女子高生という子どもが、電車内という社会で、痴漢という性被害に遭うことについて

【1月8日19時30分追記】あるネットニュースを読んでこの記事を書きました。最初、この部分にはその記事のタイトルが入っていましたが、編集部が記事について謝罪され該当記事を削除されたのでタイトルも削除いたします。記事を執筆したライターさんに悪意があったとは思いません。軽率だったとは思いますが、その軽率さは「痴漢」の実態を知らないことによるのではないかと思いました。「痴漢が怖い」と言う人を自意識過剰だと笑う風潮は、被害者の口をふさぐことにつながります。実態を知ってほしいと思って書いたのが以下の記事です。【追記終わり】

常々不思議なのが、「痴漢をされる」のは魅力的な若い女性だけだと思っていたり、「痴漢された」と言うことを自慢と思ったり、「痴漢が怖い」という発言を自意識過剰だと感じる人がいるということ。上の記事もそうだけど、おばさんが「痴漢怖いわよね〜」とか言うと、「狙われねーよ」と笑われたりする。自分が被害を受けた経験があるから、娘とか孫とかを心配して言ってるのかもしれないのにね。思うのだけど、男性と女性の間には、痴漢というものに対する量と質に認識の差があるんじゃないか。痴漢って恐らく多くの男性が思っているよりもうようよいるし、してくることはすごくえぐい。

20代中盤の頃に付き合っていた彼氏となぜだか電車内での痴漢の話になったときに、私が「服の上から触るとかそういうのじゃないよ」と言ったら彼が「え……」と言ったまま固まってしまったことがある。とんでもないところを触ってくる痴漢はAVの中だけの話じゃない。

【1月7日21時30分追記】下記で、性被害の具体的なエピソードを多数書いています。不快に感じられる方もいらっしゃると思いますので、ご注意をお願いします。

高校時代(1996年〜1999年)、私は武蔵小山から目黒まで目蒲線(今の目黒線)、目黒から渋谷まで山手線、渋谷から赤坂見附まで銀座線で通っていた。その路線全てで何度も痴漢に遭った。

初めて電車の中で痴漢にあったのは小学生のときだったけれど(家に帰った後で触られたところをシャワーでずっと流した)、徒歩通学だった小中学校まではその1回だけで、その次は高校の登校初日の帰り。恐らく相手の人は東南アジア系の外国人で、スカートの上からお尻を触られた。渋谷から目黒までの間ずっと触り続けられて、私はそのとき、お尻を触られるのに合わせて胃腸がすごい勢いでぐるぐるまわるようなすごく変な感覚を覚えた。その人がお尻をなでまわす手を休めるとぐるぐるが止んで、再開するとまたぐるぐるした。その感覚があったのはそのときだけだったのでよく覚えている。その日電車がすごく混んでいて、私はできたばかりの友達と車内ではぐれた。次の日にその友達にあったら、「昨日電車の中で痴漢見ちゃった」と言って気持ち悪そうな顔をして、たぶん痴漢されていたのは私だったのだけど、その時はその子とそこまで仲良くなっていなかったので言えなかった。

その後卒業まで、すごくたくさん痴漢に遭って、感覚が麻痺してしまったというか、悪い言い方をすれば慣れてしまった。相手が外国人だったのは恐らく初日のときだけで、スカートの上からだったのもそのときだけ。下半身を触られるときは必ず下着の中まで手を入れられた。性器の中に指を入れられることも何度もあったし、結構空いた車内でそういう風にしてきた若い男性は私が喜んでいると思ったのか、渋谷で一緒に降りてきて笑いながら「ちょっとついてきて」と手を引っ張った。社章をつけているのに、対面の状態で胸を触ってきた人もいた。

そういう被害にたくさん遭った自分が特別だと言いたいのではない。仲のいい友達はみんな痴漢に遭っていた。精液をかけられて泣きながらトイレでスカートを洗った子もいたし、前と後ろ両方から2人の人に同時に痴漢されたという子もいたし、中学校時代に長いスカートをたくしあげて触られたという子もいた。髪をベリーショート、ほとんど坊主ぐらいの状態にしたのに痴漢にあって驚いたと言っている子もいた。両手で後ろからお尻の辺りを持たれて下半身を押しつけられて性行為のふりをされた子も。

それで、毎日のように痴漢に遭って3回痴漢を捕まえた子とか、「絶対痴漢に遭いたくないから怪しいと思う人がいたら離れる。だから痴漢に遭ったことがない」と言っている子もいたけれど、ほとんどの子はどこか冷めていた気がする。私も今に至るまで親に言ったことはないけど、友達の中でも親に言っている子の方が少なかったと思う。親に性的なことを言うのが恥ずかしい年頃だし、おおごとにしたくないし。親を傷つけたくないからという子もいたと思うけれど、私はどちらかというと別に言うことじゃないと思った。世の中ってそういうもの、という冷めた感じ。電車の中で大人に痴漢されるのは当たり前、「短いスカート履いてるのが悪い」っていう大人もいるしその通りかも、仕方ないかも、それにそんなに大したことじゃない。だってみんな痴漢されてるし。そんな気持ち。

