見出し画像

おいしいデザインを食べつくせ。 - 『DESIGN GASTRONOMY 〜 おいしくつくるデザイン』 #02


料理をネタにおいしいデザインのつくり方を紐解くマガジン、『DESIGN GASTRONOMY 〜 おいしくつくるデザイン』第二回目です。


そ の デ ザ イ ン 、 お い し い ?

良いデザインをつくるために、基本の基本、かつ最も大切なこと。

それは、良いデザインであるかどうかを見極める眼、「審美眼」であると言えると思います。おいしい料理をつくるために、おいしさがわかる「舌」が必要なように、良いデザインをつくるためには、良いデザインかどうかを見極める「審美眼」が不可欠。

でも実際、駆け出しデザイナーや、ダメなデザインによくある典型パターンが、

おいしいかどうか、自分でもわからない… (ノ∀`)タハー

という状態。料理人で言うと、「舌がバカ」状態でデザインをしてしまっている状態。どうして、そんなことになってしまうのか?「審美眼」を身につけるには、高めるには、どうすれば良いのか?

『DESIGN GASTRONOMY 〜 おいしくつくるデザイン』第二回目は、この「審美眼」について書いてみようと思います。


お い し い デ ザ イ ン と は

まず、話の土台として、「おいしいデザイン(良いデザイン)」とは何かを紐解いておきたいと思います。

デザインには、大きく分けて三つのレイヤーがあります。

■ 1. コミュニケーションのデザイン
■ 2. 構造のデザイン
■ 3. 装飾のデザイン

「 1 > 2 > 3 」の順に重要度は高く、デザインもそのプロセスで進める必要があります。


■ 1. コミュニケーションのデザイン

「誰に」「何を」「どう」伝えるか、というコミュニケーション設計の一番基礎の部分。「デザイン」と書いていますが、ここでは抽象化し精度と純度を高めるために、コピーだけで定義するくらいコンセプチュアルな形が良いですね。何のための、何を実現するデザインなのか、デザイン全ての指針になるものです。

e.g. 料理では…、誰のためにどんな料理にするか = メニューの決定

■ 2. 構造のデザイン

「1. コミュニケーションのデザイン」に沿って、具体的な構造を考えます。大きな強弱関係や、コミュニケーションの順番、細かなコピーワークなど、アウトプットとしてはワイヤーフレームの状態です。「1.」で考えたコミュニケーションが、正しい順番・正しい強弱で伝わるための、構造の設計。実は、デザインという意味では、ここまでで勝負はほぼついているようなものです。

e.g. 料理では…、どんな素材でどう調理するか = レシピの決定

■ 3. 装飾のデザイン

「2. 構造のデザイン」まで終わったら、最後にようやく表面的な意匠の検討に入ります。装飾に価値が無いわけではないですが、あくまで「1.」「2.」までのプロセスの仕上げに存在するもので、「1.」「2.」無くして「3.」だけが先行することはありません。

e.g. 料理では…、実際の調理〜盛りつけ = 実調理


シンプルに定義すると、上記の三つのレイヤーをきちんと順番どおりに満たしたデザインが「おいしいデザイン(良いデザイン)」と言えます。


よくある失敗例として、「3.装飾のデザイン」ばかりに目が向く結果、何を実現するためのデザインなのか曖昧で、表面的なデザインだけが迷走し続ける → デザインが決まらない → ひっくり返り続ける、みたいなことがありますが、常に上記の「 1 > 2 > 3 」のプロセスを意識してデザインを進めれば、失敗は減らしてゆけそうに思えます。

けれど、実際は頭ではわかっていても、なかなかうまくいかない、力がついてこない、いつまでもダメ出しされる、といったことが起こりがちです。「審美眼」を高めるのはなかなか難しい、どうしたらいいのかわからない、という声もよく聞きます。

そこで、もう一歩踏み込んで考えてみます。


デ ザ イ ン は、 食 べ 放 題

ここで、ちょっと料理の世界に目を向けてみましょう。

料理の世界も、デザインの世界と同じか、もしくはそれ以上に厳しいプロフェッショナルの世界ですが、その中でおいしい料理をつくるために、「舌」を鍛えていく必要があるのは言うまでもありません。でも、おいしい料理というのは、素材も調理も一流であればあるほど、値段も高く、触れられる機会も場所も限られ、駆け出し料理人が舌を肥やすために量や種類を食べるのには、なかなか高いハードルがあります。調理中の味見や日々のまかない、そんな小さなきっかけを最大限活用して、少しずつ修行の中で自分の「舌」を育てていくしかありません。

振り返って、現代のデザインの世界はどうでしょうか。

なんと、「 デ ザ イ ン は 、 食 べ 放 題 」なのです!

