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はじめてカウンセリングを受けた話

私は、人に頼ることが苦手です。
出来るだけやれることは自分でやろうと思ってしまうし、その結果抱えすぎてパンクしたり、かえって人に迷惑をかけてしまうことが多々あります。

思春期に悶々としていた頃も、思い詰めて行き着く先は必ずトイレの個室でした。
誰にも気づかれないようにひとしきり泣いたら、何事もなかったかのように廊下へ出て平然と過ごす。
保健室やスクールカウンセラーさんのもとへ駆けつけたらおしまいだと、プライドと先入観で思い込んでいました。

そんな私がつい先日、生まれて初めてカウンセリングを受けたのです。
そして結果、とても心が軽くなったし、カウンセリングってもっと気軽に受けて良いものなんだと気づきました。

漠然とした不安の絶えない世の中で、ほんの少し生きやすくなるヒントとして、私のカウンセリング体験を綴りたいと思います。

◉きっかけ

私は別にまともな生活を送れないほど弱っているわけではなく、毎日早寝早起きして3食よく食べ、普通に仕事に行き、友達とも談笑し、映画や漫画や音楽も楽しんで、健康で文化的な生活をしています。

それでも長年自分の中で浮き沈みしている慢性的な悩みの種のようなものがあり、ふとした時に気分が落ち込んだり、無気力になったりするようなことがあります。
大なり小なり、きっと誰にでもありますよね。

自粛期間以降、ひとりでぼんやり考え事をすることが増え、なんとなくその悩みの種が頻繁にうずくようになったなと思っていました。
20代半ばに差し掛かり、仕事や人生のことを具体的に考えるようになったのも重なっていると思います。

何度かカウンセリングのサイトを開き、予約ボタンを押そうとしたのですが、どこか敷居の高さを感じてしまい中々踏み出せず…。
「自分はカウンセリングを受けるほどじゃない」とか、「本当にカウンセリングで何か変わるのか?」とか、「人と会話するのにお金を払うのか…」とか。サイトを見るたび懐疑的になってしまい、ずっと躊躇していました。

そんな折、久しぶりに会った友人との会話の中でこの本が登場したのです。

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いとうせいこうさんと精神科医の星野概念さんによる対談をまとめた、「ラブという薬」
私は普段こういう類の本(自己啓発に近いような)をほとんど読まないのですが、友達にすすめられた本はすぐポチる主義なので、何かの縁と思い読んでみました。
対談形式だからさらっと読めます。

端的に言うと「みんなもっと気軽にカウンセリング受けようよ!」って本なのですが、私はまんまとそれに背中を押されてあんなに重かった一歩をヒョイと踏み出せたのです。

あと、たぶん先日観た映画「82年生まれ、キム・ジヨン」にも影響されてます。

映画の中で主人公がカウンセリングに通っていることを上司に打ち明けるシーンがあるのですが、上司は「そんなの今時珍しくないわよ」って背中を押すんですよ。

日本だとまだなんとなくカウンセリングを受けるハードルの高さや、公にしにくい空気があるけれど、もう少し広い視点で見るともっと気軽に通えたり打ち明けたりできる世界もあるんだなって思ったんです。

そんなこんなで、私はようやく予約ボタンを押すことができ、カウンセリングの扉を開きました。
「ラブという薬」でも「82年生まれ、キム・ジヨン」でも言ってたけど、カウンセリングで一番難しいステップって、この最初の一歩なんですよね。
踏み出せたら半分成功したようなものと言っても過言ではない
そう思うと、踏み出させる力を持ってる本や映画ってやっぱり強い。

◉カウンセリングの形式

一口にカウンセリングと言っても、本当に色々あります。
企業や学校にカウンセラーさんがいるタイプ、病院の精神科や心療内科、訪問型やリモート形式などなど…。

またカウンセラーさんによってもそれぞれ得意としている分野があり、子育ての悩みに強い人、パワハラやセクハラ問題に対応してきた人、漠然とした不安から具体的な原因を見つけてくれる人、など様々です。

