俗悪にアグラかく

悪書追放運動の記憶と今日的展開

Twitterなどでは、マンガ性表現のあり方などを巡って、かなり激しい泥沼の論争(というよりは罵り合い)が続いているわけですが、どうやらその中で、悪書追放運動で手塚マンガがヤリ玉にあげられたなどというのは表現規制反対派による誇張である、といった趣旨のご発言があったようです。

さすがにこの発言は放っておけないということで、普段はこの手のネット論争とは距離を置いている人たちからも、「それは実際に起きた事件ですよ」と様々な資料を紹介するtweetが相次いでいます。

そんな中、手塚治虫さんの娘である手塚るみ子さんも、黙っているわけにはいかないとお考えになったようで、手塚治虫オフィシャルサイトのライブラリにあるコラム『手塚マンガあの日あの時 「手塚マンガが悪書だった時代」』のリンクをtweetしていらっしゃいました。
https://twitter.com/musicrobita/status/1066482672132796416

こちらのコラムは、昭和20年代30年代を中心に、マンガ排斥運動・悪書追放運動の歴史を追いつつ、それに手塚治虫をはじめとするマンガ家たちがどう立ち向かったかを紹介するもので、文献資料も豊富に示され、よくまとまった構成になっています。(トップ画像はコラムの中でも引用されていた「日本読書新聞」昭和31年10月15日号より引用)
https://tezukaosamu.net/jp/mushi/201005/column.html

ところで、このコラムを執筆したライターの黒沢哲哉さんの著書『あの日のエロ本自販機探訪記』が、今年3月に滋賀県で有害指定を受けました。こちらの本は、平成初頭の社会環境浄化運動の中で、図書の自販機がどのような経緯で地域から消えていったかを追いかけたルポルタージュです。
https://book.asahi.com/article/11758601

昨今では、こうした有害図書論争を追いかける評論活動までが、有害図書制度や社会的圧力によって規制・妨害されるという事例も相次いでおり、こうした社会状況を打開していく必要もあると感じているところです。

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