思ってたんとちゃう気配

お化けは怖いけれど、お化けの存在は割と信じている。以前の記事(場所の気配)で書いたようなことが実際にあったから、というのもあるんだけれど、もっと単純な理由は「いた方が楽しい気がするから」だ。いや、実際に見たり感じたりするのは怖いから嫌なんだけど(怖いお化けじゃなければいいんだけど)、目に見えない世界がないよりもある方が、なんか楽しい気がしている。この世の中に自分の想像もできない世界があると思っていた方が楽しくないでしょうか。いや、それは人によって違うか。

うちの母はお化けをまったく信じない人で、子どもたちがいくら「夜中に居間で誰かが手を叩いてるよ。怖いよ」と言っても信じてくれなかったし、今でも信じてない。母はたぶん、目に見えない世界があることが楽しくないタイプの人なんだと思う。

夏に沖縄に旅行したときのこと。斎場御嶽(せーふぁうたき)と、そこからフェリーで30分ほどで行ける久高島にも行った。久高島は「神の島」とも言われる島。島全体が聖域と言われていて、立ち入り禁止の区域もあったりして。Wikiで今調べたら岡本太郎さんがむかーし一悶着起こしたらしくてびっくりした。で、そんな島だからせっかくだし……ということで、友達が「スピリチュアルガイド」さんを手配してくれた。

斎場御嶽と久高島を案内してくれる個人ガイドで、普通のガイドさんと違うのは「おつなぎタイム」があること。ツアー中のタイミングのいいときに、自分の守護霊か、パワースポットの神様か、他界した人か、いずれかと「おつなぎ」してくれるというのである。

「おつなぎ」というのは聞いたことないが、占いしてもらうのと同じようなものじゃないの?という気持ちで軽く申し込んだ。インターネッツでさくっと申し込んだものの、友人と私はツアーが近づくにつれ不安になった。「ガイドさんとは1日中一緒にいるわけだし、もし変な人だったらどうしよう」と。なんか白いお札とか数珠とかで背中をバンバン叩かれたりしたらどうしようかと。

が、その心配は無用だった。当日現れたのは、小さくてかわいらしい女性Rさん。顔がチワワみたいに小さかった。斎場御嶽を歩きながら「聖地に入るときは、心の中で神様に挨拶しましょう。自分の名前とどこから来たかを言ってください」というような説明を聞くうちに、妙に信心深い気持ちになって、Rさんがいったいどんな人なのか、なんで「おつなぎ」をできるのか興味津々になった。

久高島に着いてから聞いてみたら、Rさんは「物心ついたときから、目に見えない人たちと遊んでいました」と言った。子どもの頃、保育園で先生から「ずっと一人で遊んでるのね」と言われて、びっくりして「一緒に遊んでるよ」と振り返ったら、今まで一緒に遊んでいたはずの「人」たちがいなかった。自分の見えるものが人には見えないことを知ってさみしかったのだそう。でも、Rさんの住んでいた地域は子どもたちはみんなお清めの塩を持っていたりするような慣習があったりして、割とそういう話に理解があった、とも言っていた。

10代の前半から「おつなぎ」をしていて、そのきっかけは見えない人から急に呼び止められ、お願いをされたこと。「〜〜を××という人に伝えてください」というようなお願いをされるんだそう。Rさんが「つなげる」人だからそうやって話しかけられるのだが、車を運転しているときでも、急に“呼び止められる”ことがあるという。いろんなお願いを聞いていろんな人に会いに行ったりしているうちに、次第に生きている人からのおつなぎ相談も受けるようになった。

面白かったのは守護霊の話。守護霊は一人につき一体ではなくて、人によっては何体もついていたりする場合があるんだという。生まれたときからついている人もいれば、何かの拍子でパワースポットからついてきて、守護霊になってくれることもあるんだそう。守護霊の多い人と少ない人は何が違うの?と聞いたらば、Rさんは「私の感覚では、守護霊の多い人は人望が厚い人が多い気がします」と言った。

いいな、守護霊が多い人。芦田愛菜さんとか、年の割に人間が完成し過ぎている人って「一体人生何回目なんだ」と言われたりするが、ああいう人って守護霊が多いんじゃないだろうか。守護霊は応援団。

で、Rさんははっきり言わなかったが、話を聞いているとRさん自身も守護霊が多いらしかった。どんな会話をするのかと聞いたら、「いろいろですけど、料理とか」と言う。

たくさんいる守護霊はそれぞれに担当があって、料理担当の方は「何を食べたらいいか」とか「その食材ならこんなレシピがある」って教えてくれるし、衣料担当の方は「どんな服が過ごしやすいか」「どこに行けば買えそうか」とか教えてくれると。……なんだそれは。私が思ってた守護霊と違う。超便利。実用的。グーグルみたい。でもなんか妙な納得感があったのはRさんの服装で、彼女は8月の沖縄なのに長袖の上に動きやすそうな半袖膝丈のワンピースを着て、さらにスパッツを履いてた。肌を覆ってるから日焼けしないし、虫にさされないし、速乾性があるからと言って海にもそのまま入っていた。それで汗一つかいてなかったから暑くもない素材なんだろう。あんな便利な服がいったいどこに売っているのか謎です。

思ってたんとちゃう!っていうのは他にもいろいろあって、ひとつは「テレビとか写真とか、インターネットを通してでも霊から交信があるんだよ」という話をRさんがしていたとき。私たちが「テレビから出てくるなんて貞子みたいだね」とか言っていたら、Rさんは「貞子はかわいいよ。怖がらせようと思ってああいう演出にしているだけだからかわいい」とニコニコ笑い、続けて「本当はあんなにゆっくり動かないよ。光みたいな速さ」と言った。思ってたんとちゃう。

それから、斎場御嶽を歩いたとき。外国人観光客が触ってはいけない石の上に座っていて、それをRさんが注意していたので、私が「やっぱり神様が怒るから?」と聞いたらRさんは「神様は怒らないよ」とひと言。「石が崩れたりしたら危ないから声をかけただけで、神様は怒らない」と。

「え、じゃあ神様が人間に罰をあたえたりこらしめたりすることはないんですか?」と聞く私たち。でもRさんは「罰?」と、質問自体がよくわからない顔をした。何度か言葉を変えて質問したら、「悪い気持ちでわざと聖地のものを破壊したりしたら、戒めみたいなことはあるかもしれません」「でも神様は怒らない」って。

私たちはRさんのガイドをとても楽しんだ。中でも思ってたんとちゃう体験が楽しかった。Rさんが「初めてここに来たときは天国だと思いました。大好きです」と言う久高島にも絶対また行きたいと思っている。が、知人友人たちにこの体験を話したりすると、やはり半信半疑な人が多い。きっぱりした性格のMとかに至っては、完全に興味のない顔での「へえー」ひと言のみだった。我々の乏しい語彙と話術では、あの霊験あらたかな気持ちをうまく伝えられないということもあるんだけれども。まあ自分が楽しかったからいいのいいの。信じる信じないはあなた次第です。



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Tamaka Ogawa

気配の話

コメント1件

おもしろい!すごい!貴重な、美しい体験談をありがとうございました!
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