そんな中で私が選んだのは、zoomを使ったリモート形式のカウンセリング
正直、初めてのカウンセリングで病院に予約を入れ、何ヶ月も待ち、マップを頼りに病院へ足を運び、初診料を払って、緊張しながら待合室のイスに座る……というのは気が重すぎた。
それで予約の日に仕事が入ったり、先生が合わなかったりしたら二度とカウンセリングを受ける気が起きなくなるかもしれないし。
怠惰で飽きっぽい人間なので、出来るだけ気軽に、そしてすぐに、カウンセリングを受けたかったのです。

リモートカウンセリングを受けるまでの流れはこんな感じ。

①自分に合いそうなカウンセリングのサイトを探す。
ちょっと胡散臭いなあとか、金額と内容が割りに合ってないなあとか感じるところは排除。サイトによって全然色が違うので、複数見比べたほうがいいです。
②自分に合いそうなカウンセラーを探す。
大体カウンセラーさんごとに経歴や得意な分野、メッセージが載っているので、自分の悩みに合いそうな人を探してください。私は初めてでうまく相談できるかわからなかったので、とにかく実績がありそうな人を選びました。
③予約日と時間を選択する。
カウンセリングを受けたい人って、できるだけ早く受けたいはずですよね。1ヶ月後の気持ちなんてわからないし。その点、リモートだと比較的直近の予約がしやすいのが利点でした(私が見たサイトは当日でもいけた)。
④予約・決済完了メールを確認して、待機。
私が見たサイトはここまでほんの数分で完了しました。あまりの手軽さにびっくり。
⑤当日、時間が来たらzoomリンクを開く。
自粛期間のおかげでzoom操作にも慣れててよかった。開始15分前くらいから「ほんとにカウンセリング受けるんだ…」って部屋でそわそわしてたけど、リンク開いたら優しそうな先生が現れてホッとしました。

私が受けたリモートカウンセリングは、1時間弱で5000円でした。
この値段設定も、初めて見たときは高く感じたけど受け終わった今は妥当だと思います。
対面のカウンセリングより安いし。
気分転換に飲み食いしたり遠くへ行ったり新しい服を買ったりする5000円を、試しにカウンセリング代にしてみるというのもアリだと思います。

◉カウンセリングの内容

「ラブという薬」にも書いてあるけど、カウンセリングって基本的に「傾聴と共感」なんですよ。

まず、「何でもいいからどんな悩みがあるのか話してください。まとまっていなくてもいいです」というところから始まり、私が話し始めるととにかく優しく頷いて聞いてくれる
そして私の口から出たキーワードを少しずつ掘り下げることで、何に悩んでてどうしたいのかがだんだん明確になってくる
しかも押し付けがましくなく、さりげなく誘導しながら私自身に気づかせる形で(私が選んだカウンセラーさんはこれが本当に上手だった)。
そして本当に絶妙なタイミングで「それは大変でしたね」「お辛いですよね」と共感の言葉で寄り添ってくれる
その度に私は心の凝り固まっていた部分がほぐれて、またどんどん言葉が出てくる。
これがプロに相談するということなのかと、感動しました。

友達や家族に相談するのとは違うの?と思う方もいるかもしれませんが、カウンセラーの良いところは「確かな知識・経験・守秘義務のある赤の他人」という点です。
本名や職業を伝える必要もないし(通院だとまた違うと思うけど)、全然知らない人だからこそ悩みを包み隠さず打ち明けられるということもあります。
近い関係の人だとお節介な提案や意見の押し付け、情報漏洩もあり得ますが、カウンセラーさんは基本的に私の意見を否定せずに受け入れ、秘密を守り、寄り添ってくれます。

