「主役」よりもワードワーブの中で輝けるような「名脇役」になりたい。 「aacero」デザイナーの八幡夏樹さん、後藤彩さんにお話をうかがいました。【第3話】



− aaceroはブランドとして、最終的にどういうところを目指してるんですか?


後藤   目標、よく聞かれるのですが、決めてしまうとそれを達成したときにどうする?となってしまう気がして。

だからほんとに身近な、今シーズンより来シーズンはもっとお客さまに買ってもらえる服をつくるとか、今日の自分より明日の自分じゃないですけど、そういう感じがいまのファッション業界ではやりやすい気がしています。

大きな目標をたてて息ぎれしちゃうより、ひとつひとつできることをクリアしていくことで10年20年と続けていけるようなブランドになることが目標ですね。

「aaceroはちゃんと続いていくブランドですよ」っていうのを、地味かもしれないけどやっていきたいです。



− ファッション以外で、たとえばデザインとかアートとか、別の活動をしようとか思ったことはありますか?


後藤   食べるのが好きなので、飲食はやってみたいなとおもったりはします。あとはウェディングプランナーとか。

母体はaaceroなのかもしれないですけど、ファッションである程度表現することができてきたら、また別のフィールドというのも魅力的です。




− aaceroが提案する生活のかたちとか、ライフスタイルはありますか?

八幡   そこはむずかしいというか、あんまり口に出したくないところかもしれないです。でも、aaceroの服はふつうの服とはちがうけど、奇抜すぎない。

やっぱり、ひとにほめられたら嬉しいとか、ひととちょっと違ってたいって思うのはみんなそうじゃないですか。

同じでありたいけど、違ってたい。ブランドとしての提案はそういうことかなとおもいます。

「ちょっと何かある日に着る服」がaaceroなのかな。


後藤   さいきん思うのは、ブランドを立ち上げたときって「主役になるような洋服をつくりたい」と考えてたんですけど、今は「名脇役」というか、気づいたらaaceroの服を着てるような、そのひとのワードローブにうまく溶けこみながら、そのなかで輝いてる。着たいと思える服になってくれればいいなとおもいます。

奇抜すぎなくて、なんにでもあうけど主張があって、そういうのを目指してできたら長く着てももらえるのかなと思いますし。



− では、どんなひとに着てもらいたい、というのはありますか?

後藤   具体的にはないですが、年齢層がせまくなりすぎないようには考えます。「可愛いな」とか「きれいだな」とおもう共通点があっても、袖がちゃんとついてたり、胸ぐりがひらきすぎないようにすれば40代のひとでも着られるのかな、とか考えます

私も30歳になって、お尻がちょうど隠れる丈にしようとか、膝上15cmのスカートは履けないかな…とか考えはじめたこともあるので。

でも、「これはミニだから可愛いんだ!」と思ったらそこはエゴというか、着れるひとが着てくれればいいと思うんですけどね。



− 毎シーズン、モデルさんの表情が気になります。どういった基準で選ばれてますか?


後藤   そのシーズンに表現したい空気感だったりもありますが、私が絶対的にモデルの顔に好みがあるので(笑)モデル選びは私に任せてもらってます。

中性的な顔の子が好きで、男っぽいというか、綺麗な顔というよりはファニーフェイスな子が好きなので、うまくモデルではずして、すこしの違和感を表現できればなと考えてます。



− 毎回外国人のかたを起用されてますが、それは何か意図してるんですか?


八幡   リアルクローズの流れというか、そういうのに沿っていくと日本人のモデルのほうが伝わりやすいのかなと思うんですけど、やっぱり海外を意識してる気持ちもあります。



− 海外のファッションにも影響は受けられてますか?


八幡   はい、やっぱり夢があるというか、華やかさだったり、着る・着ないを超えた美しさというか。そういう部分には惹かれます。


後藤   デザインで影響をうけるのは、日々出会うひとだったり、見た景色だったり、今の状況だと思いますが、作ってるものとして好きだったのはアレキサンダー・マックイーンとかジバンシーとか、ああいう素材の使いかたとかフォルムはすごくすてきだと思います。



− 欧米のモードなファッションもお好きなんですね。

後藤   日本にはオートクチュールの文化がないじゃないですか。日本人として生まれたからこうですけど、もしヨーロッパに生まれて、洋服にたずさわることがあれば、そういうところに興味があったのかもしれません。

なので、mariageは私のなかではオートクチュールに近いです。



− 最後に、2015年の目標をおねがいします。


後藤   もっとたくさんの方にaaceroを知ってもらいたいと思います。
mariageも、オーダーしてくださるひとが徐々に増えてきたので、レンタルラインもはじめたいと思ってます。

八幡   後藤もいってるように、aaceroをたくさんのかたに知ってもらえるように、間口を広げていきたいです。

6月にはあたらしく「aacero Fum.(アーチェロ ファム)」もはじめます。

Fam.とはFun 、 Family 、 Farm などからくる造語で、楽しいことをみんなで育てていけたらなという思いを込めています。

初回の展開は「大人の子供服」をテーマに、Tシャツ中心のコレクションを製作してます。

生まれたばかりで絶対的なコンセプトはないのですが、aacero、aacero mariageではできないようなことを実験的にやっていけたらとおもいます。

今年はいろんなaaceroをみなさまに見てもらいたいですね。



「主役」よりもワードワーブの中で輝けるような「名脇役」になりたい。 「aacero」デザイナーの八幡夏樹さん、後藤彩さんにお話をうかがいました。【第1話】

「主役」よりもワードワーブの中で輝けるような「名脇役」になりたい。 「aacero」デザイナーの八幡夏樹さん、後藤彩さんにお話をうかがいました。【第2話】



*この記事は2014年1月におこなったインタビューを一部編集しなおして再掲しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?