【連載第4回 みんなの公園】役割が多すぎて、覇権争いが激化する現代の公園

 ビジネスジャーナルに寄稿した”消費税の軽減税率→コンビニ・イートイン難民が大量に公園に流入?地域住民と摩擦も”は、昨今の公園事情と軽減税率が導入される今年10月以降の予想を交えた記事。

 太政官布達によって、1873年に日本初となさえる公園が誕生。当時の公園は庶民が集い・憩えるオープンスペースとしての機能が期待された。

 江戸時代まで、人々が集い・憩える公共空間はそれほど多くない。広小路と呼ばれる街道に設けられた交差点のような空間、幕府からの触書を掲出する高札場河川敷といった数えるぐらいだった。

 そこに、公園という誰もが自由に集える場所が誕生した。公園は、いわば集会場のような場所でもあった。

 これは、ヨーロッパで言うところの広場に近い。西洋における広場は、出征する兵士が集まる場であり、処刑場であり、そして平時は人々が集う場所だった。

 日本では、享保の改革で将軍・吉宗が節約を呼び掛けて遊興を禁じたことから、庶民から娯楽が消え、それでは不満が爆発する。その代替として、花見が新たな娯楽として推奨された。

 そうした経緯があるので、公園には集うのほか憩うという機能も当初から内包していた。

 公園のもうひとつの機能である「子供の遊び場」は、関東大震災以降に備えられるようになる。

 関東大震災で壊滅的な被害を出した首都・東京だったが、日比谷公園が延焼帯の役割を果たした。関東大震災は昼食時に起きたため、建物の倒壊による圧死者よりも、その後の火事による焼死者の方が圧倒的に多かった。

 その焼死者の多くは、東京の東側、いわゆる墨東に偏っている。なぜなら、関東大震災後に東京を襲った火事は日比谷公園や宮城外濠で火の手が止まったからにほかならない。

 帝都復興院総裁に任じられた後藤新平は、関東大震災の被害状況を視察し、公園が防災にも大きな役割を果たすことに気づく。

 江戸時代にも、そうした延焼帯と同じ役割を果たす空間はあった。それは火除地と呼ばれる空き地だ。

 江戸時代のように、土地の私有・公有という概念がなかった時代なら、火除地という、贅沢な空間の使い方も許容されただろう。

 いくら防火に資するとはいえ、そんな無駄とも思える空間を首都・東京のあちこちにつくるわけにはいかなかった。

 有効的な土地利用を考えた後藤は、平時は市民が集える・憩える公園として使い、災害時は避難場所、そして延焼帯の役割を果たす公園をあちこちにつくった。

 後藤の構想で生まれた公園は、震災復興公園と呼ばれる。東京市内には、隅田公園浜町公園錦糸公園という3つの震災復興公園が開園する。

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  隅田川の両岸に広がる隅田公園は墨田区と台東区の2区にまたがる

 また、それだけでは防災としては不十分だったため、後藤は小学校に併設するように小さな公園をつくっていく。

 これは小公園と呼ばれるもので、後藤の発案で東京市内には52つくられた。

 小公園は平時には小学校の運動場として使用し、災害時には避難場所・延焼帯と作用することが想定されていた。

 震災復興公園も小公園も、どちらも公園としての機能を持っているのではなく兼用が前提にあった。

 今、公園は避難場所として災害時に使用されることはあるが、小学校の運動場と兼用している例は少ない。

 そこには、小中学校にはきちんとした運動場が整備されるようになったことが背景にある。

 一方、2010年代の東京都は、余っている土地が少なくなり、保育園を開設できないという都市問題を抱えていた。

 当時、保育園には園庭が必置とされていた。園庭を設けるほどの土地がないために保育園が開設できず、保育園が開設できないから待機児童が増える。まさに、負のスパイラル。

 保育園の設置基準は、全国一律で統一されていたこともあり、東京都のようなケースは想定されていなかった。

 2000年に地方分権一括法が施行。地方自治体の裁量権が強まる。地方分権一括法は、その後も段階的に施行されて都道府県や市区町村といった地方自治体の権限はそのたびに拡大した。

 そして、東京都は保育園は敷地内に園庭がなくても、例えば通りを挟んだ向こう側に園庭を設けることができれば保育園の開設を可能にした。

 さらに、国家戦略特区制度を活用すれば公園内に保育所を設置することも可能になり、自治体によっては公園などを園庭に指定することも可能になっている。こうして、公園には保育の場という機能も付加されるようになる。

 このほかにも、昭和50年代には町内会や老人会などが公園を健康増進のために使用することもあったし、警察が地域の小中学生い交通安全教室を開催することもある。保育の場という機能も付加されるようになる。

 最近はオフィス内でも飲食店でも禁煙化の流れが強くなり、オフィス街の公園ではサラリーマンがタバコを吸うために足を運ぶ光景も見られる。

 これだけ多岐に渡る役割を課せられる公園だから、公園内がカオスになることは自然な流れと言えるだろう。

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