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感受性はハックできるのか?

砂糖、塩、炭酸飲料、油、これって何のことかわかりますか?マイルドドラッグと呼ばれる常習性の高い食べ物です。一時期コレが問題になってましたが、端的に言えば人間の感受性=味覚をハックする食べ物ってことです。

ハックとは元々IT用語で、高い技術力を駆使してシステムを操ることを言います。ライフハックとか言ったりするアレですね。

人間というシステムは長い歴史の中で飢餓ばかりを経験してきたので、飽食の時代に慣れていません。で、効率よくエネルギーを摂取できて美味しいと感じるモノに中毒になる程ハマる。このハマりやすさをちょっとだけ取り入れると売れやすい。

よく言われるのは口に入れる時に塩分濃度が0.8〜1%になる状態が美味しいと感じやすい=人体の体液の塩分濃度と同じ状態が理想、という説。

こうした科学的なアプローチと経験則の積み重ねが今の食文化のシーンであり、食欲優先で食べていると体型が悲しいことになる=中毒性が高くカロリーも高い砂糖・油を大量摂取しやすい状況を作っているとも言えます。


視覚のハックとInstagram

味覚のハックはだいぶ進んできた感ありますが、視覚のハックも最近一気に進んできたなと思っています。

元々この視覚のハックを職能とする人たちもいて、いわゆるグラフィックデザイナーやフォトグラファーといった職種では高い技術力を駆使してシステム(視覚伝達情報)を操ることを仕事にしてきました。

これが最近はスマホの普及とカメラの進化&Instagramなどのフィルターや自動補正付きSNSの普及で一気に民主化しているようにも感じます。

それで仕事が少なくなるとかそういう話じゃないので置いておいて、僕が言いたいのは人間が良いと思う写真って調理の塩分濃度みたいに視覚的な旨味を感じるポイントがあるんじゃないかと思うのです。

で、そのポイントが0.8〜1%とか定まってきたら、ルールを知っていてそこをつけるor自動化してそこに寄せる手法が確立できるんじゃないかと。最近のアルゴリズムの進化を見ていると、この予想は数年〜10年程度のレベルで実現する可能性ありそうです。

もちろん、良いとされる中央値が誰もにとって最高なわけないので、中央値を知った上でそこからあえてズラすような工夫がプロの個性とクオリティを生むと思いますけど。


空間もハックできるのか?

僕は最近、人間が食物の塩と油と糖に快感を得るように、空間にも旨味や居心地を左右する要素があるんじゃないかと考えています。

それは例えば触感や温度感や距離感。目線のやり場や手仕事の歪みのもつノイズなど。導入部分とのコントラストや、靴裏から伝わる歩き心地。細かいニュアンスですが、多くのパラメーターがありそうです。

これらは抽象的な部分も多く、まだ経験則に頼っているところがほとんどです。でも、素晴らしいと感じる空間や、居心地の良さを感じる空間にはある種の共通性があるようにも感じています。

これは万人受けはしないでしょうし、日本人という靴を脱いで風呂に入る習慣を持った民族である僕と、まったく違う文化で育った人とでは感じ方も全然違うでしょう。年齢や性別、育った環境や記憶の違いでも居心地は変わりそうです。もちろん、食事をする場所=飲食店の場合は誰と一緒に食べるのか?も大きな要素です。


でも、名画と呼ばれるものが世界中の多くの人が絶賛するように、ある種の美の特異点のようなものが存在していて、そこに至るアプローチを見つけられれば理論的には名作を再現できるハズなんです。

この空間の旨味成分みたいなものをコントロールできれば、設計者の経験則や体感値のみで構成されてきたふんわりとした良いデザインという概念を体系化し、誰もが70-80点の気持ちいい空間デザインができるようになると思うのです。


感受性がハックされる未来

上記は一種の理想論なのですが、同時にローコストな仕入れをごまかす為に使われたり、必要以上に価値を大きく見せるような誇張の為に使われる危険性も孕んでいます。

これはあらゆる感受性がハックされる際につきまとう問題であり、法的な制限が追いつかない以上はそれぞれのプライド=矜持のようなものに頼るほかないのかもしれません。

そして、もう一つ。それはセンスを売り物にする全ての職業が、センスをハックされる未来ではセンス勝負では食っていけなくなるという事を示しています。

ブラックボックスだった美的感覚が紐解かれて誰もが使えるようになるというのは人類全体の進歩ですが、進歩に淘汰はつきもです。その未来ではハックされたオールド・センスと、その先でさらなる未来を切り開くニュー・センスに別れて行くのでしょう。

ここら辺の話、もうちょい深く識者を交えて酒でも飲みつつ話したいなぁ〜・・・と思っています。


もうじき吉祥寺のお店が営業許可取れるので、そうしたら6席だけですがこうしたゆるいテーマを持ちつつお酒を飲んで話すような会を月1くらいでやろうかな。

未来思考的なものにご興味ある方はうっすらと記憶の端っこに入れておいてください。5月中には何かしら告知するようにします。

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