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ジョン・ミューアトレイルに憧れて

憧れというものは誰もがもっていると思う。「いつかここへ行きたい。」「このような人になりたい。」「このような人生を送りたい。」他の人からしたら大したことではないかもしれない。多くの人が成し遂げたことかもしれない。でもそれがその人にとって長年憧れたことであり、時が経ち実現できるのであれば、それが何であれ、夢のような幸せな時間なんだと思う。

ジョン・ミューアトレイルをご存知だろうか。これはアメリカ・カリフォルニア州にある、ヨセミテ渓谷からマウントホイットニーまでの340kmに及ぶロングトレイルだ。

私がこのトレイル知ったのは2年前のこと。2017年10月はじめ、カナダで出会った友人達と、アメリカ・カリフォルニア州の国立公園を旅した。そのひとつヨセミテ国立公園は、故・スティーブ・ジョブスが結婚式を挙げたことでも有名である。一枚岩の花崗岩としては世界最大のエル・キャピタンがあり、クライマー憧れの地としても知られている。

“住んでいた”カナダからの“旅行”。久しぶりの旅にテンションが上がり、私たちはまずヨセミテ国立公園のお土産コーナーを見に行った。そこでこんな言葉が書いてあるカップに出会った。

Mountains are calling, and I must go. -Jhon Muir-

色んな和訳があると思うけど、私は「山が呼んでいる、行かなければ。」と捉えた。

なんて素敵な言葉なんだろう。山に呼ばれるという感覚。言葉では表せないけど、何故か分からないけど、ここへ行こうと思った、そんな経験ないだろうか?私は山でも旅でも、何回かある。

こんな素敵な言葉を残したジョン・ミューアさん、そして彼の名前が付いたトレイル、すごく気になる!そう思ったのがきっかけだった。

当時一緒に旅をしていた友人の1人がロングトレイルに精通していて、ジョン・ミューアトレイルの存在を知っていた。

聞くと、大人気のアメリカのロングトレイルで、踏破には約3週間。自然を守る為に入山規制があり、事前予約の許可証はすぐに定員に達する。どこにテントを張ってもいいが、トレイルから離れて幕営すること等、様々なルールがある。歩く体力やアウトドアの知識はもちろんのこと、ルールを守ることが大前提。自然保護への理解があるハイカーしか、歩くことが許されないのだ。

この時の私にとって、ジョン・ミューアトレイルは、憧れるけど遠い遠い雲の上のような存在であった。

それから2年間、国内外の色んな場所を旅したりトレッキングをしたが、いつも頭の片隅にジョン・ミューアトレイルの存在があった。

〜〜〜

ジョン・ミューアトレイルを日本語で調べるにあたり、目にするようになった1人の存在、それが故・加藤則芳氏だ。彼は日本のロングトレイルの第一人者であり、信越トレイルの立役者。そしてジョン・ミューアの自然に対する考え方に共感し、彼を敬愛していた。

加藤氏の著書「森の聖者 自然保護の父 ジョン・ミューア」では、ジョン・ミューアの生涯、特に尽力したシエラネバダの国立公園化について書かれている。

そして最後にジョン・ミューアトレイルについて言及している。その中の一部を抜粋させていただく。

毎年夏になると、数多くの老若男女のバックパッカーが、100年以上も前に、このシエラネバダの自然に魅せられさまよい歩いたジョン・ミューアへの思いを胸に、このロング・トレイルに挑む。ジョン・ミューアを読み、知り、シエラネバダに憧れやってきた人たちである。

(中略)

ジョン・ミューアが残した大きな功績のひとつは、国立公園であり、ウィルダネスであり、自然保護の思想であるとともに、自然の中にとけこみ、自然と調和して生きるアウトドアの魂を、このように後世の人々の心のなかに植えつけたことだろう。

ジョン・ミューアや加藤則芳氏が見た景色、彼らが感じたこと・伝えたいことを自分の中に取り込むことができるだろうか?感じてみたい、でも私にはまだ早い、そんな想いが交錯する。

迷っていた私が決心したのが、今年2月。鎌倉のゲストハウスで出会い、意気投合した人が、昨年このトレイルを女子2人で歩いていた。これは導かれたと思った。話を聞けば聞くほど、どんどん自分の中でリアルになった。景色を想像してワクワクした。歩きたい、私にもできるかもしれない、そんな気持ちが出てきた。

次の旅のラストは「ジョン・ミューアトレイルを全部歩くこと」と決めた。

できる限りの準備はした。経験者の友人から色々話を聞いた。5日違いで歩く予定の友人夫婦と情報共有した。三鷹にあるウルトラライトギアのお店「ハイカーズデポ」へ通い、装備の相談にのってもらった。ヨーロッパアルプスでは、テント泊装備で毎日高低差1000m以上を歩いた。スウェーデンのクングスレーデンでは幕営地の見つけ方や、川から水を汲んで浄水する作業に慣れた。カナダで再度、野生動物、特に熊に対する認識を持てた。

あとは歩くだけだ。

登山家でなければ専門家でもない、ごく普通の山が好きな女子が、1人で歩く340kmの旅。私にとっては令和元年の最も大きな挑戦だけど、自然界のなかではちっぽけなこと。疲れたら街でゆっくりしてもいいし、ダメだと思ったら途中でやめてもいい。アメリカのウィルダネスを感じてこよう。

憧れから実現することへ。不安はいっぱいあるけど、挑戦できる私は幸せ者だ。色んな思いを胸に、これからアメリカへ。



写真は2017年10月ヨセミテ国立公園にて

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