ファッションは自己表現じゃなくて、「自分が進んでいくための指標」だと思う。 「Design Complicity」デザイナーの小暮史人さんへのインタビュー【第1話】


Design Complicityは2011年にスタートしたユニセックスのファッションブランドです。

デザイナーは小暮史人(こぐれふみと)さん。


専門学生のころから「ANREALAGE」のチーフパタンナーを4年ほどつとめ、独立して自身のファッションブランドをはじめられました。

「プロダクトデザインとしての、ファッションの提案」をコンセプトに、生活の中にあるようなモチーフをつかったり、さりげなくギミックがあしらわれたデザインがユニークなブランドです。

太陽のしたでさすと洋服に木漏れ日が映りこむようにデザインされた「木漏れ日傘」や襟が洋服に溶けこむように一体になったデザインのシャツなどが定番として扱われています。


今回は、小暮さんが学生のころのインターンから、自身のブランドをはじめるために選んできたこと、

そしてこれから進んでいきたい道についてもうかがいました。



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— 小暮さんは専門学校に通われていたときからファッションブランドにインターンされていたそうですね。


小暮   そうです。専門学校の2年の秋ごろから「ANREALAGE」というブランドでインターンをしていたのですが、3年の秋に先輩のパタンナーが辞められてしまったので、学校に通いながらチーフパタンナーとして働いていました。

卒業後もしばらく働いていたので、インターンを含めると4年くらいになります。




— インターン先にANREALAGEを選んだのはなにか理由があったんですか?


小暮   ANREALAGEのデザイナーの森永邦彦さんも、学生のころにブランドをはじめていて、 それから東京コレクションに参加されましたから。

ファッションブランドを運営するうえでおカネがどうまわっていくのか、どういうサイクルで服ができていくのかとか、そういうことを勉強できそうだと思ったからです。

大きな会社で働くのも勉強になることはたくさんあると思うのですが、やっぱり全体を見ることができないというのがありました。



— Design Complicityのお洋服には、ANREALAGEのような雰囲気はあまり感じられないと思うのですが、小暮さんはANREALAGEのものづくりから影響を受けているとおもいますか?


小暮   森永さんの「服をつくること」にむかう姿勢にはすごく影響を受けているのですが、デザインのことをいえば、そこまで影響は受けてないようにおもいます。

むしろ、ANRELAGEと同じことがやりたいのであれば、そこで続けていくほうがもっと規模の大きいこともできるし、やっぱりひとりではできないこともありますから。


ANRELAGEを辞めて、Design Complicityの最初のシーズンのほうは今よりもっとラフだったのですが、今おもうと、無意識に「ANRELAGEっぽく」なってしまわないようにしていたのかもしれません。

だから、最初はコンセプチャルなものとはできるだけ遠いところにいきたいなと思っていましたが、今は気持ちも少しずつ変わってきて「関係ないな」と思えるようになりました。



— Design Complicityのコンセプト「プロダクトデザインとしての、ファッションの提案」というのは、どういった経緯で決まったんですか?


小暮   「衣食住」のなかで、「衣」だけが生活から切り離されてしまっているような気がしていて、そういう意味でも、いわゆる「モードなファッション」というのが僕はあまり好きじゃないんです。

「プロダクト」という言葉には、「工業製品」のような意味だけではなくて、「生活の中にある日用品のようなもの」というイメージがあって、
そんなふうに、あくまで「身のまわりのもののひとつ」として服を捉えたい、という意味をこめています。

プロダクトのものづくりは「型」となるものをまず作って、それを改良していくことが多いのですが、服もそういうやり方でつくっていくことが理想です。

だから「型」になれるような商品をできるだけつくって、それを毎シーズン更新していきたいと考えています。



— 「モードなファッション」といえば、ファッションショーをおこなう意味についても、今はいろんな意見があります。小暮さんはショーについてはどう思いますか?


小暮   ファッションショーについては肯定でも否定でもなく、そのブランドの表現の方法として、ショーが一番良いのであれば、良いんじゃないかとおもいます。

Design Complicityではまだショーのかたちでコレクションの発表をしたことはないのですが、これからそういう服をつくるようになるかもしれません。

でも、今はインスタレーションで発表をするほうが好きですし、ANREALAGEのときはショーとインスタレーションのどちらもやりましたが、それもインスタレーションの時の方が個人的には好きでしたね。



ファッションは自己表現じゃなくて、「自分が進んでいくための指標」だと思う。 「Design Complicity」デザイナーの小暮史人さんへのインタビュー【第2話】



*この記事は2014年1月におこなったインタビューを一部編集しなおして再掲しています。

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