事務所の一角を占めるメガ・ローファームで、所属弁護士は500人を超えます。

法学を専攻している学生なら「弁護士になったら入りたい事務所」「独立する前にここで修業したい」と一度は考えるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、同事務所の活動内容や最近の動向などについて解説します。

記事中のデータは2022年12月現在のものです。

*1:https://www.noandt.com/practices/


活動内容と概要


長島・大野・常松法律事務所の業務分野には刑事、離婚、人権といったワードは1語もありません。同事務所は企業とビジネスに特化したローファームです。

同事務所が理念として「企業活動に伴って発生する法律問題全般にわたって、最高の法務サービスを提供すること」を掲げていることからも、企業・ビジネス専門であることがわかります(*2)。


*2:https://www.noandt.com/firm/philosophy/


事務所概要


長島・大野・常松法律事務所の概要を紹介します。


■長島・大野・常松法律事務所の概要

●東京オフィス住所:東京都千代田区丸の内2丁目7番2号 JPタワー

●その他の拠点:ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、上海

●代表者(マネージング・パートナー):杉本文秀、井上広樹

●設立:2000年11月(前身の所沢・長島法律事務所は1961年発足)

●資格者の人数:

・日本弁護士491人

・外国弁護士43人


同事務所の歴史には大きく「長島・大野の流れ」と「常松の流れ」の2つがあります。

「長島・大野の流れ」は1961年に所沢・長島法律事務所が発足し、その後、名称を長島・大野法律事務所に変えました。

「常松の流れ」は1987年に、ブレークモア法律事務所の日比谷分室が独立したことが始まりになります。その後、常松簗瀬関根法律事務所に名称変更しました。

そして2000年11月に、2つの流れが合流し、長島・大野・常松法律事務所が設立されました。


なお公式サイトには、国内拠点の住所は東京しか掲載されていませんでした。


業務メニュー


同事務所の業務は以下の21の分野になります。


1)コーポレート

2)M&A

3)ファイナンス

4)危機管理、リスクマネジメント、コンプライアンス

5)事業再生、倒産

6)紛争解決

7)労働法

8)不動産、REIT

9)知的財産

10)独占禁止法、競争法

11)税務

12)ウェルスマネジメント、事業承継

13)インフラ、エネルギー、環境

14)薬事、ヘルスケア

15)ホスピタリティ

16)テクノロジー

17)メディア、エンタテインメント、スポーツ

18)個人情報保護、プライバシー

19)消費者関連法

20)国際通商、経済制裁法、貿易管理

21)海外業務


このなかから、同事務所の特徴的な業務であり、なおかつ学生の関心が高いであろうと思われる「コーポレート」「危機管理、リスクマネジメント、コンプライアンス」「インフラ、エネルギー、環境」「海外業務」について深掘りして解説します。


コーポレート業務の特徴


コーポレート業務は企業法務のことであり、企業の顧問弁護士の仕事として最もイメージしやすいのではないでしょうか。

具体的な仕事には、売買基本契約、販売代理店契約、業務委託契約、債権保全・回収、事業の許認可や法規制への相談、助言があります。

またコーポレートガバナンス(企業統治)にも力を入れていて、会社法、金融商品取引法、上場規則、コーポレートガバナンスコードといった規律や法的枠組みについてクライアント企業に知見を提供します。

ガバナンス体制の設計、策定をサポートすることもできます。


危機管理、リスクマネジメント、コンプライアンス業務の特徴


企業に危機管理体制が重要になるのは、日本全体が監視社会になったことで、これまでは「他の会社もやっていること」や「小さな不祥事」で片づけられていたものが、経営を揺るがす事態になりかねないからです。

同事務所は企業の危機管理ニーズに応えるため、検察庁、金融庁、公正取引委員会といった規制当局での勤務経験を持つ人を積極的に採用しています。

また、公認会計士を持つ弁護士もいます。


同事務所は危機に陥ったクライアント企業に対し、内部調査による事実関係の解明、法的分析、監督官庁への対応、証券取引所や株主へのIR対応、マスコミ対応、といったロー・サービスを提供します。


インフラ、エネルギー、環境業務の特徴


日本の社会や経済は今、インフラの老朽化や建設費の高騰、高止まりするエネルギーの海外依存度、世界的な環境配慮型経済へのシフトといった課題にさらされています。

そのため、インフラ、エネルギー、環境への知見が蓄積されている同事務所は、企業にとって頼りになる存在のはず。

同事務所のこの領域での具体的な業務は以下のとおり。


■インフラ、エネルギー、環境に関連する具体的な業務

●空港、鉄道、発電所、道路、上下水道、廃棄物処理施設などの公共インフラ・プロジェクトにおけるアドバイス

●発電プロジェクトに対する投資スキーム策定やプロジェクトファイナンスに関するアドバイス

●土壌、水質、大気の汚染、有害物質や廃棄物の規制、事業の安全と衛生に関するアドバイス

●環境規制違反が問われる紛争における交渉や政府との交渉の代理


海外業務の特徴

 

国際法律事務所であることは、同事務所の最大の特長の1つです。

同事務所は長年にわたってクロスボーダーな取引や紛争解決に関わってきたので、企業のグローバル展開や海外業務の体制整備のサポートが可能です。

特にアジアではシンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、上海に拠点があり、クライアント企業は、日本人弁護士と外国人弁護士の双方からサポートを受けることができます。


同業と異なる特徴

ここから先は

2,392字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?