真摯な聞き手になるために試したいいくつかのこと

昨日社内でインタビューのノウハウ、みたいな話になったので、自分が日頃考えていることをまとめておく。といっても私はインタビューがうまいわけでは全然ないし、これをライターの先輩に読まれたら恥ずかしいのではあるけれど、個人的な工夫の共有として。

■沈黙を恐れないこと

インタビュー中に聞き手が考えなければいけないことはたくさんある。次に何を質問するべきか、インタビュイーの言葉は取材の目的に沿ったものになっているか、読者が知りたい内容を聞けているか、相手は機嫌良く喋ってくれているか、終了時間まであと何分か、などなど。その中でも一番聞き手の頭を占めがちなのは「次に何を質問するべきか」だと思う。話し手が口を閉じた瞬間から始まる沈黙が恐怖だから。手際良く質問しないと忙しい取材相手を不快にさせるのでは、とか。不快にさせるとまではいかなくても、沈黙は気まずい。なので、聞き手はついつい「次の質問」を急いでしまう。頭の中で次の質問の用意に気がいってしまう。

しかし、本当は次の質問以上に大事なことがある。全く以て当たり前のことなんだけど、それは相手の話を注意深く聞くこと。

これは私のノウハウではなくて、確か『聞く力』で阿川佐和子さんが言ってたことだ。阿川さんはインタビューするとき、質問を1つしか用意しないという。なぜか。

箇条書きで質問をたくさん用意すると、ついつい次の質問をすることに注意がいってしまい、今ここで話されていることに集中できない。1つ質問をして相手がそれに応えて話してくれたら、その話の中にまた疑問点が出る。その疑問を聞くという行為を繰り返していくと、自然なインタビューになる…というような話だった。

実際に質問を1つしか用意しないかどうかは別として、相手の話に集中することが一番というのはその通りだと思う。沈黙はできればない方がいいのはもちろんなのだけど、それよりも恐れなければいけないのはせっかく時間をかけたインタビューが浅いものになってしまうこと。掘り下げが足りないこと。

それでは次の質問に気を取られず、相手の話に集中するためにはどうすればいいのか。

(1)「面白いです」「参考になります」など自分の感想を言う

これも当たり前のことだけれど、取材相手が口を閉じた瞬間にインタビュアーが次の質問を発しなくてはいけないわけではない。話が面白いと思ったら「その話はとても面白いです」と言えばいいし、参考になったら「大変参考になります」と言えばいい。次の質問に移る前に自分の感想を言うと、不思議と気持ちに余裕が生まれる。また、相手にも「今の話を受け止めた」ことが伝わる。

多くの聞き手は、インタビューの後に取材相手から「こんな話で参考になりましたか」とか「まとまりのない話ですみません」と言われた経験があると思う。話す方も話す方で不安はある。いちいち「面白い」とか「参考になった」なんて言うのは大げさでわざとらしいのではないかと躊躇する人もいるかもしれないが(私も以前は少しそう思っていた)、感謝や感動は何度も伝えた方がいいと思っている。感情が表に出にくいインタビュアーの場合は特に。

(2)メモには次の質問や自分の意見を書く

インタビュー中は相手の話したことのメモを取るのが定石だと思う。テープレコーダーをまわさない取材の場合はもちろんそれがメインだけれども、私の場合、どのような取材でも必ず行うメモは、話の途中で感じた疑問点だ。要は「次にしたい質問」を書き留める。これは前の、「次の質問に注意を向けるな」という話と矛盾するように感じるかもしれないが、話の中で感じた疑問点を頭の中で何度も反芻しないでよいように、手元に書き留めておくということ。インタビュー中は焦りもあるのか、絶えず相手の考えが自分の頭の中に入ってくるからか、自分が考えていることをすぐに忘れる。饒舌なインタビュイーが5分間喋り続けると、その中で疑問点や感想は次々に出る。出ては忘れる。話の流れが速いから。なのでメモする。

テープレコーダーをまわしている場合、相手の声はそこに残るが、自分の頭の中で考えたことは残らない。話を聞いたときの第一印象、自分の感想というのも後で記事をまとめる際に割と大事だと思っている。

(3)体験はイメージを思い浮かべながら聞く

取材相手が「私が子どもの頃は…」「〜〜へ旅したとき」など過去の体験を語るときは、具体的なイメージを頭に思い浮かべながら聞く。小説を読むときの気分で。

(4)情報は自分の頭のどこにしまうか考えながら聞く

取材相手が情報や知識について話したときは、それが自分のすでに持っている知識とどう結びつくのかを考えながら聞く。専門書を読むときの気分で。

(3)と(4)は無意識のうちにやっている人も多いと思う。


■話し手は大きく2タイプに分けて考える

話し手はざっくり分けると饒舌タイプと寡黙タイプに分けられる。完全に饒舌、完全に寡黙という人は少ないけれど、どちらかというと〜〜タイプよりと言えると思う。それぞれのタイプの傾向と留意点は次の通り。

