見出し画像

SHOKU SHOKU FUKUSHIMAはパクチーハウスに学ぼうと思った。『「ありえない」をブームにするつながりの仕事術』を読んで

「狂っている」と言われたパクチー料理専門店

『パクチーハウス東京』というお店を知っているだろうか。

2007年11月に、世田谷区経堂にオープンした、日本初のパクチー料理専門店で、惜しまれつつも2018年3月10日に閉店。オーナーの佐谷恭(さたにきょう)さんは、現在は無店舗展開という新しいチャレンジをされている。

佐谷さんは、東京で最初のコワーキングスペース『PAX Coworking』を飲食店と並行して運営したり、シャルソン(=ソーシャルマラソン)という、地域の魅力を体験するランニングイベントを発案し、全国に普及させた人だ。シャルソンはわが町、郡山市でも開催されている。

残念ながら、実際に足を運ぶ前に東京店は閉店してしまったのだが、その佐谷さんが出した新刊『「ありえない」をブームにするつながりの仕事術: 世界初パクチー料理専門店を連日満員にできた理由』が、kindleセール(kindleだと、今なら1,000円引きで890円)されていたので、興味があって読んだ。

今、読むべき教科書だった。

佐谷さんの経営や店舗運営に対する考え方が、今の自分の考え方とシンクロする部分が非常に多く、読みながら「そうそう」と何度も唸った。

たぶん、10年前だったらこの本を読んでも刺さらなかった気がする。パクチーハウスの存在はほぼオープンの頃から知っていて、佐谷さんが発行しているメルマガ「パクチー起業論」(当時は無料)もかなり昔から登録をしていたのだけど、ほとんど読まなかった。途中からは自動的にアーカイブする設定に変えたので、たぶん10回も開かなかった。忙しかったのもあるけれど、当時の仕事環境では、取り入れる要素があまりなく、経営に対する考え方も、当時の自分では共感度が薄かったと思う。当時は今よりも「事業を大きくすること」を重要視していたので、佐谷さんの考え方がしっくり来なかったかもしれない。その点は後述するが、経営の考え方も今ではめっちゃ共感できる。

そして、紆余曲折あって、一昨年に勢いで会社を創り、去年からはまったく未経験の飲食業、しかも世間にないコンセプトのお店を始めた自分には、この本が本当にありがたかった。ありがとう佐谷さん。「パクチーハウス」のお話には、真似したいと思う要素、応用して取り入れられる要素が満載。

<パクチーハウスとSHOKU SHOKU FUKUSHIMAの共通点>
1.核となる食材が決まっている。(パクチーor福島の地酒)
2.「交流する飲食店」であり、相席推奨。
3.飲食業をまったく知らない素人がスタートした。

特に2.の部分については、飲食店で、イベントもない日に、知らないお客様同士に仲良くなってもらい、楽しんでもらうという実践について書いた本はあまりないので、参考になり、勇気がもらえた。どうすれば良いか方法の部分は、環境に合わせて自分で考えるにしても、その世界観でうまくいってる事例があるということを示してくれたのがありがたい。

情報発信を続けるモチベーションが高まった。

「パクチー料理専門店」という、他にないウリが注目され、パクチーハウス東京には、10年で1,000件を越える取材が入ったらしい。ただ、パクチー料理だけに興味を持ったり、有名芸能人のレポーターが来た翌日は、「●●さんがテレビで食べたアレをください」というお客さんが殺到するも、店主の話やお店のコンセプトには興味を示さないお客様に困ったという話があった。

パクチーハウスさんほどではないが、SHOKU SHOKU FUKUSHIMAも、オープン以来、少しずつメディアなどで取り上げていただいているが、主にフォーカスされているのは「美味しい福島のお酒が飲み放題で地元の美味しいおつまみと合わせられる」という部分。

そこはもちろんこだわっているところで、お酒やおつまみの魅力が伝わるのは大歓迎なのだけど、「美味い酒が2,000円で飲み放題のお店」ということだけで認知が広がりすぎるのは危険だと思っている。

スナック形式にしたのは、お客様同士の出逢い・交流、美味しいお酒を呑みながらの会話を楽しんで欲しいから。地域にいる魅力的な人を知ってほしいから。ただ消費するだけでなく、一緒に空間を創ること自体を楽しんで欲しいから。

加えて、自分たちもその方が楽しい。「自分たちが楽しいと思う仕掛けを打ち続けることで、結果的にお客様満足が高まる」ということを意識している。しかし、そういった部分は、なかなかメディア側は取り上げにくいところだと感じる。

開店からこの1年、イベントをたくさん行うことで、交流する飲食店としてのコンセプトは具現化していったが、イベントに参加しない方にはなかなか伝えられないし、どうしたもんかなと思っていた。

