ボランティアについての四方山話


TLに気になる話題が流れてきたので、つい追いかけてしまいました。
以下にあれこれ書いてみます。









CROSS MISSIONを擁護するわけではありませんが、世の中のイベントの大半は赤字です。何万人も参加するマラソン大会ですら赤字です。

CROSS MISSIONが赤字だと言っているわけではありません。
アドベンチャーラリーのシリーズはもしかしたら大きく黒字かもしれませんが、レースに関してはぼろ儲けではないだろう、というお話です。誤解なきよう。



よく言われる、「参加人数が多ければペイする」というのは幻想にすぎません。むしろ、大きい大会ほど経費がかかります。

(そしてこれはバイクレースに関しても同様です。大規模大会はコストがかかりがちです。)

(重ねて申し上げると、アドベンチャーラリー系はわかりません。今年の開催が増えているのを見るに、「レースの補填をラリーでやってる?」と思ったりしていますが、これはあくまでも憶測です。勝手なことを想像してすみません。)




マラソン大会の場合、足りない分は、ぽちパパ氏の仰るように「我々の税金」から予算が組まれているはずです。税収の少ないところだと地方交付税交付金から補填かもしれませんが。

(ただ、予算は総額に対して組むので、マラソン大会運営費の元は〇〇税、とはっきり区別されているわけではないですね)

なので、マラソン大会も地元民のボランティアで成り立っています。
ここもバイクレースと同じです。

私もマラソン大会の運営経験はないので、関係者のお話を探してきました。
それなのになぜボラの話を知っているかといえば、付き合いでボラに駆り出された経験があるからです。



「え?マラソン大会て、スタッフの人件費も出ないの?」と思った方、下記サイトをご覧になってください。現実を納得していただけるはずです。
(私の場合も、スタッフの制服とお昼の弁当はちゃんと出ました。笑)

(リンク先が消えると読めなくなるので下に記事を引用しておきます)

昨年3月、第一回京都マラソンに参加したランナーは1万4000人です。
その安全確保と交通規制のため、警備会社から3600人の警備員が投入されました。
コースには40台の臨時カメラが設置され、参加者、観戦者を見守り、運営にかかわったスタッフは参加者を上回る1万5000人を超えたました。
この京都マラソンでは医療救護を合わせた安全対策費だけでおよそ2億8600万円が投じられました。
さらに大会全体の総経費はおよそ6億5900万円にのぼりました。
単純計算すると1人のランナーを走らせるのに4万7000円が掛かったことになります。
京都マラソンの参加費は1人1万2000円と国内レースで最高額でしたが、それでも自治体からすれば1人当たり3万5000円の赤字
だったことになります。
参加者が3万6000人、運営経費が19億円の東京マラソンでは、ランナー1人走らせる金額5万3000円に跳ね上がります。
東京マラソンの参加費は1人1万円で高いと思われてましたが、実はこれでも自治体の負担額と見合ってはいなかったのです。

今年予定されているマラソン大会で参加費が1万円を越えるのは、京都、東京、大阪、神戸、北海道、湘南国際、熊本城、名古屋ウィメンズ、です。
逆にフルマラソンで安いのは
田沢湖(3700円)、大田原/栃木、佐倉健康、館山若潮、いびがわ(4000円)、いぶすき菜の花、おきなわ(4500円)
等です。
(以上、引用おわり)


東京マラソンの参加料の仕組みについて

https://tokyo42195.org/common/pdf/200218_entryfee.pdf

(以下、PDFより引用)
東京マラソンの開催にあたっては、その運営に約 19.7 億円の経費(EXPO や関連イベン トにかかる経費は除く)(2018 大会実績)を要します。これは、参加ランナー一人当たりに 換算すると約 54,800 円(2018 大会定員)の費用となり、この費用のうち多くの部分は準備 段階で必要となるものです。 経費の内訳は以下のとおり

【一人当たりの費用換算】※2018 大会実績 〇競技・大会運営費 16,970 円 ナンバーカード・計測チップ作成、医薬品購入、給食物品購入、道路占用・使用許可申請 手続、更衣施設借用、手荷物運搬、輸送関連車両確保など 〇設営関係費 13,820 円 運営・更衣テント、交通規制資機材など 〇警備・安全対策費 13,360 円 沿道警備員確保、監視カメラ設置、警備資機材レンタルなど 〇広報費 6,860 円 交通規制広報・チラシ、大会開催告知、大会プログラムなど 〇エントリー関連経費 3,790 円 エントリーシステム運用、参加案内など

(以上、引用おわり)



そんな赤字イベント、やらないほうがいいのでは?

・・・という声が聞こえてきそうです。



でも、市町村は競ってマラソン大会を行っていますね。


どうしてでしょうか?

