セルフブランディング

セルフブランディングは、なぜ「痛い」のか

 自分でも挑発的なタイトルだと思いますが、知り合い以外はあまり読んでないからいいでしょう。どうも、オグチです。マーケティングの本を書いていたりします。

 さて、「セルフブランディング」とは何でしょう。ざっくり言うと、個人が自分をメディア化、プロモーションすることで、ビジネスその他で優位に立とうとする方策のことです。インフルエンサーになること、に近いですね。

 書店に行くと、セルフブランディングをすすめる自己啓発本もたくさん並んでいます。しかし、どうでしょう。身の回りにセルフブランディングによって成功したって人、います? むしろ、頑張ってる姿が痛々しいと思うことの方が多くないですか? セルフブランディングの必要性を感じている人でも、「ああしてまで自分を売り込みたくないわー」って引いちゃってるのが実情だと思います。

 なぜセルフブランディングが「痛い」のか。原因は大きく2つあります。

 ひとつ目は、「自分を実力以上に盛っているのがバレバレだから」です。成功しているように見せたい、人から評価されているように見せたい。実際にそう見てもらえれば成功ですが、「見せたい」が前面に出ていて、逆に実力、実態のなさが浮き彫りになってしまっている。典型的なのは、意識高い系の若者ですね。言っていることの勢いはあるけれど、完全にスベっている。若ければまだ許せますが、30歳、40歳過ぎてやられると、かなり厳しく、友達も距離を置くようになります。完全に逆効果。

 セルフブランディングが痛いと思われるもうひとつの理由は、「個人をアピールするのは日本の文化に馴染まないから」です。よく言われることですが、同調圧力が強く、出る杭が打たれやすい文化です。これは小学校ぐらいから見られます。欧米の学校では、積極的に自己をアピールすること、主張することを良しとしますが、日本では嫌われます。帰国子女が日本の学校に入るといじめられる理由です。

 昔よりはマシになっているのでしょうが、日本では集団内部に貢献した人は評価されますが、個人として突出しようとするのは否定的にとらえられます。「和」の国ですから。アメリカには、元大統領の名前を冠した空母「ロナルド・レーガン」がありますが、あれ存命中に命名されたんですよ。日本ではあり得ないでしょう。海外には個人名から名付けられた大学や都市が多くあります。日本にも、東郷平八郎を祀った東郷神社とかありますけど、あれは亡くなった後に建てられたものですからね。死なないと許されない。名前を売ることに拒否反応が強いのです。イチローも国民栄誉賞を辞退したりして、ああ日本人らしいなぁと思います。

 文化的な背景を話し出すと長くなるので、もうやめますが、そんなわけで特に日本においてセルフブランディングは難しいのです。とはいえ、今の時代、個人を評価してもらえないと、仕事でもプライベートでもツライ状況に追い込まれてしまうのも事実です。そして実は、セルフブランディングだと思われない方法でセルフブランディングが成功している事例はけっこうあります。

 今後機会があれば、それらをご紹介しようと思いますが、とりあえず今回は「痛い」理由をお話ししました。


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