佐谷さんの本を読んで、そこについてはもっと自分自身が情報発信をしていかなければいけないと思った。佐谷さんは平均すると毎日4時間は、情報発信に使っていたらしい。

会社を作って一つ心がけていたことがある。それは、とにかく時間をかけて情報発信をすること。僕がやったのは一般的な言葉で言うと飲食業(パクチーハウス東京)、オフィス業(PAX Coworking)、イベント企画業(シャルソン)だが、それぞれの背景には旅と旅を通じたコミュニケーションがあり、そこに至る背景とコンセプトに独自性と面白さがある。だからそれを伝える必要があった。世の中は「わかりやすく伝える」ことがよしとされ、それを否定するわけではないが、即席の答えだけではその深みは伝えられない。全部理解されないとしても一つでも多くの断片を知ってほしいと思って文章を書き続けてきた。僕は10年間ずっと、1日平均4時間ほど情報発信のために時間を費やした。

店主として大切にしていること。お店で起こった面白いこと。店主である自分や会社のメンバーについて。まだお店に来ていない人が「行ってみよう」と思えるようなストーリー。お店での会話のきっかけとなるような小話。そんなことを書いていこう。

そしてオープンソース化を目指す。

500年近く続く会社、つまり自分が死んでもいつまでも続く組織を作るべきだと設立当初は思っていた。(中略)自分の作った組織とか、自分の手柄を残すというよりは、面白く有益なアイデアを実行し、それをオープンソース化して誰でも使えるようにすることがより重要だと今では信じている。
 パクチーハウス東京とPAC Coworkingという収益性の高い「店舗」を消滅させようと考えたのは、「右肩上がり」「成長」という20世紀までの幻想を断ち切る時代に自分たちがいると思うからだ。

これも非常に共感した一節。これからは「右肩上がり」「成長」志向とは別のベクトルの、以下のような経営スタイルが台頭してくると思っている。

 【既存リソースを生かして小さく実験する】
→【成功する】
→【オープンソース化して誰でも使えるようにする】
→【良い取り組みが拡がる】
→【次の実験をする】

この考え方は、現時点でf lifeの目指す方向性でもある。

ときどき周りにも伝えているが、SHOKU SHOKU FUKUSHIMAは、地域の魅力と出逢えるローカルスナックとしていずれノウハウをオープン化して、やりたい人がいたら、どんどん伝えていきたい。目指す本質は「地域にあるものの良さを知ることで、人々が豊かになり、それを知った人たちが地域を大切にすること」だから、それができる場所は多ければ多いほど良い。今は、ノウハウを溜めながら、より地域に愛される店舗としてがんばって育てている途中で、まだ、成功しているとはとても言えない。

それでも、「自分もやりたい」という人がいたら、いつでも連絡は欲しい。共感してくれる人と一緒にこの実験を成功させたい。


ーーーーーーー以下、お知らせーーーーーーー

◎SHOKU SHOKU FUKUSHIMA営業中です。

福島の地酒40種類以上が呑み放題のローカルスナック。
90分2,000円と破格の価格設定です。
初めての方もお一人様もどうぞお気軽に。
店主(小笠原隼人)と料理人(小笠原香織)は、fukunomoプロジェクトにて、県内40以上の酒蔵を取材して周り、酒造りへのこだわりと、どんな料理と合わせたら良いかの研究を重ねてきていますので、見聞きしてきたことを(聞かれなくても)お話します。
加えて、店主の自慢は面白い人との繋がりです。「福島に●●の分野で面白い人いない?」と言われたときに、秒で答えられるように常にアンテナ貼っておりますので、お気軽にご相談ください。

お金がない学生さんなどは、お皿洗いや掃除などを手伝っていただいて値引きをするサービスもありますので、ご興味ある方はご相談を。

営業日はこちらからご確認ください。基本的には夫婦で立ってます。

https://www.shokushoku.net/#3

◎クラウドファンディング支援事業やってます。

『復興庁クラウドファンディング支援事業』の地域コーディネーターをしています。
昨年度は15件のプロジェクト、48,598,511円の資金調達をサポートしました。
クラウドファンディングにちょっとでも興味のある方、メリットの多い制度なので、ぜひお気軽に相談ください。

・詳細はこちら
今年度も復興庁クラウドファンディング支援事業がスタートしました!
https://www.f-life.org/blog/2019cf001

◎美酒と美肴のマリアージュ『fukunomo』

全国新酒鑑評会における金賞受賞数が7年連続日本一の、福島の美酒と、その美酒にあった美肴(うまいおつまみ)のセットを、特別冊子をセットにしてお送りする、定期購入サービスです。

現在、2019年秋頃のリニューアルに向けて新規申し込みは停止中ですが、過去の記録は公式サイトからご覧いただけます。

http://www.f-sake.com/

その他、相談やお問い合わせなどある方は、ogasawara.hayato@f-life.orgまでどうぞ。(@は小文字にしてください)

サポートいただけたら、最もお世話になっている奥さんに美味しいものを食べてもらおうと思います😃