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日常の解像度〜包丁と砥石〜

あなたの家には包丁はあるだろうか?

およそ料理というものをしないにしても、ほぼ全ての家庭に包丁はあるだろう。100円均一のペラペラのナマクラから、職人謹製の業物まで価格帯も非常に幅広い。

道具として見た場合のこの日常使いの刃物、使ったことのない人は少数派だろう。一口に包丁といっても和包丁と洋包丁という大きな括りに別れて、和包丁でも関東と関西とそれ以外の地方独特の形状があるなど非常におもしろい。 

わがやは妻がそっち方面の料理の人なので、包丁はゴロゴロと転がっている。

菜切包丁に柳刃、小出刃、ペティに三徳に牛刀etc...チーズナイフやオイスターナイフも入れたらかなりの種類の刃物がある。包丁ケースで持ち歩いていて職質をくらったら間違いなく長引きそうな本数だ。

材質もV金10号(包丁用の特殊ステンレス鋼)やCM鋼(クロームとモリブデンの合金)だったり、青紙鋼(これも合金)だったり。値段も数千円から一振り数万円まで幅広い。


では、砥石はどうか?


包丁がこれだけ日常的な道具であるのに、砥石になると途端にレアなものになってしまう。

もう少し簡単なシャープナーという包丁を乗せてコロコロするだけで研げるという道具もあるが、砥石を持っていて家庭で包丁を研ぐ人はどれだけいるのだろうか?

包丁の切断のメカニズムは極めて鋭利かつ一定の硬度と粘りを持つ金属片で、切断対象の組成を文字通り断つことだ。ミクロの世界で見るならば、耐久性を無視すれば極端に鋭利に研ぎ澄ませた木片でも大抵のものは切れる。

そうだ、砥石の話だ。

僕は靴を磨くとか何かを磨くのに夢中になるタイプなのだけれど、この包丁を研ぐという行為は実に良い。

研ぎあげた包丁の切れ味の実用面もさることながら、研いでいる間のあの精神統一感。シャリシャリという砥石と刃物の擦れる音もたまらない。

しかも、包丁を研ぐとおまけに妻からも感謝される。世のお父さん方にはぜひ騙されたと思って包丁研ぎをお勧めしたい。


この砥石、初めて買ったのは貝印のアルミナ質の人造砥石だ。

知らない人が多いと思うが、砥石は昔は石切場から切り出して作られていた天然物だったが、今の主流は人工的に研磨剤とセラミックなどを高温高圧で焼成した人造砥石が多い。

そして、砥石で包丁を研ぐと砥石の面が少しづつ平滑ではなくえぐれるように曲面状になっていく。こうなると良い刃付=鋭い刃先に研ぐことができない。

そこで、砥石を研ぐ砥石が必要になる。これが上の写真の左側の2個で、面直し砥石という砥石を研ぐ砥石だ。もうワケがわからない。


でも僕はハマり始めるとズブズブいくタイプなので、包丁も妻の誕生日や結婚記念日のたびに理由をつけて買い足して行き、砥石も旅先で天然物の良いものを見つけてはお土産に買って帰ってきている。

砥石のお土産はマジでやばい。ザ・重量物。おかげで飛行機の預け入れ荷物の重量オーバーに引っかかるところだった。今見たら同じものがAmazonで売っていた。。。

しかし、重い思いをして連れ帰ってきた天然の砥石の石の模様の美しさには惚れ惚れする。写真右側の二個は、はるばる熊本の天草諸島から連れてきた天草砥石だ。

これまた砥石でも硬軟さまざまあり、一個買ってOKじゃないところが大変めんどくさい。

しかも天然モノの中にはすでに採掘がほとんどされていないレアな砥石もあったりして、こだわりの料理人は極上の業物の包丁の為にそうした砥石を求めるらしい。まさに匠の世界だ。


もうね、延々と書けそうなくらい包丁と砥石はおもしろい。さすが人類史の中でも歴史の長い道具だけのことはある。

100均の包丁だって研ぎ澄ませばなかなかの切れ味になるし、これを機会にぜひ包丁研ぎにチャレンジしてみて欲しい。包丁研ぎ、おもしろいよ!


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