【前編】植物と鳥、水の動きーー小原奈実と小石川植物園を歩くーー

相田奈緒と睦月都が、好きな歌人といっしょに好きなことをして遊ぶ企画です。今回は小原奈実さんと小石川植物園を歩きながら、鳥を探したり、植物を見たり、短歌の話をしたりしました。(2017年11月上旬収録)

***

小原:お天気よくてよかった。
睦月:すごい晴れ。よかった。昨日の夜中に雨降りましたね。
小原:たぶん今日降るはずだったのが昨日降った感じですかね。

睦月:この道、すごい好きなんです。東京の道の中で一番好きかも。
相田:播磨坂(はりまざか)って書いてある。
小原:ここは和風セクションと洋風セクションに分かれてるんです。こっちは洋風セクションで左右対称になっているんですけど、
相田:たしかに。
小原:こっちは小川が流れはじめ、道がちょっと狭くなって、非対称な感じにくねくねってなったり、という和風セクション。
相田:ほんとだ。そしてここは桜並木。
小原:ここ、春はいいでしょうね。
相田:わたし、桜の葉が、……。あ、え、これは……。

睦月:土鳩。
小原:相田さんのちょっと苦手な!
睦月:エンカウントしてる(笑)。
相田:だってほら、ぜんぜん人を避けようともしない。なんてふてぶてしい。
小原:(笑)。
相田:ぜんぜん避けないじゃん。
小原:たぶん、ここらへんの鳩たち、いっつも餌もらってるから。
睦月:まるまるとしている。
相田:人間は餌をくれると思ってるの?わたしはあげないよ。あ、そこにはなんか別の鳥がいます。
小原・睦月:あれも鳩だと思います。
相田:色がぜんぜん違うよ。
小原:土鳩もいろいろ個性があって、真っ白なのもいたりしますし。
睦月:白い土鳩もいるんですか?
小原:いますね、ときどき。でも目立っちゃうから生存率低そうですけど。
睦月:白い鳩はたまに、上野とかに行くといますね。
小原:そうそうそう。
睦月:今日はですね、短歌の話もしつつ、主に鳥や植物の話を小原さんに、
小原:いえーい。
睦月:していただこうと……リアクションが早い(笑)。そんな小原さんを収めていこうというコンセプトです。
小原:早すぎた(笑)。
相田:鳥や花をいえーい。
小原・睦月:いえーい。

小原:ああ、いい天気ー。
二週連続で台風が来たじゃないですか。本当に鬱々としてしまって。天気悪いのに自分は弱いんだなってことに気付きました。
相田:あ、わたしも。天気さえよければなんとかなる。
小原:なんとかなる(笑)。
睦月:私は秋が苦手で、今、一番苦手な季節なんですけど。日照時間が短くなっていくのに耐えられないんですよね。
小原:あーなるほど。
睦月:今年はなんか、鬱々としている暇もなく、だいぶのりこえた感じがします。
小原:そうですよね!(笑)受賞の後ってかなり忙しいんですか。
睦月:原稿やら同人誌やらなにやらでパンクしてます。受賞後に依頼をいただいたものがいくつかと、それより前に依頼が来ていた原稿とかもあって。ありがたいことですけど、私が何人いたら足りるんだろう……みたいな……。

相田:あーなんかかわいいのがいる。これかわいいー。

(写真左から小原奈実、睦月都)

相田:親っぽいのとこどものと。
睦月:親子だ。カモの頭の、なんかこの、ぷりっとしてる感じが。
小原:ここが噂の「鴨の羽がひ」ですね。(羽のあわさっている部分を指しながら)
睦月:「鴨の羽がひ」……、霜が降るところですね!
>葦辺行く鴨の羽がひに霜降りて寒き夕へは大和し思ほゆ  志貴皇子
小原:そう!鳥クラスタが漏れなく検出される歌ですね。
睦月:今なんかめっちゃ歌人っぽい会話しちゃった。

睦月:小石川植物園、私は2月くらいに来て以来です。
相田:私ははじめてです。
小原:私はこの前キンモクセイの季節に来たら、シジュウカラとエナガとコゲラが混群をつくりはじめてまして。
相田:こんぐん?
睦月:こんぐん?
小原:「カラの混群」という概念がありまして!
相田:カラ?
小原:シジュウカラとか、コゲラとか、コガラとかいろんな小鳥たちが、種を問わずなんとなくみんなで集まって、群れをつくるんですよ。秋から冬にかけて。
相田:な、なんとなくみんなで集まる……?
睦月:あ、こんぐんって混ざる群?へー!
小原:それに一回出くわすと、いろんな種類の小鳥たちがいっぺんに見られて大変お得な制度なわけですよ!
睦月:ミックス丼みたいな。
小原:そうそうそう!大変お得だと思いません?
睦月:知らなかったその概念。
相田:これはnoteに載せなければ。
小原:ただ、歌を作りにきてそれに出会っちゃうと、それ追いかけて一日が終わるんで。
睦月:歌どころじゃなくなってしまう(笑)。良いのか悪いのか……。

