なぜ、社長は生命保険に入るべきなのか?

先日、会社等の法人の保険について少し触れました。僕は会社の経営者の方には生命保険をお勧めします。前回お話しした時は「加入してもらわなくてよかった」という話をしていたのに、真逆じゃないかと思われるかもしれませんので、きちんとお話をしてみたいと思います。

生命保険のメリット

まず、生命保険のメリットって一体何かと言いますと、自分が支払った金額以上の保険金を加入後、極端な話翌日に交通事故で死亡しても支払われるということです。

人間そんな簡単に死にませんし、明日死ぬかもしれないと思って生きている人はほとんどいませんが、まずは、このメリットをわかっていただきたい。

なんでそんなことが可能かと言いますと、他の方が支払っている保険料という名目のお金を受け取ることができるからです。

保険は相互扶助の精神だと言います。誰か困った人のためにプールしておいたお金を困った人たちもしくはその家族に分け与えましょうという考え方です。

なぜ経営者は生命保険に入るべきなのか

例え話です。

従業員が3名の小さな会社を経営しています。職種はそうですね、印刷業です。先日、印刷設備の刷新のために街の信用金庫から5000万円借り入れをおこしました。月々の支払いは10万円程度です。今のところ、順調に返済できています。

信用金庫の借り入れの際、債務者は当然会社ですが、社長は個人でも連帯保証人として担保保証しています。

所謂保証人というものになっているのですね。簡単に言いますと、もし、会社が返済に困ったら社長の個人資産で支払ってもらいますよという話です。

順調にいけば5年で返済できる。素晴らしいですね。新しい機器の導入で当初は機器の操作に慣れていなかった従業員の一人の古株のおじさんも、今では「社長、新しい機械のおかげですごく楽になりました」と社長に感謝しています。

従業員は古株のおじさん(55歳、末の娘が大学を卒業するまであと2年。できれば65歳まで働きたい。)43歳パートの主婦(月々8万円でもいいので家計のために)。32歳の若手(結婚して子どもができたところ)などそれぞれに人生があります。

社長は社長で、42歳と先代からひきついだ印刷会社を若くしてひっぱり、家庭は家庭で二人の子どもをもつ父親です。

社長に万が一のことが起こっても会社はまわりますか?

この質問に対して、「大丈夫」と言える社長はどれくらいいるでしょうか。やはり社長は社長です。自分の仕事に誇りを持っています。「貧乏暇なしで金はないし大変だわ」とおっしゃられる社長ほど内心は「自分のおかけでこの会社がもっている」との自負があります。だからこそ、つらい社長業もおこなえるのです。

そんな、社長が病気、けが、がん、ましてや死亡。

例えば、がんで入院、退院その後、抗がん剤治療。今と同じくらい働けますか?イエスと言える社長がどれくらいいるでしょう。

また、死亡した時は当然働けないですが、従業員を大切にしているなら従業員の生活を放棄して「死んだあとは知らん」と言える社長がどれくらいいるのでしょう。

「社長がなくなった時に売り上げはどれくらいダウンすると思いますか?3割ダウンで済みますか?4割いきますか?」とききますと、自分の仕事に誇りを持っている経営者の方ほど売り上げが下がる割合が大きいのは想像に難くないでしょう。

それほど売り上げが落ち込んだらどうなるのか。銀行の返済は可能でしょうか。従業員の給料は支払えますか?家族はどうですか?

連帯保証人という地位

金融機関から借り入れを起こした際に社長が連帯保証人になるということは会社で支払いが滞ったら社長の個人の資産で支払う義務があると先ほど述べました。

では、社長がなくなればどうなるかと言いますと、連帯保証人の地位は相続で相続人に引き継がれます。つまり、奥さんと子ども二人が連帯保証人になるということです。

つまり、会社が立ちいかなくなって、借り入れの返済が滞ると、奥さん、子どもが借り入れの返済をしなければならなくなるということです。

怖いですね・・・・

それほど、社長の仕事は責任のあることなんですよね。

さて、社長は住宅ローンで持ち家を購入しています。所謂団信で社長がなくなれば、家の住宅ローンは返済され、奥さんと子どもは住む家には困ることはなくなるという話はありますが、社長が会社の債務を連帯保証している場合はそう簡単にはいきません。

