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memo:日韓女性とフェミニズムの現在地

今年はなるべく行ったシンポジウムとか勉強会のメモを残しておこうと思っています。レポートにも満たないメモだけども。

イベント:日韓女性とフェミニズムの現在地~『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)、『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(タバブックス) 斎藤真理子・すんみ・小山内園子トークイベント~
2019年2月1日@荻窪Title 

チケット即完だったそうです。熱い!

■出演者
韓国で100万部超え、日本でも発売後2日で重版が決まり、現在6万部超えのヒットとなっている小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ)の翻訳を担当した斎藤真理子さん。『カステラ』で第1回日本翻訳大賞を受賞されている。
ツイッターで熱い感想続々の"現代の女性のためのマニュアル本"『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(イ・ミンギョン)の翻訳を担当したすんみさん小山内園子さん。すんみさんは釜山の出身で、早大大学院卒。小山内さんは社会福祉士でもあり、韓国でソーシャルワーカーとして働いた経験を持つ。

■「こんなに反響があると思わなかった」
※以下、イベントの中で私が印象に残った言葉の抜き出しです。敬称略。

(斎藤)こんなに急速に(キム・ジヨンが)売れると思っていなかった。翻訳した本が世に出て初めて、反響からその価値を知ることがあるが、キム・ジヨンの場合が一番そうだった。

(小山内)ソーシャルワーカーとして韓国の女性団体でインターンしていた2007年頃に「男の子を産めなくて」という相談を受けていた(キム・ジヨンの中にもある描写)。韓国では女性の問題について議論を男性からふっかけられるということがあるから『私たちには~』のような本に反応があるが、日本ではどうかなと思っていた。でも発売後、日本でも「こういうことあるある」と声があった。日本ではまだ言語化されていなかったことだからすくい上げてもらって良かった。

■江南事件の影響
(すんみ)江南事件の後、(『私たちには~』著者の)イ・ミンギョンがネット上で「女性差別に声を上げるためのマニュアル本を書きたいから手伝ってくれる人いる?」って募って、それで編集者、デザイナー、校正担当者たちが集まった。寄付は数日で4000万ウォンが集まった。1刷は5000部だったけど、すぐに2刷、3刷と版を重ねた。

(斎藤)(『キム・ジヨン』も)、最初は持ち込み原稿。(韓国で)1万部は売れないだろうと思われていて、シリーズの中では抑えめの部数だった。江南事件の影響は大きかった。
※江南通駅女性刺殺事件……2016年5月17日、江南駅近くの男女共同トイレで20代の女性が殺された事件。犯人は20分以上トイレの中で待ち、数人の男性を見過ごした後で女性を殺した。男性はその後、女性を憎んでいたと告白。ミソジニー殺人だと主張する人(主に女性)と、そうではないと言う人(主に男性)とで議論となった。

■ミソジニストが使う言葉をツイッターで検索した
(小山内)#metooについて韓国は日本に比べて熱いねと言われる。引火する寸前だったのが韓国だと思う(江南事件で女性の怒りに火がついた)。2007年当時のフェミニズムは孤立していた。結婚を諦めた人がフェミニスト、みたいな。今は、「ミニスカート履いていてもグロスを塗っていても言いたいことは言おうよ」。

(小山内)(男性から女性に対する女性蔑視な言葉を翻訳する際にどう訳せばいいかと考えて)ツイッターで、ミソジニーとかセクハラとかクソフェミとかを検索して、そこで書かれている言葉を使った。毒を浴びている感じできつかった(笑)。

(すんみ)翻訳は大変で、8月発売の予定が12月に伸びた。1回訳したのをもう1回やり直したりした。

(小山内)それでキム・ジヨンと発売日が近くなったので良かったかも。

■キム・ジヨンのamazonレビューに出張書き込みする韓国人ユーザー
(斎藤)キム・ジヨンのamazonレビューは、★1と★5が並んで、一晩で20ぐらいレビューが付いたことも。(レビューが荒れたので)書き込みが一時制限されていた。
※韓国のユーザーが日本語でamazonレビューを書き込んだ。小説に批判的な男性(★1)と、小説を支持する女性(★5)の書き込みが並んだ。

■韓国は制度を変える動きが早い
(斎藤)東京医大の(女性や浪人生が一律減点された)問題、教育熱心な韓国からすると「なんだあれは」という感じ。動き方が弱い。

(小山内)韓国は制度を変えるのはフットワークが軽い。男女雇用機会均等法はすでに5回改正されているし、DV禁止法ができるのは日本より韓国のほうが先だった。(ソーシャルワーカーとして韓国へ行くときに)「北欧じゃなくてなぜ韓国?」と言われたけれど、韓国は変えていく動きは早い。

(小山内)一方でこんな面もある。実際に最近、江南駅に行ってみた。最近はもうポストイット(※)もない。現場の近くに行って、あえて「事件のあったトイレはどこ?」って通行人に聞いてみたら、男性の9割は「知らない。なにそれ?」って(恐らくわざと知らないふりをする)。女性は顔を隠してクビを振ったり。何十人にも聞いたけどそう。若い女の子2人は「忘れるしかない、あんな事件」って。(※)女性を追悼するポストイットが構内などに貼られた。

