DVやモラハラをする人は自分が傷つくことを極端に恐れる人

どうしてDVやモラハラをする相手と付き合ってしまうのか、そしてなかなか離れられないのかについて。

学生時代、女友だちに「クソ男と付き合ってる女の子って、ほんと自分では気づいてないよね。ああなると周りがいくら言っても無駄なんだよね」と力説したところ、彼女から「私が一番それを言いたいのはあんたなんだけどね」と返されたことがある。そこで私は「たしかに」と思ったけれども、即別れる決断はできなかった。しばらくして相手の浮気が発覚し、逆ギレした彼が私を数十分にわたって罵倒する、などのアレコレがアレコレアレコレあり、ようやく目が覚めた。

DVとかモラハラで自分の存在を否定してくるような相手と付き合うと、消耗するだけで何もいいことがない。だからなるべく早く別れたほうがいいのだけど、その決断がなかなかできない。長い期間付き合ってからようやく別れる決断をした後に残るのは、「あの期間、ムダだったのでは?」とぼうぜんとする気持ちだ。DVやモラハラというのは、ほぼ洗脳の状態に置かれることなので、そこから目覚めると付き合っていた期間のことがひどい徒労に思える(そう思いたくないから別れられないって心理が働くこともある。損切りできないというか)。だから今、交際相手からDVやモラハラにあっている人は、なるべく早く別れる決断をしてほしいんだよね、やっぱり。これ以上心身が削られる前に。

こういう相談を受けることがしばしばあるので、DVやモラハラに見られるエピソードを一般化して書いてみる。繰り返しになるけれど、思い当たる人はなるべく早く別れる決断をしてほしい。ちなみに私は女性から被害相談を受けることが多いが、男性でも交際相手から被害に遭っている人や、被害に遭っていても自覚がない人はいると思う。※下記の例は便宜上、「彼」と統一して書くけれど、これが「彼女」の場合もあるということ。

■1

たとえば、付き合っている彼(あるいは配偶者)と、彼の友人たちと一緒に会う約束をする。あなたと、彼の友人たちは初対面。その席に、彼が1時間以上遅刻してくる。あなたは内心ちょっと焦りながらも場をもたせる。LINEで「いつ来るの?」と確認して、「あと10分で着くみたいです」と伝えたりしながら、気を遣う。

遅刻して現れた彼は、何でもない顔をして、その場では友人たちに軽い謝罪をして、その後は場を盛り上げる。その様子を見てあなたはホッとする。彼のトークは軽妙だし、やっぱり心強い人だなと思う。

そして会が終わり、2人きりになる。あなたは軽く「もうちょっと早く来てくれたらよかったんだけど」と言う。彼の遅刻は初めてのことではないから。すると、彼からのダメ出しが始まる。

「僕の友達といるのがイヤだったの?」
「緊張するような相手じゃないでしょ?」
「1時間ぐらい場を持たせられるようにならないと」
「人見知りなところは直していかなきゃダメだよ」

彼はあなたに対しては、自分が遅刻した非を認めない。そしてあなたは、少し納得がいかないけれど、自分には人見知りなところがあるので、彼の言うことも半分ぐらいは正しいと思う。

でも実際は、1時間場をもたせたのはあなただし、彼はあなたに謝って「ありがとう、俺が来るまで1人で頑張ってくれて」と伝えてもいい場面なのだ。でも彼は、謝罪と感謝を選ばず、あなたへダメ出しすることを選ぶ。

■2

彼はあなたの服装や外見や仕事のスキルを誉めることがある。けれど、その10倍は「イマイチだ」と言う。

「ちょっと垢抜けなさがあるよね」
「田舎出身って、一目でわかる」
「本当は僕は○○ちゃん(共通の知人の女の子)の方がタイプ」
「本当に気が利かないよね(笑)」

彼は冗談めかしてそんなことを言う。あなたは彼の言葉に傷つきながらも、「彼は自分にも人にも厳しい人なのだ」「本当のことを言って、私を成長させてくれようとしている」とも感じる。あなたは自分で自分のことを「ちょっとイマイチ」と思っているので、そう言ってくれる彼を「信頼の置ける人」だと思う。

でも実際は、あなたのことを「ちょっとイマイチ」ではなく、「素晴らしい人」と言ってくれる人と付き合う選択肢もある。彼といると、その選択肢が見えなくなる。

■3

あなたはふとしたきっかけから、彼が共通の知人たちに、あなたの評価を下げるようなことを言っているのを知る。

「感情的ですぐ怒る。僕が後始末してる」
「料理は下手だし、片付けも雑」
「そのくせ、人の悪口ばかり言ってる。不機嫌でプライドが高い」
「まあ少しは頭がいいけれど、僕は他の人が知らない部分を知ってるから」

あなたは噂を取り消したいと思うけれど、自分よりも彼の方が信用されることを知っている。彼は社交的で人を笑わせるのもうまい。どうせ自分の知らないところで話されていることなのだからいい、そう思い込もうとする。

本当は、2人でいるときに感情的ですぐ怒るのも、家事をしないのも、すぐ不機嫌になってプライドが高いのも彼なのだ。でもあなたは、「私にもそういうところがある」と思ってしまう。

■4

彼がモノを失くしたり、忘れたりすると、あなたのせいにされる。「パソコンの電源コードがないんだけど、間違えてない?」と不機嫌な声で言われる。

あなたは自分が使っているコードを見せて、それが自分のものだと証明する。

「ふーん、確かに君のみたいだね」と彼は言うだけで、疑ったことを謝らない。

あなたが少し冗談めかして「疑ったなら謝って」もしくは「いつも私のせいにしないで」と言う。彼は平然と言う。「僕が困っているのは2人の問題でしょう?」「君は自分が良ければそれでいいの?」。あなたはこれ以上言っても無駄と言葉を飲み込む。

