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万年筆はじめました

ちょうど去年の今頃だった。

ずっと欲しかったLAMYの万年筆に、オールブラックの限定モデルが発売されると聞いて、銀座の伊東屋に買いに走った。

そんな万年筆への憧れは遡ればまだ学生時代。

当時、僕が通っていた内田先生のアトリエは六本木ヒルズを超えた先の麻布寄りの坂の途中にあって、そこで20-30名の希望者向けにデザイン業界のトップランナーの方々を招いてよく有料のセミナーを開いてくれていた。

その時の顔ぶれは建築家の隈研吾さん、デザイナーの吉岡徳仁さん、グラフィックデザイナーの原研哉さん、プロダクトデザイナーの深澤直人さん、デザインエンジニアの山中俊治さんと超豪華だったのを覚えている。

他にもロス・ラブグローブ氏やパトリシア・ウルキオラ氏やジャスパー・モリソン氏など海外の著名な方々も親交が深く、来日時には講演会や対談をしてくれていた。

その講演会のスライドで紹介されていた、山中俊治さんの描かれたスケッチがとても美しかったのだ。


スケッチの道具は何を使うか問題

上記はイッセイミヤケの時計のスケッチだが、僕が見たそれはロボットのスケッチだったと思う。

サラッと描かれた線なのだけれど、選び抜かれた印象と、躍動感や軽やかさがある。超絶技巧を持つマンガ家のネームに似ている印象を受けたが、なんでも山中先生はマンガ家を目指していた時期があり、東京大学時代は漫研にいたとお話されていて納得した。

山中先生のスケッチ話はいろいろなところに掲載されているけれど、この話とかはLAMY愛が溢れていて好きです。


そんな山中先生の軽やかなスケッチに憧れをずっと持っていたが、僕はスケッチに使うのはもっぱらボールペンだった。

0.3mmとか0.4mmとかの細めが好みで、カリカリと描いていくのが好きだ。これはきっと高校時代に機械製図をやっていた影響な気もする。まだギリギリCADになる前、ドラフターと呼ばれるでかい製図板を使っていた頃だ。

機械製図では0.3mmと0.5mmと0.7mmの太さの線を使い分けていて、ハッチングという連続斜め線を手書きで書いていた。その影響で今も細いペンでハッチングを描く。

でも、細いペン先のボールペンでは繊細な表現はできても強弱のある線は引けない。全体的に緻密な印象に仕上がるものの、書き込んでナンボな感じもあり、要するにサラッと魅力的に描くには線の表現の幅が狭いのだ。


クライアント受け、という意味では緻密に描き込んだスケッチのほうがウケは良い。パッと見で密度があり、プロっぽい。

でもこれはクライアントさんに見せる為のスケッチだから、思考をまとめたり散らかしたりする自由さには欠ける。

もちろん緻密に書き込むにはどうしたって時間もかかるし、本来見るべき大筋や軸よりも末端へ意識が行きがちにもなる。


自分のデザインをより伸ばすには扱いやすくも制限の多いこの道具を変えなければ、これ以上先には進めない気もする。。。

その点では、線の強弱が調整可能で、筆運びの勢いでニュアンスを変えられる万年筆はきっと良い相棒なんだろう。使いこなすにはある程度の習熟を求められるというのも惹かれる。僕はそういうジャジャ馬が好きだ。


インク、固まりました

あれから1年。。。

勢い勇んで買ってみたものの、使ったのは最初の2週間ほど。徐々にフェードアウトして行きボールペン使いに戻ってしまい、万年筆は気づけばペンケースの中のお守りになってしまった。

いかん!!!これじゃダメだ!!!

思い立ってLAMYを取り出してスケッチに取りかかるも、インクがまるで出ない。

なんということだろう!蓋をしていたとはいえ、1年近く放置したせいでインクが固まってしまっていた。高かったのに。。。

急いで「万年筆 インク 固まった」と検索して、対処法を調べる。40度くらいのお湯にペン先をつけて20-30分放置してインクを溶かすと良いらしい。

さっそく試して、なんとかLAMYは復活してホッとした。


1年も待たせてしまったけれど、今度こそきちんと使おうと思う。もうインクを乾かして固めてしまわないように。

その為には、やはり定期的に誰かにスケッチを見せるのが良さそうだ。

そんなわけで、しばらくはInstagramでスケッチをUPしていきます。

企業さんの案件なんかだと守秘義務もあってあんまり載せられないことも多いのだけれど、自分のイメージや許可をもらっているお客さんの仕事を載せる予定。(ついでにInstagramをフォローしてくれるとすごく嬉しいです。)

自由に線が引けるのはいつになるかわからないけれど、道具が思考とリンクして良い仕事ができるように楽しみながら頑張ります。

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