ラリーへ行くべきか否か?

以前、こんなことを書いたんですが。


言及していませんが、ここで書いた「ラリー」は海外ラリーを念頭においています。当時、国内ラリーはGWのTBIしかなかったので。また、きっかけになったポストが以下のものだったからです。

彼は参加を迷ってるみたいですね。
おいくつか知りませんが、若いっていいですね。選択肢が沢山あって。

行ってみればいいんですよ、行きたい気持ちがあるのなら。一度行ってみて、むしろその後の選択が重要になる、と私は思っています。


さて、説明するにあたり、ラリーをやるタイプを大きく二つに分けてみます。
トップクラスとそれ以外


トップクラスには、MXなどを退いた後にメーカーの後押しでラリー入りしたプロをはじめ、玄人はだしのアマチュアを含めます。パリダカで総合10位に入った池町氏(プライベーター1位。当時はまだアマチュア)あたりをイメージしてください。

そして、「それ以外」は、文字通りそれ以外。大会を支える存在であり、入れ替わりの激しい層でもあります。
ここが充実していれば人気の大会と言われますし、運営も安定します。
そのへんの事情は、ラリーに限らず、どのレースも同じですね。


ただ、この層は連続して何年も参加し続けることが難しく、生涯をラリーに捧げられるのは環境に恵まれた人(あるいは環境を勝ち取った人)だけでしょう。
大多数の方が「それ以外」に属すると思いますが、いかがですか?

私が見てきた多くの参加者は、ラリーにはせいぜい数回行ければいいほうでした。私自身もそうです。
長い休暇、多大な資金。それを毎年用意するのは大変なことですから。

そして、そのうちの何割かは、次のような状態になりました。


1)開催国へのバイク輸送期間(=長期間)バイクに乗れない。練習時間が足りなくなる。
船輸送なので時間がかかります。下手すると半年くらい乗れない。(昔は、複数台持ちは今ほど一般的ではなかったんです。)

2)ラリーに時間と資金を割いたため、これまで参加してきたレースや練習会に参加できなくなる。
長期休暇のために仕事のスケジュールがぎちぎちになる、給料をラリーに注ぎ込んだため他のイベント参加費を捻出できない、あるいはその「両方」。結果、バイクに乗るのはラリー本番くらい。

こうなると本番で完走すら危うくなります。



そして、乗れない自分を無意識に繕うのか、「ラリーの過酷さ」を語る人に成り下がります。

つまり、「自分がヘタなのではない、ラリーが大変つらい競技だから完走できなかったのだ」と美しいストーリーを作り上げるんですね。


これは、私がラリーに初参加しようと思った時、いろんな方にお話を伺いまして、同じ大会でもあまりに違う感想やアドバイスになるので怪訝に思ったことでした。
そして、自身で現地を体験した結果、過酷さを語ることで自分を上げる層がいることに気づいた次第です。

とはいえ、そういうのは周囲も分かってくるし、ご本人もいつしかバイク界隈から離れていきます。

さみしいことですね。仲間が減ってしまうんですから。
彼らが海外ラリーにさえ行かずにいたら、今でもバイクに乗っていたのではないかと思えば、尚更。


海外ラリーはいい経験になるし楽しいです。行けるなら、行ったほうがいいです。
ただ、無理して行くものではないです。無理をしたら、あなたのバイクライフを縮めます。

頑張って年に1回の海外ラリーに出る(そして、それ以外はほとんどバイクに触らない日を送る)くらいなら、月に数回、国内のイベントに参加したほうが、乗る時間も多いし、テクニックも向上するでしょう。一生涯をトータルで見て、充実した趣味になるはずです。


というかね、
ちょっと海外に行った経験だけぶら下げて、実はろくに乗ってもない。フラットSSを「過酷で死ぬほどつらいコース」と語る、昔乗ってたオジサン。そういう方を増産したくはないですね、私は。

行くなら、コースを楽しめる余裕と技量は持っててしかるべきです。でなくては主催にも迷惑がかかります。

どことは言いませんが、日本人のリタイアが多すぎて、積載が間に合わないから動くバイクは自走でコンボイに付いてこい、なんて事態もありました。

まあ、海外ラリーに憧れ、「そのために二輪免許を取得。練習もなしでにエントリー」と言い出した猛者もいたくらいなので、もしかしたら「誰でもエントリーできるシステム」にこそ罪があるのかもしれませんが。

余談ながら、もしラリーがライセンスによって厳格に管理されていたら、こういうことは起こりません。たとえば競技経験〇年以上とか、MXやEDでIB以上とか、条件を付せばいいんですから。


