見出し画像

我々夫婦が板橋区大山で一番好きな店(神谷/大山/魚料理)

私は生まれも育ちも板橋区の仲宿で、買い物や飲食はすぐ隣の大山という街を愛用していた。
仲宿も大山も、戸越銀座・十条銀座・砂町銀座(いわゆる東京3大銀座)などと比べると知名度はイマイチなのだが、それらに勝るとも劣らない巨大商店街で知られた街である。

そんな巨大商店街を中心として、路地裏まで含めると無名な街とは思えないほど膨大な量の飲食店がひしめき合っており、生存競争が厳しいため、必然的に生き残った店はどれも名店という、隠れたグルメ街と化している。

そんな仲宿・大山一帯の飲み屋の中でどこが一番好きかと問われたら、私も、そして私と一緒に板橋に10年以上住んでいた女房も、間違いなくここを挙げる。

『神谷』
外観を見れば分かる通り、えらい長いこと営業している古い小料理屋である。この店が得意としているのはお魚料理で、千ベロ系とはいかないまでも、かなりの大山価格。

また店内は「これぞ昔の酒場」といった趣きで、文化財にした方がいいんじゃないかというほど ”本物のレトロ” である。
ちなみに、本物のレトロなのは建物だけじゃなく、店の大将も女将さんも常連客も同様である。

これはだいぶ前にガラケーで撮影したものなので画質はイマイチだが、どんな感じの店か伝わると思う。
冬になるとこれに石油ストーブの匂いが加わり、なんというか尻に根が生える。この空間から出て行きたくなくなる。

魚が主力商品ということで、旬の刺身は定番中の定番。

ただ、この店の特徴として仕入れた魚はどれも刺身で食うか、焼くか、煮るか、はたまた揚げるかと調理法を選べるので、後に頼むメニューとの兼ね合いも考慮に入れるべき。

「え~アジは刺身で食べて~~、イカは煮て貰う?」なんてああだこうだ考えている時間がとても幸せ。しかも何を頼んでも(フグやウナギを頼まない限りは)高くたって6~700円程度だし、財布にも優しい。

個人的に、この店は刺身は当然なのだが、煮るとか焼くとか、ちょっと火を入れたメニューがオススメ。それだけ板さんの技術が確かだという事なんだと思う。例えば、何の変哲もないイカ煮なんかも、この店で食べるとシミジミ美味しいの……。

で、今回は煮魚役にタラを指名。甘すぎず、塩から過ぎず、とても塩梅のいい煮付けで、日本酒が進みまくる。

この日は夫婦+息子という3人編成で訪れたのだが、息子が「ボクやきとり食べたい」と凄いことを言い出した。
はあ?ある訳ねえだろ!と言おうとした瞬間、ネギマ串というミラクルメニューを発見。さすが、さすが神谷。

何この幸せを具現化したような絵は。

この店は地元の飲兵衛に長く愛され続けているお店だけあって、静かにお行儀よく呑むオトナが殆ど。なおかつ客の年齢層が高めなので、小さい子供がいても嫌がられない。

流石に19~21時くらいのピークタイムにガキんちょがいると迷惑だろうが、その時間帯さえ外せば子連れでも安心して飲み食いできる。
3歳や4歳の時点でこんな店を教え込んだら、将来どんなオッサンになるのか不安でならないというのが唯一の不安材料か。

余談だが、この日は無かったがこの店の最高のキラーコンテンツは手作りのさつま揚げだと思う。
常にある訳じゃないのが残念だが、この店の何たるかを知るのに最高の1品だと思うので、是非いつか巡り会っていただきたい。

[店名] 神谷
[住所] 東京都板橋区大山町14-5
[TEL] 03-3973-3675
[営業時間] 16:00~24:00
[定休日] 火曜
[備考] 近頃は近所に魚を得意とする居酒屋(しかもとても良心的な強敵)は増えたものの、それでも毎日常連客が訪れ、静かに楽しく呑んでいる。
本文中で「尻に根が生える」と言ったが、この店は大山という街に根をおろしており、もはや地元民にとって欠かせない風景になっている。
「こういうのが酒場ってもんだ」という答えを教えてくれる貴重なお店なので、もし興味があるなら外観にしり込みせずに一度入ってみて欲しい。


◇本の宣伝です
板橋マニアー板橋好きが案内する板橋まちガイド
https://amzn.to/2yEz1RS
監修:板橋区
価格:1,800円(税別)
[内容]
板橋のまちには、普段気づかなくても、視点を変えると見えてくる素敵なものがあります。
それを教えてくれるのが、あるジャンルに長けたマニアックな案内人。そのこだわりの眼で、板橋を案内してもらうガイドブックが誕生しました。ずっとここにあった、板橋の魅力たち。みなさんも、再発見の旅に出ませんか
[執筆者]
◇東京スリバチ学会会長・皆川典久(『東京「スリバチ」地形散歩』洋泉社)による「凸凹地形散歩」
◇団地マニア・大山顕(『団地団~ベランダから見渡す映画論』シネマ旬宝社)による「板橋団地ツアー」
◇グルメライター・刈部山本(「マツコの知らない世界」出演)が紹介する「板橋グルメの世界」
◇暗渠マニア・髙山英男&吉村生(『暗渠マニアック! 』柏書房)による「見えない川を探す旅」
◇境界協会主宰・小林政能(「ブラタモリ」「タモリ倶楽部」等に出演)による「区界探検・東西南北」
◇荒井禎雄(『魚屋がない商店街は危ない』マイクロマガジン社)による「板橋商店街の歩き方」.....などなど!

皆様からの金銭サポートがあると、子育てに追われる哀れなオッサンの生活がいくらか楽になると思わせておいて、息子の玩具やお菓子や遊園地代で殆ど溶けます。