なんということでしょう (ノ∀`)タハー

一般に流布しているデザインに始まり、様々なコミュニティに日々アップされるデザインやアイデア、全てが現代のネット社会では無料で食べ放題です。ノウハウだってチュートリアルだって溢れるように存在しています。しかも、一流のデザインであればあるほど、触れる機会も味わう機会も多いと来ています。料理と比べ、なんと幸せな世界なんでしょう。

つまり、「 審 美 眼 、 育 て 放 題 」とも言えます!!

なんということでしょう (ノ∀`)タハー

まずは、この幸せを実感して、あらゆるデザインを浴びるように見ることが大事だと思います。

それこそ、朝から晩まで、ギャラリーサイトでもPinterestでもBehanceでもdribbbleでも眺め続けて、良いデザインをひたすらインプットしちゃえばいいんです(むしろ、先程の料理の世界との対比で、良いデザインに好きなだけ無料で触れられることが楽しい!幸せ!くらいは思えないと、デザインの仕事は向いていないとも思います)

まずは、この幸せなシチュエーションを、最大限活用しましょう。

ここの総量・熱量が足りていない人、意外と多いと思います(それは単なる努力不足)


デ ザ イ ン の 食 べ 方

さて、「 デ ザ イ ン は 、 食 べ 放 題 」と言うものの、玉石混交、ただ無心に食べまくるだけでも、「審美眼」はなかなか身につきません。

仕上げに、「 デ ザ イ ン の 食 べ 方 」について書きたいと思います。

また料理を例に出しますが、

美味しい料理を食べた際、単に「あぁ、美味しいなぁ…」という感想を漏らすだけでは、料理人としてダメなことはわかると思います。プロであるなら、常に「再現性」を意識しないといけない。素材・味付け・調理法・盛り付け、その他もろもろ「つくり手」目線でその料理を見つめないといけない。何がその料理の美味しさを形づくっているのか、そこを見極めて自分のものにしないといけない。

そして、自分の好きな料理ばかり食べていてもいけない。色んな人の色んな好みに応えるために、好みでない料理でも積極的に味わって自分のものにしていかないといけない。

デザインも、全く一緒です。

そのデザインは、どこが良いのか?何を解決しているのか?その効果を生んでいる具体的な手法は?デザインの隅々まで分析し、咀嚼して、自分のものにしないといけない。それが「審美眼」を育てるということです。

その際に、先程の「おいしいデザイン(良いデザイン)」の三つの視点が役に立ちます。デザインを見る時も、同じステップで進めていけば良いのです。


1. コミュニケーションのデザイン

誰に、何を伝えようとしているか?それは伝わりやすいか?理解しやすいか?優れているか?

2. 構造のデザイン

どんな言葉で、どういう情報構造で、どう設計されているか?その構造は適切か?強弱は適切か?

3. 装飾のデザイン

どこがどう優れているか?新しい表現か?印象的か?コミュニケーションに効果的に働いているか?


こんな風に、おいしいデザインを、きちんと咀嚼しながら味わう、自分のものにしていく、自分の中にデザインのレシピを蓄積していく、そうしていけば自ずと「審美眼」は磨かれていくと思います。


お い し い デ ザ イ ン を 食 べ つ く せ

以上、

今回は主に「審美眼」の身につけ方、高め方について、書きました(予想外に長くなってしまいましたが)

色々書きましたが、

★ 良いものをつくるには、良いものに触れるのが一番
★ 現代は、良いデザインに触れやすい
★ だから、いっぱい良いデザインに触れて、しっかり自分のものにしようね
★ そうしたら、審美眼なんてぐんぐん伸びるよ
★ デザインも、できるようになるよ

ってことですね。

まとめたらめっちゃシンプルやん (ノ∀`)タハー


次 回 予 告

次回から、もっと具体的なデザインの進め方を書いていこうと思いますが、最初に、クリエイティブやデザインの仕事の、現場での心得みたいなものを、戦場のような厨房の風景になぞらえて書いてみようかなと思います(ちょっと精神論とか仕事論ぽくなっちゃうかもしれないけれど)

題して、


厨 房 は い つ だ っ て 戦 場 だ 。

 『DESIGN GASTRONOMY 〜 おいしくつくるデザイン』 




たぶん、ちょっとしたおつまみに化けます。