睦月:では、攻め方を小原さんにまかせてもいいですか。
小原:えっと、上からぐるっとか下からぐるっとまわるかなんですけど。
睦月:じゃあこっち(下)から行きますか。
小原:シジュウカラどこにいるかなー。
睦月:友達!?友達か親戚みたいですよね言い方が(笑)。
相田:あいつもう来てるかなー、みたいな。
小原:シジュウカラは、ヒヨドリとかがあんまりわーわー騒いでる場所にはいないイメージなんですよね。
睦月:なるほど。

相田:お、小原さんが道なきところを入っていく!

睦月:歌もすごい入って行きますもんね。〈なだれゐるしぶきゐる萩を愛せむに軀ごとそのただなかへゆく〉(小原奈実「野の鳥」『穀物 第二号』より)とか……。
葉っぱがちょっと濡れてしっとりしてる。
小原:お散歩日和ですね。
相田:あ、とかげ!とかげ!あー、行っちゃった。
小原:とかげ、ときどきいるんですよ。
睦月:とかげかわいい。
小原:超はやい。
睦月:はやい。

睦月:夏にうっかり来るとやばいですよね。虫除けもつけずにうっかりはいって。
小原:ボコボコにされる。
睦月:そう。普段は人間社会にいて守られてるだけなんだな……って思う。
小原:私が勝手に思ってる仮説として、国有地とか公的な場所にいる蚊は強力っていうのがあって。
相田:国有地にいる蚊。
小原:蚊ってふつう「ブ~ン」って感じじゃないですか。でも三四郎池の蚊は「ブン!!」って、なんか戦闘機みたいな運動量を持って迫ってくる蚊がいるんですよ。
*三四郎池…育徳園心字池。東京大学本郷キャンパスの中にある。

小原:私の今勤めてるところも元々お役所系なので、非効率的な土地の使い方をしていて、病院の裏手によくわからない空き地がどーんってあるんですけど。そこから当直室に蚊が迷い込んでくるんですよ。その蚊がすごい立派で。
睦月:一回二回じゃ叩き潰せない感じですか……。
小原:ただでさえ当直で眠いのに、当直室で蚊と闘ってる力はないわけですよ。だから頭からすっぽりお布団をかぶって、怯えながら。最悪ですよね。
睦月:疲れてるのに。少しでも寝ないといけないのに……。

相田:この実かわいい。
睦月:この実気になってて、なんだろうと思ってました。ごろごろ落ちてて。
小原:このぽこっと開くところがいいですね。
睦月:かわいい。

睦月:……ふつうに楽しくてなんか完全にぼやーってしゃべってるけど、このままだと文字おこしが大変なことになりそう(笑)。
小原:も、もうちょっと、ちゃんとしっかり話さないと……。
睦月:あ、いえいえ、大丈夫です。こういうぼやっとした企画だし、相田さんは……虫追いかけてるし。歩きながらちょいちょいインタビューしていきますね。
相田:ホバリングしてる~。(虫を撮ろうとしている)

睦月:ここの鯉、なんかいいんですよね。
小原:私、鯉ちゃんとみたことなかった。寄ってきますね。
睦月:なんかね、地獄みたいですよね。ここはちょこちょこしかいないですけど、あっちの方へ行くと群れてて……。(相田さんがやや離れてるのを見て)あ、鯉だめな人だ(笑)。
相田:ぱくぱくされるとちょっといや……。
睦月:ぱくぱく、すごいしてくる。
小原:鯉に食われる地獄みたいな。
睦月:はい、そういう気分が味わえます。
小原:鯉の口って、ぱくって開くだけじゃなくてひゅって伸びますよね。
睦月:肺もないのになんでこんなに水面でぱくぱくするんだろ。
小原:なんか酸素濃度の関係じゃなかったでしたっけ。空気を吸い込んでるわけじゃないけど水面のほうが酸素濃度が高くて、みたいな……。
睦月:あっ、そういう。エサ探してるのかなって思ってました。なるほど~。