一つには、マラソンは「市民の健康のため」という大義名分があります。(議会で予算をつけやすい)

加えて、地域活性化=外から来訪者があることで宿泊や飲食、物販などが期待できます。
「地場産業にテコ入れ」という大義名分があります。(予算をつけやすい)


ここらは80年代半ばから90年代半ばに、村おこしのために開催されたバイクレースと同じ構造です。
(昔はバイクレースもマラソン大会と同じように扱ってもらえてたんです。ごく一部で、ですが。)



ほかにも地方レースをご紹介しているので、興味がある方はnoteでご覧になってください。


さて、もう少しマラソン大会の話をします。

こちらのサイトは、主催の目線で「コストのかからないマラソン大会」を教えてくれています。

前半に、
「よく言われる、『参加人数が多ければペイする』というのは幻想にすぎません。むしろ、大きい大会ほど経費がかかります。
と書いたのは、こういうことです。


河川敷を走るだけなら、確かに費用は限りなく掛からないです。 市街地なら警備員も交差点ごとに何人といますが、河川敷ならそこまで警備員は不要です。

小さな規模の大会ではコストを抑えることも可能かもしれません。
(以上、上記サイトより引用)



しかし、これをHEDにそのまま当てはめるのは無理があります。


これをHEDに置き換えると、
「既存のMXコースを使い、コースに手を加えずに開催。マーシャルはジャンプなど見通しの悪いポイントのみ配置」
・・・・・・という感じでしょうか。

それ、どこのMX?!という話ですね。


かといって、JNCCのCut &  Ride 方式も、HEDには向きません。

ご存じない方のために説明しますと、Cut &  Ride 方式とは「草刈りや設営作業を手伝う代わりに無料でコースを走れる」システム。
コース整備等を目的に、昔から各地で行われてきました。「午前に作業、午後は走行」というパターンが多いです。
「Cut &  Ride」なんてこじゃれた表現を採り入れたあたり、JNCCらしさ満開ですね。


募集要項サイトがあるのでご紹介しておきます。


(リンクが消えた時の保険に、募集要項を引用しておきます)

募集数:15名までとし、達し次第打ち切りになります。
 
食事: 草刈り終了後、弁当とお茶を進呈します。
 
保険: JNCC & WEX「スポーツ安全保険」未加入の方は申込時に必ず申告してください!(*JNCCにて保険料を負担いたします!)

※参加条件としましては「草刈り機 持参」になり「燃料はJNCC負担」となりますが、草刈り機を用意できない方であっても 5台までなら JNCCで用意していますので、どうぞ 気軽にお申込みください!(*交通費は参加者に負担して頂きます)
女性のご参加も歓迎ですが、男女を問わず「 草刈り時のゴーグル着用 」は絶対条件となりますので、お忘れにならないようご注意ください。
(引用おわり)

Give &Take が明確でいいですね。




話を戻します。


開拓民の手は必要なくせに、その開拓民が「走りたい!」と思うコースではないのがHED。
だからCut &  Rideは、HEDには向かない場合が多いです。


クロスカントリーコースなら初心者でも走れますが、HEDだとそこまでの人がグッと減ります。
「あんな急坂、わざわざバイクで走りたくない。怖いだけ」
・・・・・多くの初心者の本音はこれです。

したがって(数が少なめの)上級者がスタッフに駆り出されますが、同じ人が何回も使役されることにより疲弊していきます。

あるいは、
「自分が走れるようなコースではないけど、お世話になっている〇〇さんに頼まれたからお手伝いしよう」
という善意の方が手を貸してくれます。

ですが、厚意だけでは、永久には続けられません。(お財布にも休日にも限度があります。)



だから最初のポストのような発言が生まれるわけです。

    (再掲)


この、「一番の悩みは開拓スタッフが減ってる」は切実です。



これはmotto氏だけのお悩みではありません。

いつの時代も、各地で聞く話です。


でも無敵の解決方法は、今のところ見つかっていません。少なくとも、私は知りません。

それでも、都市部が近い地方なら、新規参入スタッフを期待できます。
しかし、過疎地域だとそれは無理です。

あれだけ大規模に行われていたレイドカムロでさえ、なくなった理由が人手不足と聞きますし。
いや、あそこまで大きくやっていなければ、あるいは少人数スタッフで継続できたのかもしれませんが。

(会場だった金山町は山形県県境の町です。今年はお隣の新庄市でダルマニアクスがいよいよ開催されますが、長く続けられることを切に願っています。)



手前味噌ですが、以前私たちの書いた記事をご紹介します。

これ、かなり細かいところまで計算しました。長野の固定資産税から杭の値段まで考慮しています。

でも、そこに「開拓民コスト」は入っていません。


入れると、今のエントリーフィーを数倍にしても追いつかない可能性があります。
(コース状況によるので一概に言えませんが。)


