データ分析で最も重要なのは「物事が動く」こと

新商品の仕入れ数を増やすための根拠とする調査分析プロジェクトを支援した時のこと、当初はSNSの投稿数などから売上を説明するモデルを作る提案を行ったが、高度なものはいらないという要望で、結果、シンプルなレポートになった。例えば、誰もが知っている過去の成功事例の時のある指標を100%とすると、今回売りたい新商品の指標が200%近かった、だから、今回の商品も(2倍位)売れるだろう。といったものだ。アウトプットは時系列の折れ線グラフなど。それでも商談相手には刺さり商談が動いたそうだ。モデルで推論する因果関係といった要素は全くない。分析者としては単純過ぎて物足りない気もしたが、とにかく物事が動いた。それが一番だと考えた。

データ分析によって、物事が動くこともあれば、動かないこともある。マーケティングの現場では後者のほうが多いと思っている。物事を動かすために重要なことは分析の「分かりやすさ」と「腹落ち感」である。本noteの要点は、マーケティングの現場では高度なモデルより、とにかく分かりやすさだ、分析者たるデータサイエンティストが工夫すべきだ。という論考ではない。むしろ、それとは反対で、受け手となるマーケター側の基礎リテラシーを上げないと有益な分析法が使われず、マーケティングの生産性がいつまでも上がらないという話である。

マーケターは、「基本統計量」を把握したり「相関係数」を出したり「回帰分析」を行うなど、Excelでできるレベルの分析すら経験したことが無い方も多い。

※後に紹介する拙書「Excelでできるデータ・ドリブンマーケティング」の全文公開では「エクセル統計」を販売する社会情報サービス社の自主調査の参照引用や筆者の経験を用いてビジネスマン(≒マーケター含む)全般の統計知識が浸透していないことに言及している。

Excelのアドインに分析ツールという機能があることすら知らない方も多いのではないか?そうした方に「分かりやすさ」と「腹落ち感」を担保するためにデータサイエンティストがかみ砕いて説明する時間は、彼らの時間やリソースを奪う。有益な示唆を得られる可能性が高い分析法があっても、プロジェクトに関与するマーケターの基礎リテラシーが低いがゆえに、腹落ち感が得られないと判断したデータサイエンティストがその手法を採択しないといったケースも多いはずだ。

滋賀大学データサイエンス学部教授の河本氏のインタビューに、マーケティングの世界で起きている事象として、文系の方も多いので、データ分析で数学や統計学、プログラミングなどの話が出てくると「勘弁してくれ」と拒絶反応を起こすといった事例が見受けられ、企業の経営層やミドル層と社内のデータサイエンティストたちとの分断が起きていることについて言及されている。こうした分断こそが、マーケティングの現場で分析によって物事が動かない最大の原因だと考える。

分断を解消するために、データサイエンティストがマーケターに歩み寄ることは、マーケターがデータサイエンティストの時間やリソースを奪うことになり生産性を著しく下げることになる。これからは、マーケターが歩みよることによって生産性を上げるべきだ。データサイエンティストを特別な存在にしないため、マーケターがデータサイエンスについて理解を深めるべきだ。特に企業の経営層やミドル層など、マーケティング意思決定者が、データから物事を「予測」したり「説明」したり「分類」する、そうしたデータ分析を理解し、リテラシーを底上げすべきだ。そうしていかないと、おそらく日本のマーケティングの生産性は上がらない。データドリブン・マーケティングはバズワードとなり陳腐化してしまう。そうした状況を変えたいと考え、執筆した書籍が「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」である。

Excelでクラスター分析やマーケティング投資配分最適化の分析など、マーケターに役立つデータ分析を演習で学べる書籍だ。50万部を超える大ヒット書籍シリーズ「統計学が最強の学問である」著者の西内啓 氏から推薦を頂くことができた。


出版社に許可を頂き、1章までをnoteで全文公開している。

データサイエンティストの師匠曰く、この書籍は「データサイエンスの(ラーメン)二郎」だそうだ。

書籍の中盤からは回帰分析を時系列データに適用し、更にTVCMやWEB広告が売上に影響するタイムラグや残存効果を加味して分析するマーケティングミックスモデリングをテーマにした演習と解説が続き、最後の8章で、ようやく気が抜けると思いきや、因果推論のデータ分析の知識やモデル選択の視点など本格的な内容に発展する、そこからが特に濃い、だから二郎なのだと。

※本noteのアイキャッチ画像は上記「ラーメン二郎」Wikipediaより参照

かくいう筆者は数学もプログラミングも苦手意識があるマーケターである。難解な数式やプログラムコードの書いた専門書の勉強は苦痛だった。だから、この書籍はビジネスマンに馴染み深いExcelでできる方法にこだわった。2年かけて、マクロを使ってオリジナルの分析ツールを作成し付録として提供することで、TVCMとWEB広告の最適な予算配分を試算するなどを可能にするマーケティングミックスモデリングという高度な分析も習得できる様にした。Excelで手を動かしながら、(数式を読み解くのではなく)感覚的に学べる様にフルカラーで丁寧に演習手順を解説した。この書籍を手に取ると、その大きさに驚かれるだろう。

この書籍の演習を一通り行えばデータから物事を「予測」したり「説明」したり「分類」するとはどういうことか?感覚的に理解でき、データサイエンティストとのプロジェクトの生産性を格段に高められるはずなので、ぜひチャレンジ頂きたい。入り口は簡単な演習から入るが最後はこってりとした二郎系の解説に及ぶもしれないが笑

【参考 note】

データドリブンに対する昨今の風潮、マーケター の間違えた期待値に対して言及したデータジャーナリスト松本健太郎氏の noteは、多くの共感(スキ)を得ている。因果推論によるマーケティングの立証を丁寧に扱った書籍として、拙書もご紹介頂いている。

【告知】

大きなマーケティング戦略を描くための手法について言及する次回作(ビジネス書)を執筆中。マーケティングサイエンスや雑感など、拙書の宣伝を兼ねたコンテンツを発信中。

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以上、

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日本のマーケティングに正しい効果検証のデザインを。2019年末を目標にマーケティング戦略論のビジネス書を出す計画で執筆中です。noteでは拙書Excelでできるデータドリブン・マーケティングの宣伝を兼ね、マーケティングサイエンスや雑感のコンテンツを発信していきます。

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マーケティングサイエンス&雑感

拙書「Excelでできるデータドリブン・マーケティング」(デジタルとマス、マーケティング施策効果を定量化し、予算配分の試算まで行うマーケティングミックスモデリングをExcelで演習)の発売を機に、マーケティングサイエンスにまつわるトピックや雑感をnoteに。
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