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海外旅行2023その12 旅行者殺しのパキスタン<中編 ラホール・カラチ殺人未遂事件>

前編からの続き。


5.SIMのトラブルその2

事前にパキスタンで使用できるeSIMを
スマホにインストールしていたので、
電波はつかんでアンテナは立つものの
うんともすんともネットにつなげないパキスタン初日。

Wi-Fi環境下のホテルであれこれスマホと格闘。
ググったら何か情報でもあるのかなと。
あった。
スズキケイコさんのブログが詳しいので
パキスタンのSIM情報を確認したい人はそちらを↓

そして私の場合。
私はコロナ前の2019年、パキスタンを訪れていた。
その時はペシャワール1都市のみ数泊だったし、
予約したホテルは空港からの送迎付きだったし、
別にネット環境なくてもいいか、という判断をして
ホテルのWi-Fiだけを使用した程度だった。

これが原因。
パキスタンで外国から携帯端末を持ち込んだ場合、
入国して2か月以内にその端末のIMEIを
パキスタン通信局(PTA)に登録しなければならない
というシステムが2018年から運用されていた。

その登録を怠ると、PTAがその端末をロックしてしまい
そのロックを外すためには、機種に応じて定められている
税金を払わなくてはならないというルールなのだ。
私は2019年、ペシャワールでWi-Fiのみ使用したが
こんなPTAの登録システムなど全く知らなかった。

その結果、PTA未登録の私のiPhoneは
まんまとロックされてしまって現在に至るわけだ。
どうもロックをはずすには各携帯キャリアの
大都市にある旗艦店に行かなければならないようだ。

私のホテルからは幸いギリギリ徒歩圏内に
u foneというキャリアのメインオフィスがあるようだった。
パキスタン2日目、私のミッションは私のiPhoneで
どうにかオンライン環境を作るということになった。

u foneのオフィスまで徒歩20分。気温は30度越え。
オンラインならUberが使えたのだが。。
ともかく歩いて汗だくでオフィスにたどり着き、
担当者のチャンドラー氏(イケ叔父)と話す。

「PTAのロック解除?機種は?iPhoneXR?
じゃあTAXは8万ルピー(4万円)ぐらいだYO」
イケ叔父は英語が上手なのですごく助かったのだが
私は8万(eighty thousand)という英語を聞き間違ったと思った。
8000(eight thousand)ルピーか1.6万(eighteen thousand)ルピーの
間違いだよね?イケ叔父に再確認をすると
「だいたい8万ルピーだYO。正確な額を知りたい?」

いやいやいやいやいやいや、無理っしょ。
私のiPhoneをパキスタンで使えるようにするだけで
なんで4万円も払う必要があるのだ?
私がパキスタン政府をその場でののしっていると、
イケ叔父が以下を提案をしてくれた。

案1.どこかで安い中古の端末をとりあえず買う
案2.u foneのモバイルWi-Fiを今ここで買う

うむ。オンライン環境にするためにはそれしかなさそうだ。
2のモバイルWi-Fiっていくら?とイケ叔父に尋ねると
「本体5500ルピー(2750円)、SIMが1か月有効
120GBで2200ルピー(1100円)だYO」

そんな120GBなんて使わねーよ、と思いながらも
イケ叔父は英語ベラベラの絶対仕事ができるマン。
彼を逃すとこの後どんな遠回りをするかわかりゃしない。
日本ではスムーズに物事が運ぶような要件であっても
ここはパキスタン。私はウルドゥー語のできない外国人。

頼むなら英語もできるし仕事もきっちりのこの人しかない。
ということで、イモトのWi-Fiならぬ
チャンドラーのWi-Fiをその場でお買い上げ。
予定外の出費(4000円弱)がボディーブローのように沁みる。

