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上から目先生の解説マンガ【意外と知らないボルダリングの基本ルール】

プロクライマー尾川とも子のSNSにときどき登場する、
ちょっと上から目線なのに、おふざけやコスプレ大好きな上から目先生が、
楽しくわかりやすくスポーツクライミングを解説!!

ワールドカップinインスブルックボルダリング男子結果

2021年6月26日、27日
ボルダリングのワールドカップ決勝がインスブルックで行われました。

男子ボルダリング関しては、
1位緒方良行選手
2位楢﨑智亜選手
3位藤井快
と初の日本人表彰台独占!

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意外とわかっていない!?『トライ数』の考え方とみていきましょう。

勘違いしやすいトライ数とは?

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この場面です。↑

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そう、ZONE(ゾーン)と示されたホールドを取るまでは何度トライしても『トライ数』は得点に関係ないのです。

この場合もし、ZONE(ゾーン)を13回目で取っていたら、ゾーンまでのトライ数13という得点になるわけです。

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『スタート』はこの絵の場合、ホールド4つに対してひとつずつテープがついていますが、例えば
『大きなひとつのホールドに3本、小さいホールドに1本』
というパターンもあります。
この場合、3本の方に、手手足、もしくは、手足足というように、手足の4つのうち指定された本数の手足いずれかがホールドを使ってればスタートOKなのです。

ボルダリングジムでインスタラクターさんに
「スタートはしっかり両手(もしくは右手左手のそれぞれホールドの指示ある場合は手を離して)で保持してから登ってください。」
と言われたことがあるかもしれませんが、
ワールドカップなど大会の場合は、しっかり保持しなくても、一瞬でも安定して手足がテープの指示通り付いていれば大丈夫です。

地面から走っていって、足場のスタートホールドに先に乗り、ペタッと壁にくっついて、その体勢から手のスタートホールドに保持しに行く‥など、そういった課題もあるんですよ。そういった場合は、最初から手でしっかりと保持してスタートというのは難しいですよね。

ボルダリングの順位の決め方

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より正確な説明は10コマ目の説明を見てくださいね!

複雑なテロップの読み方

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初めてボルダリングの大会を見る方は、このテロップを一瞬で理解するのは非常に困難かもしれません。ぜひ覚えておくとより楽しく観戦できますよ!

ここのテロップで出されている

『T-5 Z-3』
というのは、あくまで"いまトライしている壁”のトライ数を示しています。
ゾーンまで3トライで獲得し、現在完登を目指して5トライ目中
という意味です。

それに対し、試合の最後に選手の順位表が出てきますが、これにかかれている
『T3 Z4』
というのは、上記の意味ではなく、あくまで、全壁に対する順位ですので、
決勝4課題中
完登した課題が3つ、完登した課題も含めゾーンを獲得した課題が4つ
それに加え
『TopAtempts 7』
『 ZoneAtempts 10』

全4課題で完登までに要した総トライ数が7回
全4課題で(完登した課題も含め)ゾーンを獲得した課題のゾーン獲得までの総トライ数

という意味です。(ちなみに、予選は5課題です。) 

完登までの総トライ数で決着がつくことも多いので、
『 ZoneAtempts 』
の表示まではされないこともあります。
 

同着の場合はどうする?

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準決勝も同着の場合は?という疑問が生じますよね。

予選のカウントバックでしょうか??

違います!

予選は人数も多く2つのグループに分かれていることが多いです。(グループ分けもないこともありますが、ワールドカップやジャパンカップでは、現在ほどんどの場合で2グループです)
その場合、それぞれのグループが違う壁で違う課題を行っているので、Aグループで上位10名、Bグループで上位10名の合計20名が準決勝に進出するという感じですので、予選の正確な全体的順位はでません。(決勝は6名進出)
例えば予選落ちの選手でAグループ23位、Bグループ23位の選手はそのまま同着となります。