■5

飲み会などの席で、彼よりもあなたに注目が集まると、彼は機嫌が悪くなる。話題を変えようとする。

彼はあなたを自分の一部のように扱うけれど、あなたが世間から評価されることは望んでいない。あなたへの評価を自分の功績にすり替えることもある。

■6

あなたと彼はしばしば口論になる。激しい言い争いになって、彼はあなたを殴る。髪の毛をつかんで倒したり、引きずることもある。

何度目かの暴力を受けた日、あなたは警察を呼ぶ決心をする。彼は警察官に「ただのけんかです」「彼女はヒステリーなんです」「僕も彼女からつかまれて腕にあざができました、ほら」と言う。身体的な暴力を受けて動揺しているあなたは彼ほど冷静に振る舞えないし、状況をうまく説明できない。もしくは、適切な相談相手がいない。

■100%悪い人ではない、という幻想

カウンセラーの方に聞いた話だが、DVやモラハラを受けている人の多くは、最初の相談で「でも、悪い人じゃないんです」とか、「いいところもあるんです」と言うそうだ。

そりゃそうだろうと思う。100%悪い人だと認識していたら別れたいと思えるし、そもそも付き合ってない。いい部分もあるからこそ、別れられない。

アメとムチの話にも似ているが、彼といることのメリットが「一緒にいると楽しい」「他の人とでは得られない刺激がある」とかだとヤバい。一緒にいて楽しいとか、成長できる相手だと感じているのは「自分」なので、自分では自発的に相手との関係を楽しんでいるつもりでいる。

「DVやモラハラ」と「一緒にいて楽しい時間」が交互に繰り返されると、ジェットコースターに乗っているような気分になる。自分と相手は、どんな時間・どんな感覚でも共有できる同志であるような気持ちになり、ジェットコースターから降りられなくなる。

DVやモラハラを受けている側が、「私が一番彼のことをわかっている」「私がいないと彼は生きていけない」という心境になることがある。「私が彼(彼女)を変えられるかもしれない」とすら思うことがある。彼(彼女)は、DVやモラハラをする一方で、「君しかいない」「僕(私)は本当は孤独」などと言うことがあるからだ。少女漫画にありがちな甘い言葉を言うのは、まともな人よりも、DV気質の人に多いんじゃないかと思うぐらい。言葉に責任を持つ感覚がない人だから、簡単に何でも言えるのではないかとも思う。

自分が「楽しい」と感じる瞬間と、DV・モラハラを受けることは分けて考えなければいけない。なぜなら2人の間に楽しい時間があっても、DV・モラハラで受ける傷はチャラにはならないから。

塩を舐めた後だと、ちょっと甘いものがとても甘く感じる。ジェットコースターで坂を下る瞬間があるからこそ、そこに上るまでもドキドキしている。「楽しい」と感じるのは、本当は基準値を下げられているからなのではないか。そこまで思い当たらなかったとしても、「楽しい時間もある」ことを理由に、別れを躊躇するべきじゃない。

■絶対に自分が傷つきたくない人たち

でもこういろいろ書いてみたけど、鬱を他人が治せないのと同じように、モラハラやDVを受けているけれど別れられない人に周囲が「目を覚まさせる」のは、やっぱりなかなか難しいのだと思う。

自分のことを振り返っても、当時の交際相手がヤバい人だったと本当に気付いたのは、その後にまともな人と付き合って、「あれ、男の人と付き合うというのは、こんなに穏やかなことなんだっけ」「こんなに楽に意思疎通できるものなのだっけ」「こんなに自分を肯定してもらえるものだったっけ」と思ってからだった(泣ける)。

渦中にいるときは毎日のように自尊心が削られていくから、「自分が(or自分も)悪い」から抜け出せない。モラハラやDVをする人というのは、相手が自発的に自分から去っていくのを極端に恐れる(自分から相手を捨てることはある)。その恐怖があるから、相手に別れを切り出させない手段に長けている。

コントのような本当の話なのだが、前述した学生時代に付き合っていた元カレに対して私が一度別れを切り出したとき、一晩中電話で「考え直して」と言われ続けた。明け方になって、「わかった。もう1回やり直してみる」と私が言った途端、彼は「いやそれ無理やて。ごめんな」と言ったのだ。

絶対に自分が傷つきたくない人たち。自分が傷つかないためには、いくらでも相手を傷つけて構わない人たち。

たぶん、相手の気持ちをあれこれ考えすぎるタイプの人は(私もそうだが)、モラハラタイプの人に操られやすい。「この人は過去にツラいことがあったからこういう風になってる」とか考えてしまうし、相手も実際ウソか本当か、そういう過去をチラつかせたりするし。

「相手の気持ちを考えましょう」って教育を受け続けてきたり、相手の気持ちをとことん深読みするような少女漫画が好きだった人には難しいことなのだが、モラハラする相手の気持ちを考えようとしてはいけない。なぜなら相手は、あなたのその気持ち、優しさや思いやりを利用するから。あの人たちとは勝負できると思わずにさっさと逃げた方がいい。本当に心から願っている。

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Tamaka Ogawa

心の中の話

20歳以降、自分がどんな育ち方をして今に至ったのか考えることが増えました。
9つのマガジンに含まれています

コメント2件

もう、ほんとうに、すごく、いい文章でした。定期的に読み返したいと思うので個人的なマガジンに追加させていただきました。書いていただいてありがとうございます!
どういう事例がモラハラ男なのか? という見分け方にも有益だと思います。
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