(その後、むしゃくしゃした小山内さんはトッポギ店に入って、お店のおばちゃんにそのことを話したが)おばちゃんも「忘れなよ」「日本でもアメリカでも人は死ぬでしょ」「1人や2人死んだって」って。(制度を変えるなど変化が早い一方で)忘れて置き去りにしていくことについて容赦がない。だから本で残したり発信したりすることが大事(とされる文化)なのかも。

■キム・ジヨンはなぜ泣くのか
(斎藤)キム・ジヨンはよく泣く。(今度日本でも発売される?)『ヒョンナムオッパへ』も、訳しながら「また泣いてるよ」って思った。キム・ジヨンの解説を書いた伊東順子さんに聞いたら「日本の子より韓国の子はよく泣くよ」と言われたけれど。

(小山内)キム・ジヨンが何を考えているかわからない、というのはある。

(斎藤)文芸評論家の方の評で、「この小説が特異なのは、ジヨンの内面を描かないこと」というのがあった。

(すんみ)韓国は上下関係の抑圧もすごいから、ジヨンの年代の若い女性は、(年齢的にも性別的にも)抑圧を一番受けているのでは。なんで泣くか。話す場所がないんじゃないかな。

■「日本の女性は家族から自由なの?」
(小山内)韓国で、DV被害者で子どもも夫の元へ置いてこなければならなかった女性の相談を受けたときに、「どうしても聞きたい。日本の女性は家族から自由なの?」と聞かれた。

(小山内)韓国は徴兵制が人生の中にある(日本とはそこが大きく違う)。やはりそれを抜きにしては語れない部分がある。(韓国の方がフェミニズムが進んでいるのか、理解があるのかなどについて、一枚岩ではないので)一つの方向からは語れない。

■言語化と対処法 『キム・ジヨン』は問い、『私たちは~』は答え
(すんみ)チョ・ナムジュが来日する2月19日のイベントは即売り切れになった。有料イベントが売り切れになったって韓国で話題になっていた。
(※)2月19日に、チョ・ナムジュさんと川上未映子さんのトークイベントがある。斎藤真理子さん、すんみさんも出演。

(斎藤)キム・ジヨンのレビューはいろいろあるけれど、韓国人男性が「樹よ、守ってあげられなくてごめんよ」って。「文学的価値のないこんな本に使われるなんて」という意味(笑)。

(小山内)韓国が羨ましいのは(ジェンダーの問題や、女性が感じるモヤモヤについて)言語化されていること。日本は言葉にすることに慣れていない。韓国は言語化と対処法が進んでいる。

(小山内)『82年生まれ、キム・ジヨン』は問いで、アンサーが『私たちにはことばが必要だ』だと思っている。

(すんみ)合わせて読んでいただければ。

(斎藤)話したくなったり書きたくなったりする欲求に駆り立てられる本。(今日のお客さんには男性もいるが)男性同士で読書会をしたらいいのでは。

■感想
斎藤さんが「泣くこと」について何度か言及していらして、「私たちの世代は女は泣かないという気持ちがあった」というようなことを仰っていたのが印象的だった(このような表現だったどうか記憶が曖昧、違ったらごめんなさい)。少し前に私がした取材で、取材相手の方のお母さん(1960年代生まれ)が「(他の人が泣いているのを見て)私はそれから絶対泣かないと決めた」と仰っていたというのを思い出した。

個人的な印象で何の確証もないけれど、なんとなく、昔と比べて今は「泣くのは"女”を強調するような行為」「だから女が人前で泣くのはあざといし、みっともない」って風潮が薄れているんじゃないかと思った(男にしろ女にしろ、泣くのは恥、みたいなのが昔よりないような気がする。子どもの頃、泣くのは弱い子のすることみたいに叱られたけど、今は泣くこと自体が恥、みたいなしつけってあんまないんじゃないかな?)。

映画の「◯回泣けます!」みたいなコピーはいかがなものかと思うが、悔し泣きにしろ怒り泣きにしろ感動泣きにしろ嬉し泣きにしろ、鈍感なのかあまりそこに何かを思わない。なので、キム・ジヨンがよく泣くことについても、気づいてなかった……。ももクロ「泣いてもいいんだよ」(作詞作曲:中島みゆき)をたまに聞きます。泣いて~もいいんだよ~、そ~りゃ!

あと、最後の会場からのQ&Aで、「『キム・ジヨン』や『私たちには~』を男性に勧めたいけど、説明を求められるんじゃないかと思って……」と言っていた女性参加者の言葉について、その後に喋った男性が、「渡す段階で躊躇があるんだなと、それが発見だった」と仰っていて、

あるよ。
あるよ!
躊躇あるよ~~~!!!! あるやろがい!!!!!

って、せやろがいおじさんになりたくなった。

■告知やろがい!
2月19日(火)のイベントが満席だそうで!

2月17日(日)にもイベントがあるんやで! 来てね!

14時~15時30分
『私たちにはことばが必要だ』著者来日記念@青山ブックセンター

韓国・日本 女性たちは声をあげ始めている
イ・ミンギョン × 小川たまか トークイベント
http://www.aoyamabc.jp/event/min-gyeong/



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Tamaka Ogawa

ヤフーニュース個人:小川たまかのたまたま生きてる https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/

2019年に行ったイベントのメモ

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