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ほのお、みず、くさ、みたいな相性がゲームでよく使われるのはなぜ?

ほのおタイプにはみずタイプの攻撃がばつぐんで、
みずタイプにはくさタイプの攻撃がばつぐんで、
くさタイプにはほのおタイプの攻撃がばつぐんで。

RPG、FPS、各種対戦ゲームなど、戦いを遊ぶタイプのゲームではこうした「相性」が用意されていることが多いです。
ポケモンのタイプ相性、ファイアーエムブレムの三すくみ、モンスターハンターの属性や状態異常属性…etc。
こうした相性は何のために用意されていると思いますか?
相性があることでどのような効果があるのでしょう?


余談。
ちょっと遠回りなものとして、FPSの地形と武器性能の相性…例えば、遮蔽物が少なく見晴らしのいい広い地形でのスナイパー vs ショットガンならスナイパーが有利ですし、逆に遮蔽物が多く狭い屋内でのスナイパー vs ショットガンならショットガンが有利…のようなものもあります。
今回はそのような相性のことではなく、あくまで赤青緑的な相性の仕組みについての記事となります。


最近ポケモン対戦(のダブルバトル)をよく遊んでいるのですが、
何が楽しくて遊んでいるんだろう?ということを改めて考えてみた中で、
こうしたタイプ相性がゲーム体験にもたらす意味についても考えたのでせっかくなので書きたいと思います。

まず結論から書きますと、これはあくまで僕の認識なのですが、

「ピンチとチャンスを安く早くわかりやすく演出するため」

ということではないかなと理解しています。
(ゲーム業界の常識とか共通認識ではなく、あくまで個人的な解釈です)

戦いを遊ぶゲームというものがどうやってプレイヤーの心を動かすのかというと、
ピンチによる焦燥感、緊迫感、およびチャンスによる優越感、高揚感を促したのちに、勝敗の提示によってそれらの切迫感からの解放感とともに満足感や悔しさを想起するという形になるかと思います。

ほのおタイプのポケモンを出したら、相手がみずタイプのポケモンを出してきた!
これはわかりやすくピンチです。
蛇ににらまれた蛙で、猫に見つかったネズミで、鷹の前の雉です。
ピンチというのは、「やばい」「どうしよう」という心の動きを作ります。
焦りが生まれ、冷や汗が浮かびます。
その心の動きが、プレイヤーに解決策を生むための試行錯誤を要求します。
みずタイプに強いポケモンに交換しようか?
交換するのを読まれて交換先に大ダメージを与えられないか?
だったらこのまま不利を受け入れて攻撃しちゃったほうがいいか?
そして試行錯誤を経たプレイヤーは、判断を下します。
やはりくさタイプのポケモンと交換しよう!
その結果、相手はみず技を使ってきて、繰り出したくさタイプのポケモンは先ほどの不利の責任をとる形で微々たるダメージを負う代わりに、今度は「チャンス」になりました。
今度はこちらが蛇で相手が蛙です。どうやって食ってやろうか!
判断一つで、指先一つでピンチを切り抜けてチャンスにしてやりました。
快感です!優越感です!

上記はリアルタイムの対戦ゲームでの心の動きですが、
スマホRPGで一般的なバトルゲームでも、「次のクエストに相性のいいパーティ組めないな…どうしよう」というごくごく軽いピンチや、「次のクエストは相性いいパーティあるから楽勝だな」というちょっとしたチャンスを作り出す効果があります。

ピンチとチャンスの波は、こうして心を波立たせます。
「やばい!」「やった!」「うわどうしよう!」「これでいけるんじゃない!?」
「うわだめか!」「じゃあこれなら!」「よっしゃ!!!」
戦いを遊びにするゲームというのは、プレイヤーにこういった感情の変化をもたらすために作られています。
よくできた対戦ゲームはその波を作ることが上手い=感情の変化をもたらすのが上手いということであり、
それによりプレイヤーの真剣度が増していきます。
真剣に遊べば遊ぶほどそれは大きな感情の波になり、
人によっては失敗が悔しくて泣き叫んでしまったり、
成功が嬉しくて雄叫びを上げてしまったりします。


余談。
スプラトゥーンなどを遊んでいる人々が文句やストレスを全開にしながらも遊び続けるのは、こうして心の動きを楽しんでいるということなのですね。
そういう感動の形を楽しんでいるのです。
笑ってニコニコ楽しむだけが、登場人物に感情移入して泣いちゃうことだけが、感動ではないということですね。


ほかにもピンチとチャンスを演出するための仕組みはたくさんあります。
モンスターハンターならモンスターが怒ってより激しい猛攻を仕掛けてきたりしますし、逆に怯んだり疲れたりして隙だらけになったりします。
格闘ゲームでも、ストリートファイターならドライブゲージ、ギルティギアならテンションゲージなどをどのようにコントロールするかでピンチとチャンスが生まれるようになっています。
スマホゲームならグランブルーファンタジーの敵のオーバードライブとブレイクの仕様や、プレイヤーキャラのスキルクールダウンや奥義ゲージの仕様もピンチとチャンスを作り出す仕組みです。
最初に例として挙げたポケモン対戦でも、命中率や技の追加効果などの運によるピンチとチャンスがありますし、
カードゲームでも手札運によるピンチとチャンスがあります。
ゲームはプレイヤーの心を動かすためにそうした沢山の工夫をゲームに入れ込むのですが、その中でも

実装が簡単でプレイヤーの理解も簡単な仕組み

が属性やタイプによる「相性」なのです。
というのも、ジャンケンならほとんどの人が知っていますからね。
あれこれ説明するまでもなくプレイヤーに仕組みを理解してもらえるもののうち、これほどお手軽で効果の高いものはないのです。

ゲーム制作者が1番頭を悩ませると言っても過言ではないと思っているのが、
「仕組みをプレイヤーに理解してもらえるにはどうすればいいか」
「プレイヤーが理解しやすい状態にするにはどういう仕様にすればいいか」
という部分です。
チュートリアルをどうするか?
たくさん説明しても見てもらえないし、簡潔すぎても理解してもらえないし…というジレンマに悩んだゲーム制作者は多いと思います。
その点、ジャンケンという文化が浸透している日本においては、相性、特に三すくみという概念は説明を省略することすら可能な仕組みなわけです。
制作者としては使わないのが勿体無いくらいですね。

ということでまとめると、
・相性とはピンチをチャンスによる心の動きを演出するためにある
・ジャンケンのおかげで相性という仕組みは日本との相性が良い

という理由で、戦いを楽しむゲームではかなり一般的に採用されている仕組みとなっているわけです。

以上、ほのお、みず、くさ、みたいな相性がゲームでよく使われるのはなぜ?というテーマで書きました。
なお、こちらはあくまで僕の解釈であって、ゲーム業界の一般的な解釈ではないことを再度強調しておきます。
ほかにも何かある方がいればコメントいただけると嬉しいです。

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