現状、地元協力者が踏ん張る+今やすっかり定着の「Cut & Ride」で対応・・・・が現実的な解決方法です。






悲観的なことばかり書きましたが、この「競技自体をビジネス化」案。

実現できたなら、すごいことだと思います。素直に敬意を表したいと思います。




ここからは少し余談です。


私たちは何かというと「大きなスポンサーさえつけば!」と考えがちですが、それはもう古い手法かもしれません。

なにしろ、世界最大級のイベント(と言っていいと思います)オリンピックですら、ボランティア無しでは成り立たないのですから。

(下記サイトより引用)
東京2020の組織委員会がボランティア募集している。応募要項には『東京2020組織委員会が募集する「大会ボランティア」には、主に大会期間中および大会期間前後に大会運営に直接携わり、大会の雰囲気を醸成するメンバーの一員として大会を成功へと導く活躍が期待されます』(原文ママ)とあり、大会前後に1日8時間程度で10日間以上活動できる人。募集人数は8万人で2018年12月上旬に締め切られる。

 オリンピックやパラリンピックは、選手はもちろんだが、ボランティアなしでは大会運営は成り立たない。
(引用おわり)


ちなみに、東京オリンピック2020のスポンサー一覧はこちらです。



そして「ボランティアでごまかすな、タダ働きをさせるな、きちんと雇用を」と騒動が起きたのも、まだ皆さんの記憶に新しいと思います。



この、2つ目の記事はぜひ全文をご覧になってほしい。とてもおもしろいし、参考になります。

長いのでざっくり内容をご紹介しますと・・・・・

(以下、記事より引用)
オリンピックでボランティアを大量に使うようになったのはロサンゼルス五輪以降だ。ゴリゴリの新自由主義者レーガン大統領のもとで五輪の民営化が進められ、一気に商業主義化した記念すべき(?)大会でもある。ボランティアによって人件費を削ったこともあって黒字となり、五輪は儲かるという認識を広げることになる。
(引用おわり)


商業(ビジネス化)とボランティアは切っても切れない関係だったんですね。
ただ、それがための弊害も出てきたため、ボラ環境の整備が必要になります。

(以下、記事より引用)
ボランティアに支払うお金がかからないとしても、彼ら・彼女らが円滑に働けるようにするためには、責任を持って十分なお金と時間をかけて環境を整えなければならない。その意味では「安上がり」では決してない。
(引用おわり)


そして最後に
(1)やりたくてやる人
(2)やりたいわけではないのにやらされる人
(3)やりたいのにできない人

の区分と説明。「動員」ではなく「社会的意義」への昇華。


つまり、ボランティアをすべて有償にすることが是ではない、というお話でした。

そして、「やりたいわけでもないのにやらされる人」。
これ、日本ではありがちだと、記事内でもはっきり書かれていますね。
私もそういう事例を多々見てきました。
この先、ここらの改革は必要です。

具体的に言うと、

「やりたくてやる人」にボランティアをしていただく。彼らの運動が継続できるよう、ボランティア環境を整える
「やりたいわけではないのにやらされる人」を可能な限りゼロにする
「やりたいのにできない人」を「やりたくてやる人」に昇華する

    ・・・という感じでしょうか。




それと、スポンサーについてですが。

二輪スポーツに大スポンサーは、(今は)無理だと思います。
(タバコスポンサーが跋扈していた時代のロードレースは、味の素やら日清食品やら資生堂やら・・・と大賑わいでしたけども。)


そもそも日本ではこういう文化 ↓ が育っていません。


大スポンサーは、大衆とともにあります。子供から老人までレースを見てくれるなら、一般企業も動くかもしれません。

そのためには観客を増やすことが大事ですが、KVO氏の仰る通り、今の日本はそういう状況ではありません。



さらに言うなら、

競合するプロスポーツは、あの時代よりグッと増えています。


たとえばサッカーやバスケットボールは、当時はまだプロ化していなかったorしかけていた時期です。
(Jリーグは1993年から、バスケは2005年から)

そして、労働人口は(団塊世代の引退と若年層の進学率向上により)当時より格段に減少しています。




プロスポーツ選手を支えるのは一般労働者です。



各スポーツのプロ化が進み、プロ選手(労働者が支えるスター)は増えているのに支え手(労働者)は減っている、これが日本の現状です。

そんな中で本当にプロ化を目指すならば、HEDのライバルは同じ二輪のロードレースやMXではなく、野球やサッカーです。
その視点に立った覚悟と展望があるのか? ビジネス化の具体的な発表が待ち遠しいです。

そして、これはどこかの記事でも書いたんですが、オフロードに関していうなら、

既にプロ化しているMXを、本当の意味できっちり「食えるプロ」にするのが最優先

だと、個人的には思います。




つれづれ書いてきましたが、「子供からおじーさん、おばーさんまで山奥のハードエンデューロを見る」文化が定着するのを待っていたら、今のボランティアスタッフは枯渇してしまいます。

今、我々世代がなんとか頑張っているうちに、「競技自体をビジネス化」できる妙案が生まれることを切に期待します。
私のような「去り行く世代」も、若手には明るい未来を見せたいのです。


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