私の場合、長年付き合ってきた悩みの種への対処法や折り合いの付け方はある程度答えが出ていたのですが、どこか確信が持てなかったり、突発的に気持ちが揺らいだりすることがあったので、自分の考えの確認作業のような形で相談をしました。
「こういう問題があって、こうやって折り合いをつけてるんですけど、たまに辛いんです。どうしましょう」みたいな。

するとカウンセラーさんは私の折り合いの付け方を肯定したうえで、「こういう見方もあるかもしれません」「辛い時はこうしてみるのも手です」というプラスアルファーの提案をしてくれました。
それも断定的ではなく、必ず答えは私に委ねてくれているんですよね。
つくづく、良い方に当たったと思います。

私は自分の考えを今までより明確にまとめられたうえに、カウンセラーさんの提案にもかなりハッとさせられたので、本当に充実した気持ちで1時間弱のカウンセリングを終えました。

◉カウンセリングは予防接種

前述したとおり私は普段とても健康に楽しく暮らしています。
それでもふとした時に落ち込んだり弱ったりする時があります。
きっと誰にでもある心の状態です。
カウンセリングって、それくらいの状況のときにこそ気軽に受けるべきものなんだと、初めて受けてみて思いました。

言わば予防接種のようなものです。
インフルエンザになってから予防接種を打つのでは手遅れなように、心を本当に病んだ後ではカウンセリングを受ける気力すら残っていないかもしれない。
もちろん既に弱ってしまった人にとってもカウンセリングは必要ですが、できればそうなる前の方がきっと早くよく効くはず。

「最近なんとなく不安」とか、「失恋して辛い」とか、「とにかく人と話したい」とか、それくらいの理由でも全然気軽に受けて良いと思います。
自分の中に潜む思わぬ問題や、問題を解決する糸口が見つかるかもしれません。

私は初めてのカウンセリングで合う先生と出会えましたが、もちろんそうでない場合もあります。
カウンセラーさんも人間なので。
対面かリモートかなど、形式の合う合わないもあると思います。
最初が合わなくても必ず他に合う人や場があると思うので、心がまだ健全なうちに探しておくと良いです。

それと、世の中には人の弱みにつけ込む人や団体もあります。
そこは本当に気をつけてください。
検索して出てきた順序とか評判に流されず、よく吟味して選んでください。

とにかく言いたいのは、カウンセリングは予防接種くらいの感覚で、肩が疲れてきたらマッサージへ行くように、米が減ってきたらスーパーへ行くように、ちょっとでも心の疲れを感じてきたら(感じてなくても)気軽に受けたら良いと思います。

金銭的な敷居の高さを感じる方も、各自治体で無料の相談窓口を設けている場合がほとんどなので、まずはお住まいの地域のホームページなんかを見てみてください。

◉頼るという強さ

一番はじめに書いたように、私は人に頼るということが本当に苦手です。
カウンセリングなんて自分には縁がないと思っていました。
でも本当にスーパーとかジムとかカラオケとか行く感覚で受ければいいじゃんって思えるようになりました。

中学時代、いつものように人知れずトイレで泣いて、廊下に出た瞬間国語の先生と鉢合わせたことがあります。
私は泣いていたことを悟られないように顔を伏せたのですが、勘の良い人だったので先生は私の様子に気づき、小さくひとこと言いました。

「弱いね」

中学生の私はものすごい衝撃を受け、「泣いてる女の子になんてこと言いやがるんだ!」と心の中で思いました。
しかし同時に、それまで人に頼らないことを強さ・美徳だと考えていた価値観が崩れ、自分の弱さを知りました。

人に頼ること、自分の弱みを打ち明けることは、強さです
私はそういう強さを持つ人にずっと憧れていました。
カウンセリングはその憧れに近づく一歩だったと思います。
私はきっと明日からも変わらずご飯を食べ、仕事をし、友達と笑ったり映画に浸ったりしますが、誰かに頼るという強さを持った前と後とでは、それらは全くの別物なのです。

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