今、なんでそういう気持ちだったのか考えてみる。それは自分が社会と接したほとんど初めての場所に、当たり前のように「痴漢」があったからではないか。小学校のときに子どもだけで電車に乗ったのは1回だけだった。その1回のときに痴漢に遭った。高校時代は家と学校の往復で、その間に電車がある。大勢の大人、社会人と日常的に「接する」機会はそのときだけ。それまでは知らない大勢の大人、仕事場に向かう大勢のサラリーマンたちを日常的に見ることはなかったけれど、大人の社会に少し接するようになったらすぐに痴漢された。ということは、大人の世界ではこういうのが普通なんだろう。子どもは自分が見た世の中を「普通」と思って受け入れようとする。それから、援助交際という言葉が盛んにメディアで取り上げられ始めた時代にしては、私は他の子より考え方が幼かったのかもしれないけど、大人が自分を性の対象として見ていることがよくわからなかった。同級生の男の子からならわかるけれど、大人の女の人を相手にするはずの男の人が、こんな胸もないちんちくりんをなんで?という。実際に触られてるのに、それが彼らにとって「興奮すること」だというのが理解できなかった。

電車以外でも痴漢、変質者はいた。すれ違い様に太ももを触られたり、階段を上っていると下から「パンツ見えるかな」と言って覗き込まれて「見えたよ」と言われたり、当時マンションに住んでいて1階にある郵便受けを確認しようとして少し前屈みになったらパシャっていう音とフラッシュがして、何かと思ったら男の人が逃げていったり。インスタントカメラをスカートの下に入れられて中を撮られたのだった。エレベーターで4階の自宅まで上がったら、階段で男の人が上がってついてきたこともある。玄関の前まで来て話しかけられて、「この人の前で鍵を開けてはいけない気がする」と思って(共働きだったから家には誰もいなかった)、そのまま話を聞いていたら、急に「ねえ、いくらなの?」と言って胸を触ってきた。さすがにすごく怖くて身構えたら、「本気にならないでよ」と言って帰っていった。まだ外が明るい時間帯だったし、そのマンションの廊下は外の通りから見える場所だったのに。繰り返し言うけれど、多くの女性はこういう目に遭っている。以前、ネットニュースの企画で女装をした男性がその格好のままで家に帰ろうとしたら、自宅に着くまでに3回痴漢にあって女性は大変だと思ったという話を見聞きしたことがあるけれど、そのぐらい変な人はいる。

高校を卒業した後は、池上線で五反田まで、山手線で池袋まで通学していたけど、触られるタイプの痴漢にはほとんど遭わなくなった(電車内で性器を見せられたことは2回ある)。大学時代に触られたのは1年に数回ぐらいだったと思う。私服でほとんどスカートを履かないからというのもあるかもしれないけれど、制服ではなくなったということが大きいのではないかと思っている。生足にスカートだから手を入れやすいし、子どもだから騒がないという意識がどこかにあるんじゃないだろうか。魅力的かどうかというよりも、触られても大人しくしているかという基準で選んでいると思う。

実際、私は痴漢を捕まえたことや反撃したことはないし、親や先生に被害を言ったことも一度もなかった。今だったら足を踏んでやると思う。

彼らにとっては大人しそうであれば、抵抗しなければ、女子高生であれば誰でもいい。そのことはいやというほど思い知らされる。個を奪われて性の対象とされて侵害されることが、「自慢」になるはずがない。

当時は子どもだったし、当時失恋したりしてどこか自尊心が低いところがあったことも原因かもしれないけれど、自分の体を知らない大人に触られることが屈辱的なことで、権利の侵害で、あってはならないことだ、という意識が少し薄かった。それに、「自分の体を触らせてはいけない」と教えられたことはそれまでなかった。「変な人には気をつけなさい」と言われたことはあったけれど。そんなこと教えなくてもわかるでしょと思う人も多いかもしれないけれど、本当にそうだろうか。

以前、子どもの性被害防止の取材をしていたときに、元幼稚園教諭の友人は、2人の子ども、男の子と女の子の両方に「小学校に上がる前から、胸や性器を人前で見せてはいけないことや、そういった部分を触らせて(触って)、見せて(見て)と言う人には注意しなければいけないことを教えている」と言った。自分もそういうことを教えてもらっていれば良かったなあと思うし、自分に子どもが生まれたらそう教えたいと思っている。

自分の身近な人が性被害に遭うかもしれないという危機感。それは男女差が結構あるのじゃないか。「まさか」と思うのであれば、男性は彼女や奥さんに聞いてみたらいいと思う。真剣な話として。家族をつくろうと考えているのであれば特に。ちなみに私は昔付き合っていた男性に「痴漢されたことがある」と打ち明けられたことがある。被害に遭うのは女性、女の子に限ったことでもない。


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Tamaka Ogawa

「性」と「性暴力」の話

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コメント16件

ぶちにゃーすさん はじめまして。コメントをありがとうございます。痴漢被害に遭った女の子のお父さんに話を聞いたことがあり、その方も加害者を許せない、男性は痴漢被害に遭う気持ちがわからないかもしれないが、自分より強い男から無理矢理触られる恐怖をすこしでもそうぞうしてほしいと仰っていました。抵抗できない子どもを狙う加害者が本当に許せないですし、絶対になくしたいです。
お返事ありがとうございます。Ogawaさんの文章は読みやすくわかりやすく、共感や納得出来るところが多いのでこれからも楽しみにしてます。
ありがとうございますm(__)m 読みやすく面白く書くのが目標です^^
始めまして。Yahooに掲載された小川さんの記事に興味が出てコメントさせてもらいます。痴漢についての解説、なかなか興味をもって拝見しました。そして痴漢に会う男性の記事も読み、考えさせられました。そして一つ提案というか、お願いなのですが、痴女に会う男性の考察についての記事も作っていただけないでしょうか?実は私、痴女に会ったことがあります。はっきりとした統計がないのでわかりませんが、おそらく痴女に会う男性というのは数としては多くないのかもしれません。しかし被害にあった場合被害を申し出る男性はいないものと思います。
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