「コンビニから成人向け雑誌が消える」現実社会でもネット上でも加速するエロ排除

『減り続けるエロ売り場とエロ売り上げ』
セブンイレブンとローソンが、今年8月末までに成人向け雑誌の取り扱いを止めると発表し、話題となっている。ここでいう成人向け雑誌とは、いわゆる18禁の年齢制限が施されているものを指す……ようだ。
”ようだ” という言い方になるのは、線引きが非常にあいまいで、現時点では「何をどこまで」が把握し難いからである。

一部ではこの件を表現規制問題や、オリンピックを前にした浄化作戦の一環として捉える方もおられるようだが、私はそういった考えにはなれない。
そもそもコンビニのエロ本は昔と違ってたいして売れる商品ではなくなっていたし、売れない商品が棚から外されるのは当たり前だからだ。
そのようなたいして売れない成人向け雑誌のために、専用の什器を用意したりと、あれこれ手間をかけるのもバカバカしいという気持ちもよく分かる。

しかしながら、私が今回主張したいのはそんな話ではない。コンビニから成人向け雑誌が消える事については、売り場面積と儲けのバランスという商売の都合もあるのだから、外野が何を言っても止めようがない。むしろそんな話はどうでもいい。
本当にマズイ流れにあるのはコンビニの書籍コーナーなどではないのではないだろうか。もっとそちらに目を向けるべきなのではなかろうか。

例えば、こんな妙な現象が起きている。

都内なら秋葉原や新宿といった繁華街に、地方都市ならば街道沿いにある、AVとオトナのオモチャをメイン商品とする ”書店” は、年々その数を減らし続けている。
その主な理由はAV不況の煽りだろうと言われており、規制や弾圧が理由ではない。ネットでタダで無修正のエロすら見放題の今となっては、わざわざAVショップまで行って、お金を出して、AVを買う理由がないからだ。

ちょっと話がおかしいと思わないだろうか。

コンビニや本屋からエロが排除され続け、それについて表現規制だ弾圧だと騒ぐ声は多い。その一方で ”AVとテンガの専門店である書店” は経営不振で潰れ続けている。

エロ売り場が需要があるのに潰されているならば、もっと「今すでにあるAVショップ系の書店を助けよう」「AVショップを新たな拠点としよう」という声が挙がってもおかしくないだろうし、他の売り場が減った分だけ全国のAVショップの売り上げが右肩上がりになっていないと変ではないだろうか。

しかし実際はAV業界内でも「今まだAVショップなんかやってるヤツらは、良い時に逃げ遅れた負け組」程度に思われており、エロ業界の人間ですら「エロ系ショップは喰えない」と考えている有り様なのだ。

こうした問題の根底には、表現規制をしたがる連中がいるいないといった話だけではなく、もっと根本的な「性を悪しきものとする風潮」や「性への無関心」が横たわっているように思えてしまう。

早い話が、今の日本人にとって、リアル店舗でのエロ売り場が無くなっても何も困らないというだけなのだろう。

『ネットでも進むエロ排除』
ところが、こうした実店舗の受難と並行して、ネットでも ”とある流れ” が生じている事をご存知だろうか。

特に顕著なのはニュース系のサイトなのだが、現状のニュースサイトのビジネスモデルの大半は、Googleなどの大手ポータルに記事を拾って貰って、そこのニュースページに載せて貰う事で成り立っている。

例えば、私が久田編集長の媒体(日刊ナックルズ/東京ブレイキングニュース/TABLO)に寄稿した記事は、このように他のサイトにも掲載されている。

「秋葉原には児童ポルノや児童買春が溢れている」というデマを弁護士らが流すワケ
http://tablo.jp/case/society/news002104.html

※現時点で確認できる物だけ並べました

こうした転載・拡散が行われて、ビジネスとして成立する程度の広告収入が得られるというモデルになっている。

このポータル頼みのシステムはとても欠陥が多く、今やちょっとでも ”エロ” の要素が入っていると「あそこはアダルトサイトだ」と看做され、記事を拾って貰えなくなってしまうのだ。
もっと細かく言うと「エロを肯定する記事は載せられない」のであり、何か社会問題としてエロ・エロ業界を否定するならばOKという、意味不明の線引きすらある。

後はこうした ”エロ肯定” がどこからかという話になるのだが、現段階では明文化などされておらず、各媒体が頑張って自主規制をしているというのが正直なところのように思う。
例えばGoogleなどはアメリカ基準で線引きをするため、日本国内のサイトは日本の法律だけではなく「アメリカ様がどう考えるか」まで考えた上で掲載の可否を考える必要がある。
そんな事をやっていたら、そりゃ各ニュースサイトは「エロ系の記事を載せない」という方針になるしかない。ハナから載せなければコンプライアンス的な問題は生じないからだ。

