共感ってそんなに軽んじられる話ですかね、という話

女性をマネジメントなんちゃら、という記事が炎上していていましたね。あれをきっかけに、常々思っていたことを少々。恐らく多くの賢い男女にとっては当たり前田のクラッカーな話だと思うけれど、書かずにはおれん。

「(女性は)解決しなくても共感してくれればいいと思ってる意味不明な生き物」というやつ。耳が腐るほど言い古されている言説です。男性は解決策を提示しているのに、女性はそれでは納得しない。共感があればいい。女性の悩み相談って、ただ愚痴を聞いてほしいだけなんですよねー(笑)みたいなの。

性別によって思考が違うかどうかというのはこの際横へ置いておいて、言いたい。「共感」が大事じゃなぜいけないのか。共感よりも解決策が大事だなどと、なぜ言えるのか。

仕事で、マネジメントや人材育成の成功モデルになっているような会社によく取材に行く。繰り返し聞くのが「制度だけではダメ」だということ。制度は、それを使える企業風土とセットでないと機能しない。有給休暇を日本人はみんな使わないですよね。制度上では使っていいのに、使える雰囲気がないから使えないわけで。男性の育児休暇も、制度があって「使おう!」と建前では奨励されているのに取得率が2%とか。使いたい男性たち、夫に使ってほしい女性たちに対しての共感がないからですよね。制度(解決策)とそれを使える雰囲気(共感)、どちらも必要、車の両輪、どちらか一方では絶対ダメ。そんなことはうまくいっている会社の人がみんな心得ていること(今はさらにそこから進んでるのかもしれないが)。そしてどちらかというと、制度作りよりも雰囲気作りの方が難しい。

そもそも「解決策を提示している」っていうけれど、それは当事者の心が動くような解決策なのかどうか。人の置かれている状況に対して真摯に耳を傾けることなく、いや傾けたとしても、ベストな解決策を示すのってなかなか難しいことなのではと思う。

たとえば、いじめ問題について最近主流の解決策は「逃げていいんだよ」というもの。昔の「立ち向かえ!」とかよりは大分ましだと思うけれど、逃げていいと言われても逃げられない、ということがあるんですよね。星井七億さんも書いている。

いじめられっ子が逃げない理由

私は性犯罪について取材することも多い。痴漢問題については性別で議論がすれ違いやすいところで、その一つに、性犯罪に遭った恋人や家族に対して、(主に)男性が「性犯罪に遭わないためのアドバイス」をしてしまうというものがある。この危険性については、弁護士の山下敏雅さんのブログ「どうなってるんだろう? 子どもの法律」が参考になる。

彼女が電車で痴漢に遭った

一部を引用すると、下記の通り。

 電車に乗る時間を変えるとか,女性専用車を使うようにするとか,そういうアドバイスは,今後痴漢に遭わないようにするためには,たしかに意味のある対策かもしれません。
でも,今回彼女が痴漢に遭ったのは,彼女のせいではありません。悪いのは,痴漢をした犯人のほうです。
相手に共感する言葉がないままのアドバイスだと,それを言われたほうは,「痴漢に遭ったのは,そうしなかった自分の落ち度だ」と,責(せ)められているように感じられることがあります。被害じたいで傷ついているのに,身近な人の言葉で,さらに傷ついてしまうのです。

当事者でない人からのアドバイス。有効なこともあるかもしれないが、「正直、何の役にも立たん」「むしろマイナス」ということはある。上司と部下、親と子、夫と妻といった関係において、相手の状況を斟酌しない一方的なアドバイスは果たしてどれほど有効なのか。使えないアドバイスをドヤ顔で提示されるぐらいであれば、「わかるわかるー」の方が千倍ましじゃないか。犬山紙子さんの発明した「クソバイス」という言葉は、実に実にナイスですねーと思う。

さらに別の角度から言えば。昨年カウンセリングを受けたのだが、その際に男性の心理カウンセラーから言われたことのひとつは、「相手を受け止めること(自分が受け止められること)の重要性」だった。彼の言っていたことを思い出してみると、こんなやり取りだったと思う。

「たとえばね、あなたの夫が帰ってきて会社の愚痴を言うとするでしょう。どうしたらいいと思う?」

「まず聞いてあげる」

「そう。聞いてあげるだけでいいんです」

「アドバイスとかは?」

「アドバイスは毒。不要です」

「わかるわかるー、みたいな共感は?」

「アドバイスよりはましだけど、共感も絶対に必要なことではない。ただ聞いてあげるだけでいいの。それが受け止めるということだから。受け止めるというのは、相手がどうであっても受け止めるということ。アドバイスは、自分の思っている方向へ人を導こうとすること。相手がアドバイスに従わなかったときは受け止めないということの裏返しにもなります。共感は、あなたが本当に共感するなら『わかるわかる』と言えばいいけれど、そう思っていないのに言う必要はない。無理な共感は、あなたにとっての負担になるからです」

私の解釈なので100%合っている自信はないが、こういった内容のことを話してくれた。これは夫婦間だけでなく、親子でも同じこと。

こんなこともあって、私はアドバイス(解決策)を絶対に信頼の置けるものと考えていない。むしろ、どんな問題についても解決策があり、一方的な解決策を提示すればそれで安心と考えている人に危うさを感じる。解決策重視で共感をないがしろにしがちな人は、自分や身近な人を傷つけないうちに一度カウンセリングに行ってみたらいいとすら思う(日本人はもっと気軽にカウンセリングを利用するべきと言われるし)。

古今東西の小説や現代の日本の漫画。いろんなテーマが描かれているけれど、深い問題であればあるほど、シンプルな解決策が提示されているものはなかなかない。解決策が提示されていなくても、人は小説や漫画を読む。そこに描かれている悩みが自分と同じだと知ってホッとする。自分の存在確認をする。受け止めてもらった気がする。そんな経験が、軽んじられるわけがないでしょうが。ということです。




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Tamaka Ogawa

心の中の話

20歳以降、自分がどんな育ち方をして今に至ったのか考えることが増えました。
2つのマガジンに含まれています

コメント6件

私を含めて男性諸氏はこのこと(問題解決ではなく問題の傾聴)に気が付いていないことです。遅まきながら63才になって気が付きました。女房殿の言動が少しは理解できるようになった今日この頃です。Tamaka Ogawa さんの主張が男性諸氏に広まることは大きく言えば地球の平和・慈悲に繋がると思います。繰り返しのご主張を期待しております。
「あなたがいるなら辞めます」って二人に言われたのに何も気がつかなかったんだろうな……そこ、上司の立場としてどうなの?って思ってました。そういうことは、部下が女性だから言ってもらえたのかも……なんて。
盲点でした。まず共感ありき、解決策は求めているときのみ、ってアプローチが必要なのかもしれないです。
僕は男性ですが、共感が必要だと感じます。
遠くから見ると、あんまり合わないのに夫婦やカップルという"見栄"の為に一緒にいる場合(そういう面がちょっとある場合)、こういうことになりがちな気がします。
男は共感を同性の同僚や友人から調達し、女性は孤立してしまうことが多々あるような...最近は変わってきたのか...?
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