準決勝に出場できた選手は、準決勝の結果次第で新たに順位が決まります。

決勝でカウントバックできるのは準決勝の成績までです。予選の成績はこのように正確な全体順位が出ず単純なカウントバックはできません。

決勝で、準決勝までカウントバックしても1位、2位、3位で同着が出る場合、表彰台がかかっているので、なんとか順位をつけなければいけません。ですので、例えば‥

a選手 T3 Z4 TopAtempts 7  ZoneAtempts 10 (準決勝3位)
b選手 T3 Z4 TopAtempts 7  ZoneAtempts 10 (準決勝3位)

完登数も同じ、ゾーンの数も同じ、完登までのトライ数も同じ、ゾーンまでのトライ数も同じ、準決勝の順位までこの同着に決着をつけるとすると・・・

完登だけまず、注目します。

a選手(全7トライ)
1課題目 1トライ目で完登。
2課題目 3トライ目で完登。
3課題目 完登できず。
4課題目 3トライ目で完登。
b選手(全7トライ)
1課題目 完登できず。
2課題目 4トライ目で完登。
3課題目 2トライ目で完登。
4課題目 1トライ目で完登。

より少ないトライ数で登れた課題を比較して・・・
1トライ目で完登、両選手➡まだ同着です。
2トライ目で完登、b選手➡b選手の勝ち!

よって、b選手の勝ちとなります。

これでも決着がつかない場合は今度はこの比較を"ゾーンまでのトライ数"で行い順位を決めます。
それでも、決められない場合はいよいよ同着となります。

この比較のやり方は決勝が中止されて、準決勝の成績で決着をつけなければならないときも、1位、2位、3位でタイが出ている場合は、をこのようにして1位,2位,3位の順位を付けます。

ゾーンを使用せずに登った場合は?

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ゾーンホールドを保持・使用することなくゾーンを通り越して登り続け、ゴール直下で落下した場合の得点は?

ファイナルアンサー!?

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答えは、完登もゾーンもなし
でした!

当たりましたか!?

"ゾーン獲得"の得点を得るには、ゾーンを保持・使用しなければなりません。
しかし・・・↓

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上記のクイズとは逆に、

【ゾーンを使用することなく完登してしまっても大丈夫なのか?】

この答えはOKです。

もし、2回ともゾーンを使わずの2回目のトライで完登すれば、
『T 2 Z2』
となります。

2回目のトライでゾーンを獲得し、3回目のトライでゾーンを保持せず完登した場合
『T3    Z 2』
一度でもゾーンを保持・使用すれば、それまでのゾーントライ数になります。

とにかく、ゾーンを通り越して保持・使用せずゴール未満で落ちたトライは、ゾーンの下で落ちているトライと同じこと、と言えます。


そして、ゾーンを保持・使用せずとも完登してしまえば、『完登』に変わりありません。

『1つ完登してしまえば、自動的に1つゾーン獲得の得点も入る』
とマンガには書きましたが、
これは2018年のルールの表現になり、
正確には現在2020年版のルールブックを読むと、
『ゾーンを保持・使用しなかった完登をゾーンの獲得の得点に数える』
というニュアンスになります。(2021年時点)
結局計算は同じことですので、観戦される方には以前のニュアンスの方がわかりやすいと思い説明しました。ご了承を願います。

ルールブックに書かれたより正確なルールとは?

では、どういうニュアンスの違いかというと
順位の付け方は5コマ目でこのように書きましたが、

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これが正確には
優先順位①  完登の数(ゾーンの使用・不使用問わず)
優先順位②  ゾーン獲得の数&ゾーンを使わずに完登した数(→これら2つをあわせて【ゾーンポイント】と呼ぶ)
優先順位③  完登までの総アテンプト数
優先順位④  【ゾーンポイント】獲得までの総アテンプト数

(アテンプト数はトライ数のことです。)

このような表現の順位の付け方になります。
優先順位②に完登数を含めることになり、優先順位④に完登した場合のアテンプト数も含めるニュアンスになるのです。

もちろんここで言う完登は"ゾーンを使わなかった完登"です。

ん~!ややこしいですね(笑)


ですので、皆さんは、シンプルに私が描いた漫画のように覚えていただければ、大丈夫です!
あとはプロの審判が順位をしっかり見定めてくれますので、楽しく選手のがんばりを応援していただければと思います。


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