しかし、それは商売の都合を最優先し「報道とはなんぞや」という根源的な部分を犠牲にするものであり、人々から「正しい知識を学ぶ場」を奪う行為でもある。

上の参考記事にもあるように、私は日頃から伊藤和子弁護士らが発するデマに対して非難し続けている。
だが、私程度がいかに騒いだところであの手のデマが止む事はなく、今も手を変え品を変え、様々な媒体に偏ったエロ叩きが掲載されている。

それもそのはずで、すぐ上でタネ明かしをしているが、伊藤弁護士らのように「社会悪としてエロをぶった切る」ならば、ニュースサイトも「エロ否定だからOK」と判断し、掲載する。

それに対して伊藤弁護士らのデマを非難する声は「エロ肯定」にならざるを得ないため、掲載を躊躇される。もしくは掲載を認めて貰えない。

これではまともな勝負になる訳がない。デマを垂れ流す方は無条件で様々な媒体を使えるのに対し、それに反論する側は声を挙げる場所から制限されているのだから。

エロに対する見当違いの批判・非難は、エロに対する偏見や無知、差別心などが元になっているケースが多々あるため、エロを守りたい側には社会問題について語るという固い方法論だけではなく、もっと柔らかく、ゆるく、「エロってこういう楽しいものなんですよ、もっと自由でいいんですよ」といった切り口でも情報発信する必要が出て来る。そうでなければ根本的な解決にならないからだ。

しかし、もうお分かりだと思うが、そんな方向性の記事をどこかに掲載して欲しくても、許可して貰える場がない。
よって、最初からエロ上等、グレー上等でやっているFC2のような限られたサービスを使うか、集客が見込めないと分かっていても自前のサーバにHPを作ってせこせこ頑張るかといった選択肢を選ぶしかなくなる。

だが、FC2ユーザーなどは「マ〇コ見たい」といった即物的な目的を持った連中が多いため、「オトナとしてエロ文化を楽しみたい」「正しい性知識を学びたい」といったやり方では商売にならない。
そんな理由があり、今や「エロを扱わない」か「エロをとことん過激化する」という二極化になってしまっているのである。

言ってみれば、世のエロ排除の動きは、こうしたあまりにも不健康・不自由そして危険な状況を生んでしまっているのだ。


『最も怖いのはステルス的に行われるエロ排除』
このように、エロ排除が進んでいるのは何もコンビニの本棚だけではなく、皆が使い慣れている、そしてリアル店舗に比べれば自由度が高いと思っているインターネット上でも同じ事だ。

しかもネットの場合は一企業のコンプライアンスが基準になっており、その業界の中にいる人間でなければ最新情報を知る事が出来ない。
何かある度にわざわざ会見を開いて「弊社のコンプライアンス変更により、今後はこういう基準で情報を扱います」などと教えてくれるなど有り得ないからだ。
よって、ユーザーが知る事なく、あくまでステルス的に「気付いたらそうなっている」「特定の情報だけ見かけなくなっている」という状況になってしまうのだ。
これは「売り場が無くなる」といった目に見えるものではないため気付き難く、加えてあくまで一企業の都合で行われるため止めるのも難しい。よって国が絡んだ規制うんぬんの騒動よりも、怖さは段違いに大きい。

このままではエロ系の創作物だけではなく、セックスワーカーをはじめとする裸の仕事に従事している人々の存在が、世の中から消される事になってしまう。そういうレベルの一大事が巻き起こっていると考えねばならないのではなかろうか。


【定期購読マガジンについて】
[内容] 元芸能記者、元AV監督などなど流浪の人生を送るライター荒井禎雄が、主に実体験を元に様々なジャンルの記事を書いています。
[特に高評価された時事ネタ]  表現規制問題 ・フェミニズム問題・セックスワーカー問題・ネットウヨク問題など
[フィールドワーク] 地域批評・商店街批評・グルメ
※主に東京23区の下町や商店街を中心に、その街の住みやすさや特色などについて解説します。
[料金]  月額500円(継続購入になりますので、購読を中止する場合はお手数ですが解除手続きをお願いいたします)
[更新頻度] 2018年11月の開設以来、毎月約20本の記事を掲載しています。 マガジン購入者限定のネット配信番組やイベントなども思案中ですので、ぜひ応援&ご購入よろしくお願いいたします。
[ご購入はこちらから]
https://note.com/oharan/m/me7f4e089bacd

皆様からの金銭サポートがあると、子育てに追われる哀れなオッサンの生活がいくらか楽になると思わせておいて、息子の玩具やお菓子や遊園地代で殆ど溶けます。