とはいえ、1)も2)も、潤沢な資金があれば概ね解決します。

お金さえあればバイクを複数台持てますし、それを置くガレージも用意できます。

実際、パリダカ常連組はフランスにガレージを持っていますし、なんなら専任のメカニックを駐在させています。時間があればモロッコあたりに渡って砂漠トレーニングをしてもいます。

そう、環境があれば何でもできるんです。そもそもパリダカなんて、お金持ちの暇つぶしでしたからね。だから我々庶民が同じ遊びをしようと思うと、どうしたって生活に無理が出るんですよ。

そもそもトシ西山氏が若かりし頃は、バイクに乗るのは本当にお金持ちの趣味だったらしいです。高度成長期を経て、日本はじわじわ中流意識を高めていったんだと思いますよ。だから今、私のような者でもバイクに乗れているわけでして。

そういえば、こんなエピソードがあります。
カツカツでプライベート参加をしていた池町氏は、当時こんなふうにぼやいてました。

「おまえはパリダカに出てるのに、なんでカネ持ってないの?て言われるんや。確かに周囲のライダーを見ると、みんな凄い。レースの後にあちこちのライダーんちへ遊びに行ったんやけど、そらもう豪邸で…」


というわけで、庶民が参加できている日本は、ある意味「総中流社会」を実現できているんだと思っています。経済格差と騒がれていますが、日本なんて大した格差じゃないんですよ、世界的に見たら。


急に古い言葉を出したので、参考サイトを載せておきます。



とはいえ、格差がないとは言いませんし、その是非は私がどうこう言う話ではないです。

そして、資本主義である以上、もともとの資産家でなくとも成り上がることは可能です。力と情熱があれば。




ただ、そこまでできる人は一握りです。多くは力尽きてラリーシーンから消えていきます。


けーごさんはライダーとしてだけでなく、コマ練スタッフやご自分の主催イベントまで実現しました。「ラリーの神髄に触れた方」といって差し支えないと思います。
その氏ですら、仕事と家庭、この先の人生を考えて一線を退く宣言をなさいました。(TRIAL RALLYはとてもよいイベントでした。ありがとうございました。)

ブログのリンクも貼っておきます。


TRIAL RALLYもそうですが、今は本当に国内ラリーが充実しています。

クロスミッション系のアドベンチャーラリーはナビゲーションありきなので競技ラリーとは一線を画しますが、

TRIAL RALLY、コマ練、コドコマラリー、DOA・・・などは、その先に競技ラリーを見据えることができます。
わいわい楽しみながら海外ラリーの端緒を味わうことができる、とも言えます。

そう考えると、本当に今はいい時代になりました。

そして、一般的にはこのくらいで楽しんだほうが「生活が怪我をしない」感、ありますね。

よちよちラリー、いいじゃないですか。
コマ練よりさらに敷居を下げて、「いつものツーリングにちょっとコマ図を」というフレンドリーさ。


それでなくともパリダカは、今となってはアマチュアが参入するには(昔よりずっと)厳しくなっています。コースがどんどん高速化していて、「それ以外」の素人がついていける代物ではなくなっています。今走るのなら、私もこちらのほうがいいかな。


そうそう、記事のきっかけになったモンゴルラリー。(RM)
今のRMではなく、私はRRM時代にお邪魔しました。


楽しかったですよ。
羊続きの食事には途中ちょっと飽きましたが、ある日某氏が牛(家畜)にヒットしてしまいまして、その日は豪勢に牛肉が食べられたのとか、とても懐かしい思い出です。
(SSERが現地の牧民に補償のため牛を買い上げたんです。腐らせてもしょうがないのでエントラントに大盤振る舞いになったんです。あれはラッキーでした。)

それと、RMがお勧めなのは日本人主催だから。
レギュレーションを日本語で読めるし、ブリーフィングも日本語で聞けます。これは大きなアドバンテージです。

昔はほぼ日本人のみの参加でした(そこにモンゴル人数人)が、今は他国参戦も増えています。海外ラリーらしい空気感も強くなりました。行く甲斐もあるというものです。



以前書いたように、実はラリーも生活そのものです。


ふだんのあなたのキャラと生き方が、とても現われてしまう場所でもあります。
おもしろいですよ、ラリーは。
余裕と技量がある方は、ぜひ一度経験してみればいいです。




さて、あまりに個人的な話なので書こうかどうか迷いましたが、最後に有料で隠して書いておくことにしました。パリダカに通った友人の話です。

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