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鈴木優人、平均律クラヴィーア曲集を語る(トッパンホール)

こんにちは!
今日は、私が一番好きな楽器、チェンバロの話です。

11月10日に「鈴木優人、平均律クラヴィーア曲集を語る」という講演会に伺いました。

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颯爽と登場した鈴木優人さん。
1曲目は平均律1番……と見せかけて、「あれ?こんな曲だったっけ?」と途中から思わせる、『ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集』14番。
「このように、おしゃれなセブンスコードが入っているところが違います」と解説。
サプライズで弾いてみたかったとのこと。

今日中に平均律のレコーディングが終わる予定で、
「順調に進んでいるので、今、笑っていられます」
(その後、予定通りレコーディングは終わったそうです)

お話の概要をメモしてきました。
素人なので、聞き間違えている部分があるかも知れません。

チェンバロ作品は巨大ホールに向かない。
バッハの一番身近な楽器はチェンバロ。
作曲も演奏もするのが音楽家で、それを教えるための楽器はチェンバロ。
教えるための本がこの平均律曲集。
教育メソッドとしてこの曲集が存在したおかげで、音楽が子や弟子に受け継がれた。
平均律は教育目的とは言っても、初めから高みを目指し、全身全霊を傾けて作られた。
売る(=儲ける)ためではないので、出版された楽譜はごくわずか。

バッハの子どもの話のところで、
鈴木優人さんは、出演されているラジオ番組「古楽の楽しみ」で、バッハ次男のカール・フィリップ・エマニュエルの名前が言いづらく舌が回らないので、何回も練習されたそうです。

調性によって色がある、という人がいる話。
同じ音楽でも半音上げるとカラーが違ってくる。(例:マニフィカト) 
全部ハ長調で書くのと何が違うのか。
「よく調律された」の中に平均律も入っている。
すべての3度を平均的にとるのは困難で……と、ここからは調律のお話。

鈴木優人さんは、以前に家庭裁判所の裁判官が知識を深めるための研修の講師として音楽の話を2時間してくださいと言われ、調律法の話をされたそうです。
「調律とは、オクターブの中に12個の音をどう並べるかということ」

この後、ピタゴラスコンマ、シントニックコンマ、純正律、平均律、ヴェルクマイスター、等々の専門用語がたくさん出て来ました。
素人には「名前を聞いたことはあるけど…」程度で知識が無く、違いはよく理解できなかったけれど、要するに、どこにどれだけシワ寄せが来るかのお話。

参考図書のご紹介がありました。
『ゼロビートの再発見』平島達司 著

半音(=100セント)ずれると使い物にならない例として、実際に音を出してくださって、聴き比べ。
「理想的な調律法とは、どんな音楽を奏でるかによって異なる」

平均律の楽譜の表紙の一番上にバッハが書いた丸印について、マルが1個か2個かは調律を表しているのではないかという、ダ・ヴィンチ・コードのような謎について。

次は、主な曲の特徴の解説でした。

24曲の最後のフーガが壮大で、長い曲集の終曲にふさわしい。

第4番のフーガのテーマは、4つの音を結ぶと十字架になる。
BACHの名前の音程も十字架になる

第8曲は、全部の音に♭が付く。
どの内声が聞こえるかは神が選ぶので、その時聞き分けてください。
このフーガは「これがテーマだったのか」という驚きに満ちた曲。

第12曲は、第24曲と共通して、半音階が特徴。
f-mollは個人的に好き。
f-mollが曲集の真ん中にあるのは、前半の締めくくりにふさわしい。
半音階が飾り立て、イエスのイバラの冠のような16音符が不思議なテクスチャーとなっている。
6度の音に帰結し、その上にメロディーがあるので、最も鳥肌が立つ。

第16曲は学習フーガと言われる形式。
藝大入試では5時間、パリのコンセルヴァトワール入試では16時間缶詰でフーガを完成させる。
フーガとハーモニーの旋律の組合せはいくらでも作れるが、調整ト短調という中で成立させると2個目の旋律が変応(へんのう)し、微妙にテーマに合うように調節(ト短調提示部→変ロ長調ヘ転調)
テーマが終わる前に次のテーマがたたみかけるように演奏される「ストレット」の解説。
5声部 変ロ短調は、お客の拍手を期待していない曲。
すごいなと思う曲。すべてがテーマになって終わる曲。
バッハの弟子になったつもりで学習者として聴くといいかも。

第20曲 イ短調はきれいな曲でテーマが長い。
カノン、逆転のカノンの解説。

自筆譜の最後に書いてある「S.D.G.」とは、Soli Deo Gloria=「ただ神にのみ栄光あれ」
SDGsではない。

次は、平均律レコーディングでベルリンのスタジオにいるマーティンさんに呼びかけ。
パソコンの画面にマーティンさんが映っていました。
このレコーディングは、ホールの利用時間の都合で、ベルリン時間では朝2時半からだそうです。

最後は、「今から第22曲を録音します!」ということになって驚きました。
客席は携帯電話の電源オフの確認をして、物音を立てないようにと緊張。
今までおしゃべりしていたのに、サッと切り替えて演奏に入るところが、さすがプロです!
優人さんは笑顔で楽しそうに演奏されていたようにお見受けしました。
このテイクが採用されたら、私は歴史的な瞬間に立ち会ったことになります!

お話だけでなく、素晴らしい演奏をたくさんお聴きすることができて、明日の演奏会がますます楽しみになってきました!!!
やっぱりチェンバロの音色が好きです。

余談ですが、
7月の調布国際音楽祭では、鈴木優人さんが指揮をされた公演に伺ったので、チェンバロは舞台袖に置かれていたのを眺めるだけでした。
ようやく音色を聴くことができて嬉しかったです。

早めに会場に到着して、建物2階にある小石川テラスでお茶しました。
広々として明るく、静か。
コーヒー2杯とラズベリーシフォンケーキ、美味しかったです。
合わせて税込800円でした。

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それでは、次回の記事もお楽しみに。

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