フェイクポルノに手を出すリスクを考えよう、歴史のお勉強をしよう

ARにディープフェイクに……これほど長生きしたいと思った事は無かった

つい先日、TwitterのTLにAR技術を使ったこのような動画が流れていた。
https://twitter.com/sanemrocks/status/1148119277834297349

なんだかもう近未来どころか100年先のSF映画でも見ている感覚になるが、私の息子(4歳)が中学生になる頃には一般化され、たとえばRPGツクールなんかにも流用されているんじゃないかと今からドキドキしている。

そんな事を考えている時に、ふと「そういえばdeep fake系のAI技術も凄い事になってるよな」と思い出し、何となく検索してみたところ、驚く事にアイドルや女優の顔と、AV女優の身体とを組み合わせた自作フェイクポルノを、堂々とネットで公開し、それをTwitterでガンガン宣伝している人物を発見。
作成、掲載、宣伝、全て自前で、逃げる気などサラサラないご様子。

いやいやいやいや、流石にいやいやいや!
お前死にたいのか、やめとけって。

まさか今となっては昔話になってしまって、過去にアイドルや女優のエロコラ(※1)画像を作ったり、雑誌に掲載したりしてた連中が、どういう顛末になったか知らないのか?

※1 エロコラ
エロ+コラージュ。アイコラの場合はアイドル+コラージュ。コラージュとはフランス語で糊付けの意味で、全く違う素材同士を合体させるといった意味で使われる。

エロコラ騒動を振り返る

海外事情まで語ると長くなるので(特にアメリカの児童ポルノ絡みの騒動とか)、ここでは日本で起きた出来事に絞って語る。

日本では過去に芸能人の画像とAV女優などのヌード画像や、AVのキャプチャー画像(もしくは現場スチール写真)を組み合わせた、いわゆる ”コラージュ画像” が大流行した。
2ちゃんねるには当たり前のようにアイコラ(厳密に言えばエロコラ)板があったし、アイコラサイトや2ちゃん以外の投稿型掲示板などもいくつあったか分からない。

ところが、ある時を境にそれらアイコラサイトや掲示板の類は全滅する。その理由は、民事刑事何件もの訴訟が起き、多額の賠償金を支払わされる者や、刑事罰を受ける者が続出したからだ。
最も有名なのは名誉棄損が成立したケース、他にはパブリシティ権や肖像権の侵害であると訴えられたケースもある。

中には「自分が作った訳ではなくとも、掲示板に貼り付けただけで正犯と同等と看做す」といった判決が下った例もあり、その解釈で言うならば場所の提供(アイコラ専用板といった形で銘打って場所を開放している場合)でもアウトなのではないかという事で、かの悪名高き2ちゃんですらリスクを恐れて一斉閉鎖の様相となったのである。

また、ほんの数年前には週刊実話(日本ジャーナル出版)が 「実質的にアイコラと殆ど変わらないヤラかし」 をしてしまい、音事協絡みのタレントを中心として連名で訴訟を起こされた。
それがなんと8,800万円もの賠償金を求めるという内容だったため、当時は話題になった(はずなのだが、もはやこれも忘れられているのだろう……)。

https://www.cyzo.com/2014/03/post_16609_entry.html
https://www.excite.co.jp/news/article/Bizjournal_201404_post_4582/

で、この裁判は流石に8,800万円という訳にはいかなかったが、合計で560万円と、それなりに痛い支払い命令が確定した(名誉棄損記事で1~200万円の賠償金という相場を考えたら激痛である)。

「週刊実話」のヌード合成画像、女性芸能人7人が勝訴 560万円支払い命令
https://www.sankei.com/smp/affairs/news/160629/afr1606290014-s1.html

記事の内容は、芸能人の写真と、妄想おっぱいイラストを合成し、適当な文章を載せるという、性欲爆発中の童貞中学生の発想かのような内容なのだが、これを裁判所は「限度を超えた侮辱行為である」と認めたのだ。

ただ、この時はパブリシティ権は認められなかった。その理由について、裁判官の判断を要約するとこのようになる。
「宣伝や表紙に使うなど、タレントの写真などが持つ影響力や求心力の利用を目的としていると認められた場合には、パブリシティ権を侵害するものとみなす」
週刊実話のケースでは、使われた写真こそ芸能人の物だが、それとイラストが合成されており、芸能人の肖像自体を商品としているとは言い難い点。加えて表紙や広告にその画像が使われている訳ではないという点から、パブリシティ権侵害にはあたらずと判断された。

という事は、この判例を元に考えると、芸能人の肖像を商品として、また宣伝材料として、客を集めるようなスキームにした場合、名誉棄損に加えてパブリシティ権侵害まで成立してしまうという事になる。

ここまではご理解いただけただろうか?

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