画面の向こうのデジャブ

疲れているのだろうか?いや、それとも...。"老化" という言葉が頭の隅に浮かんだが、慌てて打ち消した。

デジャブ。ある場面に遭遇した時に、かつて同じような場面に出会ったことがあるように感じる不思議な現象のことだ。最近とみに多くなっている気がする。

それにしてもおかしい。本当にこれは "デジャブ" なのか?この場面、ついさっき見た気がする。

もう一つ最近気になっていることがある。答えがそこまで出かかっている。なかなか出てこない。わかった!喜び勇んで答えようと思ったその瞬間、突然思考が強制的に途絶されてしまう。

目の前には、思考の流れとは無関係な場面が展開される。楽しい旅の途中で置いてきぼりにされた気分。さっきの気持ちの高ぶりをどうしてくれるのだ。

心配になって、同い年の友人に聞いてみた。友人もそう感じているという。少し安心した。自分だけではなかったようだ。

友人は続けた。「あまり気にするな。タダなんだから」。それだけ言って、友人は、先ほどから夢中になって観ていたスマホの動画に戻っていった。

友人の言っていることの意味がしばらくわからず、ぼんやりとテレビ画面に目を移す。

画面の向こうでは、テレビタレントが大げさに手を叩いて笑いこけている。「まもなく『スペシャルゲスト』が登場!」の大きなテロップが流れた。また "番宣" が始まるのか。

ここでCMに切り替わるのだろう。その前にテレビのリモコンを手元に引き寄せた。

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