河川敷と堤防と野良コースと

みんな忘れてるだろうけど、昔(90年代に入ったくらい?)のオフロードバイク雑誌には、定期的にこんな話が載っていた。

バイクで堤防を上り下りしてはいけません。「痕跡が残ってないから大丈夫」とあなたが思っていても、あなたが走った跡を雨水が流れ、最悪の場合は堤防が決壊します。決壊すれば周辺の住宅に多大な被害をもたらします。だから河川敷で遊ぶ時、決して堤防を上り下りしてはいけません。

(テキストはこんな感じ。イラスト入りでわかりやすく解説してた記憶)


実際、水の流れはほんの少しの段差で伝わる。蟻の一穴なんて表現があるくらいだ。一カ所(数ミリでも)くぼんだらソコに集中する。大雨の時に流れが集中したら、あっという間に大きな轍になる。轍ができたらそこから地割れする。地割れしたら・・・・堤防決壊まで秒読みだ。

(土質にもよる。だが堤防に関して言えば、もともとの地盤じゃないから一般的に山よりは堅牢じゃないだろう。ケースバイケースだろうけど。)

荒れるのなんて、ほんとすぐだ。川の近くに住んでる人からしたら、堤防上りは殺人行為にも等しい。

(もちろんそうならないように、堤防は保守点検されている)

(だからといって彼らの仕事を増やしてはいけない=堤防は走らない)



追記

tacさんが法面走行についてツイートされたので置いとく。俺が言うより説得力あるやろw



積載一輪車の重量+駆動痕<<<<<<バイク

その差は圧倒的やろ?これだけでもう「バイクで法面を上り下りするのはヤバイ」って分かるわな。


そして体験者の声。

この方は聡明ですぐ理解なさったようだが、平時の河川を見ていても洪水時の凶暴さはなかなか想像できない。つい、「ナンデモカンデモ禁止ニシヤガッテ!」という気持ちになりがち。

だが、社会の安全は、みんなの「チョット我慢」がないと成り立たないもんなのよ。俺なんかバカだから、バイク雑誌で丁寧な解説を見るまで走ってたからね。いや正直スマンカッタ。今は思うよ、無知は罪。


追記おわり

ここから話を戻すよ!


余談だが、この上げ舟ってのはうちの近所にもあった。輪中に限らず、昔から治水は人類の課題なんだ。老害の俺が言うのもなんだが、お年寄りに聞くと、そういう話題が出てくるよ。俺もお年寄りから聞いたんだ。「子どもの頃に川があふれて上げ舟に乗った」って。


林道でバイクや四駆が槍玉に挙げられることがある。だが荒れた写真を見るに、走ったことそのものより、そこを流れた雨水が被害を大きくしていることが多い。

画像1


つまり、走った本人たちは荒らした意識を持ちにくい

そりゃそうだ、走っただけでソコマデ荒れたわけじゃないもんな。


好例を思い出したので検索してきた。割と最近の話なので、覚えている人も多いと思う。(上の写真は下のサイトからいただきました)


これが新聞で話題になった時、「バイクはきっかけを作ったかもしれないが、この荒れ方は水だよなあ」と思った。つまり、走った本人たちには届きにくい批判だろうな、と。

(だから免罪されるとは言わない。)


(あと、記事は「林道から獣道に入っている話」に触れているので、写真の問題に留まっていない可能性がある。)

(が、記事のベースにはバイクに対する悪感情と無知があるという印象を受けた。わざとかも知らんが、オフロードバイクとモトクロスバイクの混同とかね。つまり、林道を走る時は一層注意しないといつ締め出されるかわからん、と感じた。)


そんなわけで、オフロード雑誌は定期的に上記の話(バイクで堤防を上り下りしてはいけません)を載せてた。堤防決壊はほんとシャレにならんから。



オフを乗り始めてすぐに林道へ行ける人は恵まれているほうだ。

最近は河川敷も厳しくなってるが、昔ならたいてい、近所の河川敷で初ダートを経験した。

河川敷には(今で言う)野良コースがあり、その周辺のアクセス道も砂利道で、初心者がトコトコ走るのにちょうど良かった。

堤防は草が刈りこまれており、石や凸凹もない。初心者が少し勇気を出してチャレンジするのに最適のヒルクライムに見えた。だから多くの人は堤防で初ヒルクライムを体験した。

事情を知らなければ、自然とそうなった。そうでもしなけりゃ都市部でヒルクライムなんて体験できない、という事情もあった。


今となっては黒歴史でしかないが、俺なんか、先輩に連れられて行った河川敷でこう教えられた。

「砂利道に慣れてきたら堤防でアップダウンの練習をしてみよう。堤防をまっすぐ上り下りして、それにも慣れたら斜めに走ってごらん。キャンバー走行の練習になるよ。それもできたら、最終的には堤防でキャンバー8の字を描けるようになるといいね」

今の感覚だと信じられない非常識だわな。(先に謝っとく。ほんとうにすみませんでした。)

言い訳させてもらえば、80年代はまだ「堤防を走るな」が徹底されておらず、オフロードを走る人にもそんな意識が薄かった(=知らない人のほうが多かった)。




追記

なんですと?!

「バイク乗り始めた頃にチラッと見たオフ車の乗り方の本に法面使った練習法なんての載ってた」


そんなガイド本があったなら、そりゃ先輩もああいう指導をするわな。


追記おわり




だから先輩も、まったく悪気はなかった。彼は「今いる環境でいかに効果的な練習をするか?」を具体的に教えてくれただけ。


親切と無知による罪は両立する。

だからこそ、オフロード雑誌は定期的に警鐘を鳴らした。そして、その知識はだんだん広がっていった。(90年代半ばには「堤防を走らない」は、かなり広まっていたと記憶する)。


それでもニューカマーは常にいるから、堤防ヒルクライムはよく見かけた。そしてたいてい、先輩方から注意されてた。たいていの人は(頭ごなしに叱るのではなく)理由も丁寧に教えていた。

昔から「オフは少数派」感覚があったから、オフロードバイクに乗ってるだけで仲間意識も強く、仲間を減らしたくない意識が働いてたんだと思う。


先に「野良コース」なんて書いたが、河川敷コースも背景はさまざまだった。

河川事務所に話を通して借りてる(というか黙認してもらう感じ?)人がいたり、原状回復を条件に重機を持ち込んで整備・管理してる人がいたり。ショップやチームでまとめてる野良コースもあった。それを野良と呼んでいいのかわからんが。

「ここを走るなら月に500円払ってくれ」と言われる野良コースもあれば、誰がいつ走っても無料なところもあった。無料だが、草刈りとか整備くらいは手伝ってほしい、というところもあった。

まあ、今も昔もうるさい人はうるさかったし、そういう人が場を守ってくれてもいた。ありがたい存在ではあった。ただ、それも運営次第というか・・・・人が集まると どうしたってもめ事は起きた。

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