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背脂ラーメンの系譜……西のホープ軒、北の土佐っ子、じゃあ東はここじゃなかろうか(らーめん弁慶/浅草/ラーメン)

何世代か前のラーメンブームの際に、街道沿いのラーメン屋が各メディアに取り上げられた。夜中にタクシーの運ちゃん達が通っていたようなお店が中心だったが、その頃は何故か背脂ギトギト系のラーメンが持て囃されていた印象がある。例えば西のホープ軒、例えば北の土佐っ子。

その時代に、東の浅草(厳密に言えば堀切、小菅の拘置所のちょっと南東)にも背脂ギトギト系のラーメンで大人気だったお店がある。

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それがこちら、今も繁盛店として営業を続けている弁慶さん。
閉店時間の早い店が多い浅草にあって、夜中まで営業してくれている有り難いお店である。
場所は言問橋のすぐ近く、言問通り沿いなので、浅草の中心地からは微妙に離れている。そのため観光客は殆ど見かけない。


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この店のイチオシというと、昔と変わらずギトギトであり続けているラーメン。もっと脂が欲しければ「ギタ」と注文すると幸せになれるが、成人病が怖いのでオレはもうヤレない。

ご覧の通り、脂とモヤシが大盛りでパっと見ると二郎を感じさせるが、こっちは系統で言うならばホープ軒系である。乱暴に例えれば、ホープ軒の味をちょいとジャンクにして、モヤシなどの盛りを良くした感じ。

ただ、これほど脂が入っているのに土佐っ子系のお店のような強烈な主張はない。コクは充分に感じるのに意外とあっさりスルっと飲めてしまう、悪魔のようなスープだ(罪悪感を感じさせないのはこの場合ダメだろ!)。

細かい事を言うと、昔の弁慶はもっと塩味も脂っぽさも強烈なジャンク仕様で「このスープ飲んだらアタイどうにかなっちゃう!」という味だったのだが、今はそこまで身体へのダメージが心配になるジャンクさではない。それでも充分に美味しく、むしろ今の方がバランスはどう考えても良いと思う。


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で、弁慶さんは平日のランチ限定(だったはず)で、ラーメンに半チャーハンを付けられる。1,000円してしまうので額面的には少々お高いのだが、その代わり食べ応えは ”酷い” 。凄いではなく ”酷い” 。

なんせこのチャーハン、中に端切れのチャーシューのような肉が入っているのだが、これがホロホロに崩れたトロ肉コンビーフのような状態で、満腹中枢をギンギン刺激してくださる。
米の量は半チャーハンというだけあってそこまで多くはないはずなのに、モヤシ大盛り+ジャンク仕様なラーメンと合わさると1日分のお食事がこれで完結してしまう。

さらに言うと、なんとこのランチ限定のチャーハン、今でも弁慶の会長(屋台から創業した方)が本店の厨房で自ら作っているらしい。
※詳しくは刈部山本さんの記事で
https://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/kekkojin/18-00315

ちょうど山本さんの記事に会長がチャーハンを作っている動画があるんだけど、大量のコロ肉をぶち込んでいるw
そりゃ食い応えあるわな。

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ところがねえ、私がこの店で一番好きなのはラーメンでもチャーハンでもない。このつけ麺なのでございます。

以前何度か 「オレはザル中華みたいなつけ麺が好きだ!」 と吠えた事があったけれども、この店のつけ麺はザル中華成分を存分に補給できるオレ的スグレ物。

何が凄いって、商品名が 「さっぱりつけ麺」 なのに


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お前アタマおかしいだろ(誉めてる)

さっぱりつけ麺って書かれたら、醤油にお酢って感じのつけ汁かなと思うじゃん。なんだこの背脂の量。これ、こういうところね、オレが弁慶大好きなポイント(徹底して褒めちぎっている)。

ただ!

弁慶のつけ麺はハッキリ言って味のバランスとしてはイマイチである。脂っぽさとしょっぱさが立っているので、純粋に味の完成度だけで言えばラーメンの方が何倍か美味しいと思う。

でもさ、ピーキーな味でも個人的にツボにハマる事ってあるじゃん。オレにとっては弁慶の ”自称” さっぱりつけ麺がそれ。何がさっぱりなのか今でもよく分からないけど、とにかくコレが大好き。

という訳で、脂っぽさといい、チャーハンの絶望感すら感じさせる食い応えといい、つけ麺の塩!脂!でバランスが崩壊している味といい、クセの強い店だという前置きは必要だけれども、私の中ではここは間違いなく名店である。

[店名] らーめん弁慶 浅草本店
[住所] 東京都台東区花川戸2-17-9
[TEL] 03-5828-7355
[営業時間] 11:00~04:00
[定休日] 無休


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