奥さんと子どもが住む家に困ることはなくなるということはその家を相続することができるからです。

万が一会社の3000万円の負債が残ったまま社長がなくなって、会社は倒産、奥さんと子どもが連帯保証人の地位を引き継いで3000万円の負債を支払う能力があればいいですね。

なければ、相続放棄したらいいと。

でも、相続放棄をするということは、最初から相続人でなかったということになります。つまり、マイナスの財産(会社の負債)を相続する必要もなくなりますが、プラスの財産(自宅、預貯金など)も相続することができなくなるのです。

折角、家族のために購入した家も、家族のために遺すことはできないという結果になります。

損失分を保険会社に支払ってもらうという考え方

僕がよく話していたのは「損失分を保険会社に支払ってもらいましょう」ということでした。

がんなどの病気、けが、そして死亡。損失が出た場合にそれを会社の資産や個人の資産でおぎなうことができるのであればそれで十分です。

しかし、そうでなく、従業員や家族のリスクを補うことが難しいということであれば、保険会社に支払ってもらえばいいのです。

そのためには、会員料みたいなもので保険料を支払わなければならない。後はそれが馬鹿らしいと思うか、もったいないと思うか、素晴らしいと思うかは人それぞれの考え方です。

具体的にどれくらい保険金をかけていればいいのか?

「御社の規模でしたら社長が亡くなった時には3億円くらいあれば安心です」という営業の話は無視しましょう。

規模なんて曖昧な言い方で保険料を稼ぐ典型です。

比較的簡単に算出することができます。

「負債の残金+従業員の給与の半年~1年分」×1.47

です。半年~1年分というのはもし会社をたたむことになってもこれくらいの期間があれば従業員の再就職の期間の給与を補填することができますし、事業を続けるなら、その間の従業員の給与を保険会社が持ってくれますので、事業も安心して継続することができます。

そして、忘れてはならないのが、×1.47という数字です。これは何かと言いますと税金で引かれる分です。

死亡保険の契約者と被保険者(誰に万が一のことが起これば保険金が支払われるかという対象者)が社長個人で、受取人が奥さんという個人の死亡保険の場合は税金は控除のうえ、相続財産に加算され、相続税の対象になりますし、医療保険やがん保険の場合は非課税です。

他方、生命保険の法人契約で契約者=会社、被保険者=社長、生命保険金受取人=会社の場合、受け取った死亡保険金および医療保険金、がん保険金は特別利益扱いになります。生命保険で1億円受け取れるようにしていたら、1億円分は利益扱いになってしまうのです。

つまり、通常の業務で利益が100万円と決算上出ていた場合に、追加で生命保険金が1億円でたら、利益が1億100万円となり、その分に対して税金がかかってしまいます。

本当に必要な

「負債の残金+従業員の給与の半年~1年分」

が1億円と算出して1億円の保険金を受け取った。でも、税金で引かれたら手取りが1億円をきってしまう。それだったら意味がないですよね。

仮に法人の実効税率を32%して計算すると 

1億円(生命保険金)×32%=3,200万円が税金で納めなければならなくなり、手取りは6,800万円です。足りないですよね。それじゃ、何のために保険をかけていたのか、意味がなくなります。

では、税金を引かれることを考慮して、1億円手取りで残したいなら、どれだけ保険金をかければいいのかを算出しますと。

かけるべき保険金をXとして算出しましょう。実効税率を32%とします。

XーX×0.32=1億円

0.68X=1億円

X≒1億4700万円

つまり1億円の1.47倍をかければ手取りで必要な1億円という金額をまるまる残すことができるのです。

これが

「負債の残金+従業員の給与の半年~1年分」×1.47

×1.47という数字の意味です。

税についての詳細については税理士などの専門家に聞いていただくとして、大まかな経営者保険の考え方に述べさせていただきました。

知識はあればあるほどいいですし、相談できる人がいれば安心ですよね。

もし、万が一これをお読みになられた方が会社の経営者で会社で生命保険をかけられているなら、一度ご自身の保険の内容について確認されることをお勧めします。

保険を掛けられていても、税金のことまで考慮して加入を勧める営業は実は本当に数少ないのです。ご自身がいい営業の方にめぐり合われているならば僕もとてもうれしく思います。



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