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タレント候補!たちの参院選

タレント候補と呼ばれる受難と憂鬱

 2022年の参議院議員選挙を目前にして、立候補予定者たちの動きが活発化している。衆議院とは異なり、参議院には解散がない。

 任期は6年で、3年ごとに半数が改選を迎える。だから、参院選は実施される期日がほぼ確定している。

 その投開票日が6月末から7月上旬に設定されているので、スケジュールが逆算しやすい。そのため、各党は事前から入念な準備をすることができる。春先から公認候補者のが決定し、その周知に努める。

 参院選には全国比例という、日本全国を選挙区とする投票システムを採用している。全国比例では、有権者は政党名で投票してもいいし全国比例から出馬している候補者名を書いてもいい。個人得票の多い順に並べられ、それを政党ごとに獲得した議席数で割り振る。

 こうした日本全国を選挙区にしている投票システムの参院選は、全国的に知名度のある候補者が有利と言われる。いわゆる、タレント候補が擁立される傾向が強い。

 今夏の参院選でいえば、新人では自民党の生稲晃子さん、日本維新の会の中条きよしさん、れいわ新選組の水道橋博士さん、無所属の乙武洋匡さんなどが、それにあたるだろう。

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無所属で立候補予定の乙武洋匡さん 

 現職や元職、そして県議・市議経験者などを含めれば、タレント候補はもっと多い。なにしろ、れいわ新選組の山本太郎代表だって、元は俳優なのだからタレント候補といえる。

 タレント候補の定義は明確ではないが、一般的に芸能人やスポーツ選手、作家などの政治とは別の分野で名をあげ、その知名度を武器にして選挙に挑もうとする人たちかタレント候補と呼ばれる傾向が強い。

 本人たちは、当然のことながらタレント候補と呼ばれることにいい気はしない。腹の底では、ちゃんと政治家を志して立候補しているのだ。だから、政策や政治理念を評価してほしいというわだかまりがある。

 候補者にとって濃淡あるものの、取材をしているとタレント候補全員からそうした気概とも反発心とも受け取れる思いを感じられる。

 タレント候補たちといえども、選挙に立候補するには相当な覚悟を決めている。覚悟がない候補者は見当たらない。

 なぜなら、選挙に出馬して落選したからといって、簡単に芸能界へ戻ることはできない。芸能界も熾烈な争いが繰り広げられている。

 空いた席は、すぐに埋まる。選挙で芸能活動が疎かになれば、途端に仕事がなくなる。それが芸能界だ。

 また、選挙でも苦難を伴う。知名度だけで簡単に当選させてなるものかという隠れた反発が有権者間にはある。タレント候補と呼ばれる彼らにだって真剣に政策があるのだが、それは見てもらえない。とにかく、扱いは華やかなタレントのままなのだ。

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 反スラップ法の制定という政策を掲げる水道橋博士さん

 タレント本人もタレント候補というだけで、当選できるとは考えていない。有権者もそんな簡単には当選させてくれない。

 それまで政治経験がなく政治には疎いだけに、彼ら・彼女らは選挙活動で汗をかいて走り回り必死に票を取り込もうとする。知名度にあぐらをかいている候補者は少ない。

 今夏の参院選にも多くのタレント候補が出馬を表明しており、それらの候補者については5月8日配信の「NEWSポストセブン」“生稲晃子さんの「第一声」とともに現代のタレント候補について考えてみた”と6月9日配信の「bizSPA!フレッシュ」“元アイドル、歌手、芸人…「参院選」はタレント候補も乱戦。参加は“推し活”で”で動向を紹介した。

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 ゴールデンウィークから街頭活動を本格化させた生稲晃子さん

 タレント候補という呼称には、どことなく揶揄というか軽んじる意味が込められている。世間からは、「政治のことを勉強したわけでもないのに、知名度を武器にして当選を狙っている」と思われるからだろう。

 また、「本業で食べれなくなったから、議員になって一稼ぎするつもりなのだろう」といった目で見られることも少なくない。

 そうした候補者がゼロとは言わないが、長年にわたっての芸能活動・文化活動を投げ打って政治の世界に飛び込むことは容易には決断できない。なぜか?

タレント候補への反発

 一般世間では「タレント候補は、知名度だけで簡単に当選できてしまう」という固定概念は強い。

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