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上から目先生の解説マンガ【保持力の違いは何だ⁈】【コーディネーションの飛び方の違いは何だ⁈】


プロクライマー尾川とも子のSNSにときどき登場する、
ちょっと上から目線なのに、おふざけやコスプレ大好きな上から目先生が、
楽しくわかりやすくスポーツクライミングを解説!!

女子決勝解説・・・保持力の違いは何だ!?

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5月31日に行われたボルダリングワールドカップinソルトレイク

無敵の女王ガンバレット選手の連勝が止まり、アメリカのグロスマン選手が優勝、オリンピック代表選手の野中選手が6位、同じく代表の野口選手は準決勝敗退の18位でした。

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こんにゃくと歯みがき粉に関しては、こちらの記事の『女子決勝解説』をご覧ください。


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今回2人の特徴が際立った、ホールドを掴む保持力の違いを見ていきましょう。

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注意:実際に選手がこのように持って食べているという意味ではありません。

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野中選手は、『指先ひねりタイプ』と言えます。
・指先でひねって持つことが多い
・密着させていないので、ダイナミックな動きの時に手が外しやすいので、飛距離も伸びやすくなりる。
・そのため、上半身が強く腕力系の選手にこの持ち方は多い。
・小さいホールドを持つときは親指を外して、手の平の内側に折りたたむなりすることで、他の4本指をひねりやすくしている。
・指先で細かい修正ができるが、ブレやすいのが弱点。
・また、指先をひねる時、小指側からひねって持つため、小指の使い方がうまい。

グロスマン選手は『手の平密着タイプ』と言えます。
・手の平でしっかり密着させているので、ブレにくい。
・じわじわと登る場面では、ホールドにしっかり密着させているので有効。
・このように、スタティックな動きで使用すると有効なため、テクカルな選手が多い。
・しかし、密着させているがゆえ、ダイナミックな動きの時には、引き戻される感じになって、飛距離が伸びにくい。
・また、手の平以上の大きいホールドの時は親指をしっかりとホールドに押し付け、手の平が密着できない小さいホールドの時は人差し指に添えて押し付けたりすることで、手の平の力を有効にできるため、親指の力が強く、親指が使い方がうまい。

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二刀流タイプとはどういうことかというと、
・じわじわ行くテクニカルな場面では手の平密着型で保持して
・ダイナミックな場面では指先ひねり型に変えてほじしているのです!

さすがですね!なかなかこういう選手は見受けられません。

男子決勝解説・・・コーディーネーションの飛び方の違いはなんだ⁉

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優勝はアメリカのベイリー選手
2位に日本の藤井選手
3位にオリンピック代表の楢﨑選手

という結果でした。

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コーディーネーションとは・・・
ボルダリングのムーブの一種で、ホールドをしっかり持ったり、足をしっかり乗せたりせず、補助的に一瞬だけ使うことでさらに先のホールドを目指し、タタタタタッと連続した動きで登っていくことです。

この課題は、3つの連続した黒いホールドの下の2個を補助的に一瞬使い、一番上3個目の黒いホールドをしっかり保持する動きかと思われ、選手たちも最初はその動きの予定でトライしていましたが、実際登ることができた、ベイリー選手と藤井選手は、1個目の黒いホールドを補助的に一瞬使い、真ん中の2個目の黒いホールドをしっかり保持してから3個目の黒いホールドを狙いに行きました。

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ベイリー選手は『身体の軸で飛ぶタイプ』と言えます。
・スタートで、お腹が見えるくらい裏返って助走をつけ、右足を観客側に大きく投げ出します。
・この身体の軸の回転をうまく助走の味方につけ、身体を壁に近づけることで立ち上がっていきます。
・1番目の黒いホールドを取る時も勢いが調整され、届かなすぎず、行きすぎず、うまく距離を出しています。

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藤井選手は『足使いで飛ぶタイプ』と言えます
・助走から黒いホールドまでほぼ真横を向いて壁に密着して壁と身体の距離を一定に保っています。
・手もずっと壁についているほど密着しています。
・この斜めの悪いフットホールドで身体を立ち上がらせてずっと横が向けるのは、足使いが上手な選手がなせる業です。
・足使いがうまいので、青いフットホールドの小さな頂点に乗ることもでき、飛距離を稼いでいます。
・体が横向きなので、1個目の黒いホールドを取る時は、ホールドがより持てる向きに取ることができます。

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楢﨑選手は『腕の引きで飛ぶタイプ』と言えます。
・足で助走をつけた後は、スタートのホールドが隠れてしまうくらい壁の真正面を向き、伸ばした腕を壁の方に引き込むことで壁に近づいていきます。
・壁に近づき、足で立ち上がった後は、スタートのホールドを最後まで腕で押し上げています。
・ベイリー選手と藤井選手は、身体が横向きになっているため、右足、左足、と青いホールドに乗せてツーステップで飛んでいますが、楢﨑選手は壁と向かい合っているため、右足だけのワンステップで飛ぶことになります。
・このように腕の引きでの飛ぶタイプは、壁と身体が向き合うため、黒いホールドのように、斜めや縦になっているホールドは真正面で持つため、身体が振られてより大変になります。

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マントルとは、塀などに乗りあがていくような動きで、手の平で身体を押し上げていく動きです。

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『身体の軸で飛ぶタイプ』
・体軸がとてもしなやかです。
・身体のバランスのとり方がうまく、軸のたわみも生かして登っています。
・ゴールも、振り子のひもの長さを変えて振られ方を調整するように、体の軸を縮めてコンパクトにすることで、身体の振られを最小限に抑えています。

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『足使いで飛ぶタイプ』
・三角錐の滑りそうな悪い足でも、巧みな足使いで高い位置で踏み込み、飛距離を稼いでいます。
・他の選手と比べてもだいぶ左横に重心を移動してしっかり足に乗り、飛んでいます。
・しかし、藤井選手の場合、横移動の動きのままで、壁と身体の距離がほとんど近づかず、飛んだ時には重力で落ちた分、ゴールホールドから離れていってしまっています。

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『腕の引きで飛ぶタイプ』
・足の助走の後は、藤井選手のように左横にあまり移動することもなく、ほぼ正面で腕の力で壁の方に身体を引き込んでいます。
・壁のように引き込んだエネルギーを真上に飛ぶエネルギーに変えています。つまり、十分身体を壁に近づけることで重力で落ちていく時間が稼げることと、その間にホールドの正面でホールドを腕で最後までしっかり押し上げていくことで飛距離を伸ばしています。
・ゴールの保持もベイリー選手が足を曲げることで軸を縮め身体の振られを押さえていたのに対し、楢﨑選手は腕を曲げることで腕の力で振られを最小限に抑えています。

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おそらく、お国柄が出るのは、代々先輩方の登りを見本としているからでしょうか?ベイリー選手はクライミングの神様、クリス・シャルマの登りに近いものがあります。

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