パキスタンの物価は上昇気味とは言えまだ安いので、
4000円もあったら豪遊できるのだ。

参考価格 当日の私のランチ チキンビリヤニ150ルピー(75円)
モバイルWi-FiとSIMの合計価格はランチ50食分相当となる

イケ叔父はその場で設定をさくさく進めてくれて
「3時間後ぐらいには使えるようになるYO」と。
実際には1時間後ぐらいに
「お前のWi-Fi開通したYO」とイケ叔父から
メッセージが届いた。最後まで仕事できるマン。

6.ホテル立地のトラブル

前編で記した通り、私はラホールのホテルオーナーに
目の前で予約をキャンセルされるという仕打ちを受けた。
オーナーが悪いのではなくてエクスペディアが悪いのだが。

新たにホテルを探すか、このホテルに現金払いで泊まるか
という選択を迫られたときに、オーナーはセールストークで
「ここはラホールでもかなり安全なエリアだYO。
なぜならカントンメントcantonmentエリアがすぐそこで
24時間警備体制が整っているからだYO」と言った。

カントンメントとは日本で言う自衛隊駐屯地のようなもの。
ラホールの場合は、街の一角がこのエリアになっていて
そのエリアにつながる各道路上には検問所がある。
エリア内は落ち着いた高級住宅街のような雰囲気。
エリア外の住民でも普通にエリア内を通行可能。
ホテルから検問所まではわずか20メートルだった。

オンライン環境を手に入れた私は、さっそくUberを呼び
近くのショッピングモールに行くことにした。
Uberに乗り込み出発して2秒後、検問所で呼び止められた。
私はパスポートを見せ、目的地を告げた。

検問所のパキ軍人が言う
「お前はこのエリアに入れないYO」
いやいや、モールに行くのにはこの道路しかないんだけど。
「外国人はこのエリアに立ち入り不可だYO」

いやいや、そうすると予定の10倍くらいの距離の
遠回りをしないとモールにたどり着けないんだけど。
道路の構造上冗談抜きで10倍遠回り。
新橋から東京に行きたいのに、山手線で
新橋→品川→新宿→池袋→上野→東京と行く感じ。
かといって徒歩で行くことも許されない。

結論から言う。軍人によるのだ。軍人のモチベ次第。
軍人がやる気がない時には「通っていいYO」となるし
軍人がやる気まんまんの時は「外国人不可」と追い返される。
ともかく今回は撃沈。

というか恐ろしいことに、泊まっているホテルから
ラホールの名だたる観光名所や空港、鉄道駅などに
行こうとするものなら、Uberは必ずこのエリアを
通過する最短ルートを提示してくる。
しかし私は原則としてそのエリアに入ることができない。

検問所の関係で安全な立地なのかもしれないのだが
外国人の私にとってはものすごーく不便な立地だった。
ホテルの南西方面にだけは通行が許されて
後は全部立ち入り禁止エリアに入ってしまうため
毎回えらく遠回りして出かける必要があった。

おおざっぱに言うと、ラホールの空港西側と
ラホールカントンメント駅に挟まれたあたりのエリアが
原則として外国人立ち入り禁止。
ラホールに行く旅人は心にとめておいたほういい。

7.ホテルのキャンセルとかSIMとかのトラブル

急な予定変更でカラチに泊まることになった
(いきさつは後編にて記す予定)。
在カラチのパキスタン人の友人に一任して
その夜に私が泊まるホテルを予約してもらった。

とりあえずホテルに1泊した翌日。
ホテルを移るか、このホテルに延泊するか。
ネットであれこれ比較検索した結果、
このホテルに延泊することに決めた。

ホテルのレセプションで直接聞いた部屋代より
エクスペディア経由の予約の方が安くなるので
エクスペディアから予約することにした。
もちろん前編で記した出来事の二の舞にならないよう
事前にエクスペディア予約で問題ないか
レセプションに確認済み。

スマホ画面でエクスペディアでの予約を進め、
最終税込みの値段はいくらになるのかな?
ぐらいな軽い気持ちでタップを続けた結果、
予約が完了されてしまった。
ちょっ・・・待てよ!
まだエクスペディアの12%割引クーポン使ってないよ。

予約は払い戻し不可のものだったが、
アメリカ系の旅行代理店って予約から24時間以内は
キャンセル可能だって話を聞いたことがあった。
エクスペディアもアメリカ系代理店だよね?