(1)饒舌タイプ

「〜〜という経験はありますか?」と質問すると、「ある」という返答とともに、それがどんな経験か、自分はどう感じたか、今後の課題点は何か、社会的課題との共通点などなどまで話してくれるのがこのタイプ。

・饒舌タイプは話がうまく、話慣れているので、一つ質問を投げかけると5分間(もしくはそれ以上)喋り続けてくれる。その話が質問に合致していればいいが、そうではない場合、軌道修正しなければいけない。しかし、話の合間に途切れがないので、質問を素早く挟み込む必要がある。

・その場で聞いているとすごく説得力のある話なのだが、いざ記事にまとめようとすると矛盾点があったり、途中の説明が抜けていたりする。これはライターがその場の相手の雰囲気に呑まれて、細かい部分の確認をしていないから起こること。饒舌タイプの場合、その場では「わかりやすい説明」と感じても、本当にそうなのか注意深くなる必要がある。

・言葉を独自の解釈で使う傾向がある。それはその人のオリジナリティであり、面白いことなのだが、記事をまとめる際に誤解が生じないように確認しておくことが必要。疑問に思った場合は、「それは〇〇という意味ですか?」「言い換えると〜〜ということですか?」と確認を取ったほうがいい。

・重要な情報をさらっと誰でも知っていることのように言うことがある。これはこちらが試されているのかもしれない。「〜〜については〜〜と言われていますが」「もちろんご存知だと思いますが」と言われても、知らない場合は知らなかったと言う勇気を。

・饒舌タイプは沈黙を嫌う。一つの質問に答えた後、間をおかずに質問をしないと、またすぐに話し始めることがある。

・たいがいの場合、早口。早口の人の場合テープ起こしが大変なので、キーワードはたえずメモし続けておくと、テープ起こしがやや楽になる。

・「〜〜についてはどうなのでしょうね?」など、こちらがご質問を受けることがあるが、そういった場合は簡潔に応える。たいがいの場合、長話は求められていない。

(2)寡黙タイプ

「〜〜という経験はありますか?」と聞くと、「あります」とだけ答えて次の質問を待つのがこのタイプ。

・インタビュアーが聞きたいことを慎重に見極め、それ以外の無駄なことは喋らないように気遣ってくれるタイプ。しかし、こちらとしてはまずその壁を取り払いたい、という場合もある。質問を小刻みに重ね、長い文章を喋ってもらえるまで待つ。

・話し終えてから5秒間、10秒間の沈黙の後に、「実は…」「そういえば…」「こういうこともあって…」と話し出すことがある。寡黙タイプが話し終わった後にいったん黙っても、何か考えている様子がある場合は待つことが必要。

・上記を言い換えると「これを話すべきかどうか」と迷っている時間が長いということなので、その様子が見えたときは「その部分、もう少し詳しく聞かせてください」などと積極的に促す。

・「〜〜についての工夫(orメリットor課題点など)はありますか?」と聞くと「ある」とだけ答えるタイプの方なので、「〜〜の工夫について教えてください」と聞くことが必要。

・「その質問についての答えは〇〇です。なぜなら〜〜」という答え方ではなく、「〜〜、〜〜という歴史があります。〜〜という考え方もありますが、私は〜〜と考えます。よってその質問の答えは〇〇です」という答え方をすることがある。このため、喋り始めたときに質問の内容と違う話を始めたのではないか、と感じることがあるが、じっくり聞いて待つことが必要。

・相手が年下で緊張しているように見えても「固くならないでください」「リラックスしてください」などと言うのは逆効果。相手の緊張を解きたいのであれば、「私は今、少し緊張しているのでおかしな質問をしたらすみません」と言う方が有効だと思う。

他にも何か思い出したことがあれば随時追記します。






この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

61

Tamaka Ogawa

ライターの話

6つのマガジンに含まれています

コメント2件

合いの手大事ですねー「はい」でもうなづきでも。起承転結の「起」がインタビュアの質問なら、一通りの「承」の言葉はもらえますね。そこで自分が気に留めたキーワードを「転」としてタイミングよく放り込めれば、言うはずじゃなかった本音の「結」が頂けるかも。^^ドキドキ♪
言うはずじゃなかった「結」、インタビュイー本人も気付いてなかった「結」を引き出せるとインタビュアー冥利につきますね!^^
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。