睦月:短歌の企画っぽいこと聞きますけど。
小原:(笑)。
睦月:最近、短歌の活動はどうでしょうか?
小原:えっと、ここ一年ではあんまりないかな。総合誌では、角川『短歌』の青春歌の。
※角川『短歌』平成29年(2017年)3月号
 20代座談会「挫折とロマン」阿波野巧也×寺井龍哉×小原奈実 大井学(特集「青春と短歌 ——歌うことが生きること」)
小原:それから一年以上前になるけど、俳人の堀下翔さんが同人誌『里』に呼んでくださいました。新作10首+旧作15首みたいな依頼だったんですけど。新作が7首しか出せなくて。大変申し訳ない。
睦月:そうだったんですね。堀下さん、私も最近たまたま知り合いになったんですが、歌人では小原さんのことをすごく好きだと言っていて。
小原:お若い方ですよね。
睦月:大学四年生だったかと。堀下さんとは今年の5月に知り合ったんですが、小原さんが好きって話で盛り上がって……。ちょっとおもしろかったのが、去年(2016年)の年末に小原さんが出演された「美肌室ソラ」のイベントがあったじゃないですか。堀下さんとこのあいだたまたまDMしてたとき、「もしかして睦月さん、あのイベントのときいませんでした?」「いましたが……えっ、いたんですか?」「いました……。そのときも5月に会ったときも気づかなかったんですけど、今記憶を照合したら、あのイベントにいた人、睦月さんだったんじゃんって気づきました……」っていう会話をしました(笑)。
※2016年12月4日「鳥の短歌譚とクリスマスカバー」
小原:どんなタイムラグ(笑)。
あれ不思議な企画で。ピンクの本(『桜前線開架宣言』)読んでくださった「美肌室ソラ」の店長さんが、左右社を通じて連絡くださって。鳥をテーマに探してるということで、「鳥なら!」と思って出演しました(笑)。
睦月:鳥がテーマでしたね。あそこね。ロゴも鳥で。
小原:定期的にイベントやってるみたいで。文芸に限らず。声のレッスンやピラティスとかも。

相田:いいにおい。
睦月:いいにおいする!なんで?
小原:カツラの葉っていいにおいするんですよ。あまーい感じの。
睦月:へー知らなかった。そうなんだ。いいこと知った。
小原:ちょっと揉むとほんのりします。
睦月:カツラは揉むといいにおいがする。
小原:そう。
睦月:いいにおいする。高級なお菓子のにおい。落雁とか。高いお砂糖の。

相田:あー、なんか、ここ、ここの視界、すっごい楽しい。(上をみて)
睦月:あ、ここ楽しい。かなり楽しい。
小原:無駄なく日光を受け止めるんだなって感じですね。
相田:まんべんなく覆ってる。
睦月:あーだから楽しい感じに。
小原:うんうん。

睦月:ちょっと座ります?お水が飲みたい。
小原:こういうタイミングもあろうかと思って、「Meltykiss」を。
睦月:わあ、ありがとうございます。
相田:では、わたしも(「Meltykiss くちどけラム&レーズン」を取り出す)。今年もこの季節がやってきたんですね。
睦月:CMじゃん。
相田:毎年これすごい楽しみにしてて。
小原:ラミーよりそっち派ですか?
相田:ああもうぜんぜんこっち派です。
睦月:食べたことないそれ。
相田:さあ食べて。
睦月:強制だ。
小原:天気のいいときにお外で食べるおやつのおいしさ。

(写真奥から相田奈緒、小原奈実)