とりあえずすぐにエクスペディアに連絡。
「払い戻し不可の料金なので、キャンセルしても返金できません」
というつれない返答。エクスペディア側では
もうどうにも予約をいじれないらしい。
24時間以内キャンセル可能という話は都市伝説なのか。

次なる手段はホテルのレセプションに行き事情を説明。
「予約のキャンセルや返金対応の権限はマネジャーにあるYO。
マネジャーは夕方6時にここに来るYO」
いやいや、それじゃ遅い。今すぐいったん予約をキャンセルして
予約を取り直したいのだ。12%割引は私にとって小さくない。

マネジャーに電話してくれない?とお願いすると、
予想の斜め上を行く答えが返ってきた。
「今日は祝日だから、携帯電話の電波が不安定だYO。
だから電話できないYO。ほら、アンテナ立ってないの見て」
と、レセプショニストは彼のスマホを私に見せた。

えっと、祝日になるとパキスタンは電波不安定になるのですか?
確かにその日はホテル近くでも道路封鎖が行われ、
どうやらイスラム教シーア派(パキスタンでは少数派)の人々が
黒い服に身を包んで行進やら無料の食事配布やら何やらを
その道路封鎖された域内で行っていた。

シーア派の行事は私としてはどうでもいいのだが、
携帯電話の電波まで制限するのかパキスタン。
Uberを呼べなかったり、私的にはいろいろ不都合があるのだが。
(もっとも道路封鎖していたのでUberを呼べなかったが)。

誤って完了させてしまった予約がキャンセルできず
ずっともやもやしたまま半日を過ごし
決戦の夕方6時。再びレセプションに行き
マネジャーと話したい旨を伝えると、
「マネジャーはまだ来てないYO」とのこと。

電話して?もう携帯電話の電波復活したよね?
なんだったらそこの固定電話からマネジャーに電話して?
私がしつこくレセプションで粘っていると、
奥からマネジャーが出てきた。いるじゃん。

レセプショニストに嫌味を言うと、
「マネジャーは今来たYO」とのたまった。
はいはいはい。ですよね。そうですよね。
日本でもなかなか来ない蕎麦屋の出前の状況確認には
「今、出ました」って常套句があるのと同じだ。

マネジャーと話をして判明したことは、
これはエクスペディアとホテルとの間に
第三社がある予約で、そこに問い合わせないとダメだと。
今日はもう夕方6時だから無理、
明日からは週末だから連絡がつかないとのこと。

はいはいはい。私のうっかりタップが悪いんですよね。
エクスペディアの割引クーポンを使わずに
うっかり予約を完了させてしまった私が悪いんですよね。

それをどうにかカバーしたくて自助努力したいのだけど
祝日で電波が制限されたりマネジャーが不在だったり
時間外や週末のために関係会社に連絡がとれなかったりと
いろんな要因が重なったのも私の責任なんですよね。

自分のミスなので自分でなんとか状況を回復したかったのだが
それをことごとく阻んでくるパキスタン。
それもこれも何もかもインシャーアッラー
(神の思し召しの通り)なのがパキスタン。




ま、ラホールとカラチで精神的に殺されかけたという話です。
こうして振り返ると大したことではないのだが、
このときはいろいろ想定外の出費が重なっていて
出費に対して神経質になっていたのだ。

日本で生活していて1000円を何かで損をしてしまうと
あーもったいない、ぐらいの気持ちになるのだが
パキスタンを旅行していて2000ルピー(=1000円)
損したとなると、ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
2000ルピーあったらあれもできるこれも買える
自分のバカボケゴミクソカスうんこ野郎
かくなる上は切腹して罪を償うべし
ぐらいの気持ちになってしまう。

経済的な損失は同じでも
精神的なダメージは何倍にもなるという
物価の安い国における隠れた罠。
罠に陥って憤死する日本人はもしかして私だけ?


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