いつからだろうか。物心ついた時には鼻水が垂れていたと思う。まだ純粋無垢な幼稚園児くらいの頃だったか、お母さんのワンピースの裾でそっと鼻水をぬぐった記憶が残っている。

思えばこの鼻づまりとの付き合いも30年越え。その間、実に25年近くほぼ鼻の詰まった人として生活して来た。

もちろん耳鼻科には行っていたし、母親のすすめる謎の漢方薬を毎朝飲んだり、謎の健康食品（黒酢？）を毎朝飲んだりもしてみた。

でも、僕の鼻腔が道を開けるのは年に10回あるかないか。激しい運動をしている時くらいだろうか。

口呼吸は健康に良くないということは知っていたけれど、そうは言っても鼻の穴のガードが硬すぎて空気すら通さないんだから仕方がない。もはや穴としての機能はそこにはなく、あるのは穴ではなく窪みになりつつあった。

そんな僕が鼻呼吸を取り戻したのは数年前。妻のススメで花粉症薬を飲んだときだ。

衝撃だった。世界に色がついた。例えるなら、初めて自転車に乗った日、初めてバイクに乗った日の感動に近い。感覚の新しい扉が開かれた感動。

なんでもっと早く飲まなかったのだろうか。花粉症であろうとアレルギー性鼻炎であろうと病名やレッテルなんてどうでもいい。とにかく鼻腔の渋滞解消という事実が、これほど生活からストレスを減らしてくれるとは。

クスリ手放せない問題

しかし、問題もある。飲み始めたら最後、やめれば元に戻るだけ。つまり、飲み続けなければいけないのだ。

耳鼻科の先生にも「アレルギー性鼻炎は今の医学では治せません。緩和はできますが、過度に期待されるとガッカリされるかもしれません。」という無慈悲な宣告を受けた。

こうして僕は鼻腔の解放と引き換えに、数粒の錠剤を朝晩服用しなければいけない体になってしまった。

そして今日も寝起きにクスリをキメる。

最近では花粉症薬が切れそうになると不安になる。早くディーラー（耳鼻科と薬局）のところへ行かなければ・・・と、気分はさながら麻薬中毒者だ。

いつの日か、僕が生きている間にアレルギーの特効薬ができて、クスリを飲まなくても鼻が通る生活をしたいと切に願います。