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『フォースと共にあらんことを』映画からみる分子生物学の世界。

朝晩の空気がひんやり冷たく、ようやく秋を感じるようになりました。秋の夜長、ついつい映画や読書で夜更かししてしまいがちな今日この頃。自律神経失調症が改善されたことをきっかけに興味を持った分子生物学の世界。連載マガジン「からだのおはなし」シリーズ、本日は有名な映画から分子生物学の世界をのぞいてみたいと思います。

過去の連載はこちら↓

スター・ウォーズ『フォース』の源とは。

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TOP画像をご覧の通り、映画のタイトルはスター・ウォーズ。小学生時代、ライトセーバーを振り回して遊んだことを思い出します。そのライトセーバーを操るのに必要な力が「フォース」。ファンの方ならご存知だと思いますが、フォースの源になっているのがミディ=クロリアンという微小生命体。人の細胞内に共存していて、このミディ=クロリアン値がフォースの潜在能力と関わっているという設定です。

本題ですが、エネルギーの源の名前がなぜ「ミディ=クロリアン」なのか。先日、生物学者の福岡伸一さんの動的平衡という本を読む中で、その事実を初めて知りました。なんと、私たちの細胞に実在する「ミトコンドリア」が語源になっているのです。

ミトコンドリアとは。

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中学理科あたりで聞き覚えのある「ミトコンドリア」。上図左が細胞で黄緑がミトコンドリア、右が拡大したものです。枝豆の断面図ではありません。人の体は40〜60兆個の細胞が集まってできており、その細胞一つひとつにたくさんのミトコンドリアが存在しています(多い場合ひとつの細胞に数千個)。60兆個の中にさらに数千、ということで本の中で福岡さんは「おそらく京という単位の、おそろしく膨大な数のミトコンドリアが棲息していることになる。」とおっしゃっています。「存在」しているじゃなくて「棲息」と表現されていますね。

ミトコンドリアの働き。

私たちの体の中にうじゃうじゃ棲息するミトコンドリアですが、その役割は「エネルギー生産」です。体を動かす、頭を使う、心臓を動かす、消化吸収する、代謝する、私たちはすべての生命活動においてエネルギーが必要で、そのエネルギーはATPと呼ばれる分子に蓄えられています。ATPはミトコンドリアの中でエネルギーの材料である糖質や脂質から酸素や補酵素を使ってつくられています。ミトコンドリア=発電所、ATP=電気、みたいなイメージですね。このあたりのおはなしはこちらをご参照ください。

ミトコンドリアは人とは別の生命体。

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片時も休まずせっせこATPエネルギーを作ってくれているミトコンドリア。太古は自律的な細菌で海中を泳いでいましたが、あるとき大きな細菌に食べられてしまいます。そこで、奇跡的な共存関係が生まれたのです。もともと備わっていた酸化能力を使ってATPエネルギーをつくり、大型細菌へ供給。大型細菌はミトコンドリアのもとになった小型細菌に必要な栄養素を分け与えることで共存することに成功したのです。そして大型細菌はATPエネルギーを得たことで爆発的に進化を遂げたのです。ミトコンドリアなくして人類なし!

ということで、私たちの体にはミトコンドリアが存在する、というより棲息しているという表現がしっくりくるのです。ミディ=クロリアンの説明も「細胞内であらゆる生物と共生している微小生命体」と、別の生命体として描かれています。ちなみにスター・ウォーズの中で一般人のミディ=クロリアン値が2500程度なのに対し、アナキン・スカイウォーカーは2万を超え、ヨーダをも上回るそうです。すごい。

ATPなくして健康なし。

ミディ=クロリアンを知ると、ミトコンドリアがたくさんいればエネルギーがたくさん手に入る!と思えますが、実際はそうではありません。ミトコンドリア発電所の発電効率を上げるためには酸素はもちろんビタミンB,C,E,鉄など様々な栄養素が必要です。ここでいう発電効率とは物質を分解してエネルギーを得る「代謝」と言えます。

◆ATPエネルギー生産に必要なもの
(1)エネルギーの材料=糖質、脂質
糖質はエネルギー源として有名ですが脂質もエネルギー源となります。糖質も脂質も不足しているときはタンパク質もエネルギーの材料に。
(2)代謝酵素=タンパク質
代謝を進めるのに必要なのが代謝酵素。代謝酵素があると300年かかる化学反応が1秒でできるそうです。そして代謝酵素は何でできているかというと、タンパク質。あらゆる栄養素の中で最も大切な栄養素で人の体はタンパク質でできています。とても大切なので興味のある方はこちらをご参照ください。

(3)補酵素=ビタミン、ミネラル
酵素の中には酵素単体で化学反応が完結するものもあれば、補酵素であるビタミンやミネラルがないとうまく働けない酵素もあります。糖質の代謝においてはビタミンB群の中でも特にB1が必要で不足するとどれだけ糖質を摂取してもわずかなATPエネルギーしかつくられません。十分な酸素を得るために、酸素を運ぶ鉄も必要。酸素を運べても細胞膜が酸化していてはうまく酸素や栄養素をミトコンドリア内に取り込めないので活性酸素除去作用のあるビタミンCやEも重要です。細かく話し出すとさらに長くなるので興味のある方はマガジンの各栄養素をご覧いただければ幸いです。

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現実世界にあてはめるとフォースを使うには莫大な糖質、タンパク質、補酵素が必要そうですね。余談はさておき、ここで普段の食事を思い返してみたいと思います。ご飯、パン、麺、お菓子・・・糖質のオンパレードになっていないでしょうか?特に普段から甘いものが欲しくてほしくてたまらない方はATPエナルギーが不足していて重度の鉄・タンパク質不足。私の場合、自室神経失調症が原因のPMS(月経前症候群)でイライラ、胃腸不調、甘いもの欲がひどかったのですが、底糖質食、プロテイン、キレート鉄、ビタミンB、C、E、ナイアシンで改善できました。

マガジン「からだのおはなし。」では実際に試している藤川徳美先生の栄養療法について実体験をもとに記載しています。男女問わず、何かしら体の不調を感じている方はぜひ試していただきたいと思います。フォースと共にあらんことを!

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<参考文献>
福岡伸一(2009)『動的平衡』木楽社

<参考サイト>
スター・ウォーズの鉄人!「ミディ=クロリアン」
http://www.starwars.jp/wiki/%E3%83%9F%E3%83%87%E3%82%A3%EF%BC%9D%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3


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