こんがらがり続けるあいちトリエンナーレ騒動

まずは必要な情報をまとめるよ

愛知県で開催されている芸術祭『あいちトリエンナーレ』において、展示物の内容に偏りがあると猛抗議が発生し、なんやかんやあって文化庁が「補助金一切出さねえ」と宣言した。

当然の事ながら、これに対して表現の自由の侵害だとか、検閲だといった声が挙がっている。

まずは文化庁の発表から。

http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/1421672.html
補助金適正化法第6条等に基づき,全額不交付とする。
【理由】
補助金申請者である愛知県は,展覧会の開催に当たり,来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず,それらの事実を申告することなく採択の決定通知を受領した上,補助金交付申請書を提出し,その後の審査段階においても,文化庁から問合せを受けるまでそれらの事実を申告しませんでした。
これにより,審査の視点において重要な点である,[1]実現可能な内容になっているか,[2]事業の継続が見込まれるか,の2点において,文化庁として適正な審査を行うことができませんでした。
かかる行為は,補助事業の申請手続において,不適当な行為であったと評価しました。
また,「文化資源活用推進事業」では,申請された事業は事業全体として審査するものであり,さらに,当該事業については,申請金額も同事業全体として不可分一体な申請がなされています。
これらを総合的に判断し,補助金適正化法第6条等により補助金は全額不交付とします。

この文章の最後に出て来る 『補助金適正化法』 の内容は次の通り。(第6条のみ抜き出す)

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=27045000

第六条 各省各庁の長は、補助金等の交付の申請があつたときは、当該申請に係る書類等の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、当該申請に係る補助金等の交付が法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか、補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか、金額の算定に誤がないかどうか等を調査し、補助金等を交付すべきものと認めたときは、すみやかに補助金等の交付の決定(契約の承諾の決定を含む。以下同じ。)をしなければならない。

2 各省各庁の長は、補助金等の交付の申請が到達してから当該申請に係る補助金等の交付の決定をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該各省各庁の長と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該各省各庁の長に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定め、かつ、これを公表するよう努めなければならない。

3 各省各庁の長は、第一項の場合において、適正な交付を行うため必要があるときは、補助金等の交付の申請に係る事項につき修正を加えて補助金等の交付の決定をすることができる。

4 前項の規定により補助金等の交付の申請に係る事項につき修正を加えてその交付の決定をするに当つては、その申請に係る当該補助事業等の遂行を不当に困難とさせないようにしなければならない。

順番が前後してしまった感はあるが、トリエンナーレの騒動の経緯はwikiを見ておけば問題ないと思う。

超雑に話をまとめると、トリエンナーレの展示のひとつが政治的に非常に偏った内容で、これに対して各方面からクレームが殺到したと。中には脅迫事件として逮捕されるバカまで現れたと。
それを受けて政治・行政からも否定的な声が挙がるわ、実行委員会の津田大介らが参加アーティストに相談もなく中止を決めるわとズンドコ展開が続き、遂には冒頭の文化庁の「補助金出さねえ」に繋がったと。

何が問題なのか考えよう

必要な情報が揃ったところで、何が問題だったのか考えてみたいのだが、何だかもうグダグダ過ぎる上に争点が散らばり過ぎていて、まともに論じるのも難しい状況になってしまっている。
だが、そうしたこんがらがりまくった話を頑張って解きほぐすと、最終的に残るのは次の2点だと思う。

(1)展示物の内容
(2)文化庁の決定の正当性

(1)展示物の内容
まず展示の内容そのものを考えてみるが、これはもう実行委員会や責任者(芸術監督)に任命された津田大介らが選んだのだから「これで良かった」と言うしかない。後付けで外野がつべこべ言う事ではないだろう。
政治的なメッセージの強い作品、色々と問題のある作品、クレームなどの騒動を引き起こすであろう作品であっても、決してそれを理由に居場所を奪ってはならない。
↑大事な事なので太字で書いておく

ここで話を切ると頭が沸騰してギャーギャー言い出す人間が現われると思うが、あえてここではこれで話を打ち切る。
文句を言いたいヤツは一度深呼吸をして感情を殺して冷静に読み進めろ。

なぜ嫌悪感を抱く表現であっても守らねばならないのか
https://note.mu/oharan/n/n42140c8b45fd

手前味噌でなんですが、過去に無料公開してバズったこの記事を参考までにどうぞ。「表現の自由ってなあに?」という基本的なお話です。

(2)文化庁の決定の正当性
では次に「文化庁の補助金出さず」の決定が正しいものだったのかどうかを考えてみたい。これを考える基準になるのは、最初にコピペした文化庁の言い分と、『補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律』だ。
これらを読む限り、先に「予算を〇〇円出します」と話が確定していたのではなく、申請後の審査を通れば交付するよという事だったと読める。

その申請段階で [申請者の愛知県が「展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実」を認識しながら、問い合わせるまで申告せず、実現可能性や事業継続の見込みを同庁が適正に審査できなかった] というミスがあったと。

ようはクレームや脅迫事件といった「想定しうる結果」に対して適切な対処をせず、企画展が中止されるなど「税金を投じるには相応しくないほどグダグダになったよね」 という指摘だ。
文化庁の審査基準には、参加者や来場者の安全管理に関する項目もあり、今回の件はそこに思い切り引っ掛かっていると思われる。

こういう理由であれば、行政の手続きの流れとしては実はあまり違和感がない。むしろ「当然じゃね?」とすら思う。

という訳で、展示物の内容にも問題はなく、文化庁の出した決定にもおかしな点はないという結論になる。
だが、それじゃ納得しないという方が大多数だろうから、次にあえてバッサリと切り分けた(1)と(2)を合わせて考えてみたい。

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