睦月:小原さんはいつ短歌をはじめられたんですか?
小原:私は2008年くらいだから、もう10年になろうとしている。
睦月:2008年当時、小原さん何歳?
小原:高2です。
相田:高2!
睦月:何がきっかけだったんですか?文芸部とかじゃないんですもんね。化学部だったんですもんね。
小原:花火つくって遊んでました(笑)。きっかけはひとつに絞れないんですけど、中学高校のあいだに、学校で短歌への伏線が複数張られていたような感じで。中2で短歌を習ったときの授業プリントに、教科書に載ってるような有名歌と一緒に安藤美保の『水の粒子』から歌が引用されていて。その時点で普通の授業ではなかったですね。
睦月:玄人ですね。教科書に載ってる系じゃない。
相田:それは先生が選んだ?
小原:そうそう、その国語の先生は、たぶん自分で短歌を作ってはいなかったと思うけど『水の粒子』を推していて。中2の時点ではプリントを読むだけで一度通り過ぎちゃってたんですが、
高1高2のときに、担任の先生が新聞歌壇に投稿していて。別の先生がそれをみつけて、教室にこっそり貼る、というのがたまにあって(笑)。生徒の様子をスケッチしたような歌があると、クラスの子と「絶対これ誰々のことだよ」って言い合ったりして。なので短歌ってなんか楽しそうだと思ってはいました。
高校では部活に夢中になってたんですけど、高2の秋で引退しなければならなくて、ぽっかり穴があいたところになんとなく短歌が入ったという感じ。
睦月:そのタイミングなんですね。
小原:化学部を引退して、高2の秋頃からですね。そこから図書室の短歌の棚をみて。『現代短歌全集』が学校にあったのはけっこうラッキーかもしれない。
葛原妙子の第四歌集の『原牛』も入ってるし、第一歌集の『橙黄』も入ってるんです。『原牛』はすごいおもしろかったから、同じ人のだ、と思って『橙黄』を読んでみたらそれほどでもなくて。でもかえって、同じ人が作っているのに、第一歌集と第四歌集でこういう変貌があるのかと。。
睦月:若い頃の第一歌集が鮮烈で、あとは……っていうのがありがちなパターンですけど、葛原は出発も遅いし、晩年に至るまでどんどん美しくなっていく。
小原:葛原、逆ですよね。こんな短い詩型なのに、続けることによってぜんぜん違うぞと思って。これはおもしろいんじゃないか、という気がしたんです。
睦月:それは幸せな出会い方ですね。なかなかそういう出会い方しないと思います。
相田:じゃあ、だいぶ読んでからご自分で作りはじめたんですね。そのころ作った歌はどこかに出したり?
小原:あんまり……。あ、「NHK短歌」に出したことはある。加藤治郎さんに一席に採ってもらったりして。
睦月:へー。意外な。
小原:高2の修学旅行の事後課題として、短歌でも俳句でも詩でも散文でもなんでもいいから何か書きなさいというようなものがあって、ちょうど自分で歌を作り始めた時期だったので短歌を出したんです。それで当時の国語の先生に「短歌は普段から作るんですか?」ってバレてしまって、「どこか賞にでも出してみたら?」って言われて。賞でググると角川短歌賞が出てきたから何たるものかも知らないままとりあえず50首出したんです。出したけど、『短歌』って雑誌があるということもよくわかってなくて。そしたら家に「佳作に入りました」って手紙が来て、その時点で角川短歌って何だ?となり、発表号の雑誌をがんばって手に入れました。前回の賞の選考も読んでいないから、こういう風に選考されるんだーおもしろいなー、この人達(選考委員)はいったい誰だろう?って(笑)。

睦月:そんな感じだったんですか!角川短歌賞の次席になった「あのあたり」がその次の年、大学1年生のときでしたよね。
小原:作っていたのは、高3の1年間くらいかな。大学1年生の5月が締切でした。
睦月:受験もあったのに……。
小原:ちょうどいい現実逃避じゃないですか。高校生って、古文勉強するし。
睦月:あーたしかに……。大人になってから忘れた状態でつくるよりも身近なのかも。文語。
小原:自然に接続してった感じですね。そのへんはラッキーだった。
大学に入ってみると短歌のサークルがあったから、せっかくだからと入りました。それがほんたん(本郷短歌会……東京大学にあった学生短歌会。2017年末に解散)。
睦月:小原さんが短歌はじめたころのこと、意外と知らなかった。彗星のごとく……じゃないけど、なんかぜんぜん歌壇の事情とか知らずにぽんっと現れちゃった子だったんですね(笑)。
小原:次席の前の50首とかひどいもんでしたよ(笑)。ほんとにひどいです。短歌を読む力もないから、他の人が作った歌を見てもそんなに意味がわからないし、自分の歌を読まれた時に意味が通じるようにしようという意識すらなかった気がします。
睦月:それはそれで見てみたい(笑)。
相田:でも、その状態で佳作を……。
小原:勢いだけはあったのかな、今から考えると。最初の1〜2年のやたらたのしい時期みたいな。そういう感じでした。そういえばネットで東郷先生のサイト読んでましたね。
睦月:「橄欖追放」?
小原:「橄欖追放」は新しいサイトで、そのとき読んでいたのは「今週の短歌」。私が始めた年の2008年には更新が止まってたんですけど、結構膨大なバックナンバーを公開してくださってたので、それをちまちまと読みつつ。
相田:なんというか……編集部からお知らせがきてよかったですよね……(笑)。
睦月:たしかに(笑)。
相田:もし来なかったら、出したことも忘れて(笑)。
小原:さっきの、賞にでも出してみたらって勧めてくれた国語の先生に「なんか入賞しました」みたいなことを言いにいったんですよ。そしたら隣に担任の先生がいて、「私、この雑誌定期購読してるわ」って言われて、まじですか……みたいな。
相田:定期購読するくらいの人たちが周りにいらっしゃったんですね。
睦月:短歌を読む先生が、それも一人じゃなく……。
小原:なんかほんとに、埋もれた短歌の鉱脈っていうか……網が張り巡らされてて、そこに引っかかった感じですね。でも当時はまさか、こんなに続けてるとは思ってなかったです。

後編へつづく

(※後編の公開は4/2頃を予定しています)

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