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実は超大箱、私が愛するネパール料理屋TOP3のひとつ(アーガン/大久保/ネパール料理)

故郷の板橋区は何故かネパール料理には恵まれており、インド料理とはまた違うネパール独特の味や食材の組み合わせには慣れていた。
そんな下地もあって、大久保界隈で増え続けるネパール料理屋が気になってあれこれ入ってみたのだが、ある時衝撃的な店を掘り当ててしまい、それ以降大久保でのネパール料理屋開拓は事実上休止状態になってしまった。
何故なら、それ以外の店に行かなくなったからである。

大久保だったら、絶対に他にもまだ見ぬ強豪がいるはずなのに、そんな気になれないほど惚れ込んでしまったのだ。

それがこのアーガンさん……なのだが、大久保通りに面した立地なのにビルの入り口から絶妙にヤバイオーラが漂っている。何でこんなに不穏な雰囲気なのだろうか。
大久保通りのこの辺りは、コリアン系の店目当ての客で常に混雑しているのに、心なしかこのビルの前だけは人が避けて通るようにすら思える。

まさかこんなビルの4Fに絶品ネパール料理の店があるとは思わんよなあ。

だが、不穏なオーラを発しているのはビルの入り口だけで、いざ店の中に入ってしまえば非常に居心地がいい。女性でも何の問題もなく楽しめるはず。
特に窓側の小上がり席は眺めが良く、カップルシート的な席もあったりする一方で、実は奥に100人くらい座れそうなだだっ広い部屋もある(席数120、収容可能人数140人だそうだ)。
カップルで宴会で1人呑みでと、色々な使い方が出来そう。

で、この店は大箱だからいいよなんて話ではない。
まずこのメニューを見て欲しいのだが、よくある大皿にあれもこれも乗せられてくるセットメニューが妙に充実している。高くても1680円、安い物だと500円という衝撃的な価格設定だ。
で、上の方の説明書きをよく読んで欲しいのだが、この店は「民族ごとのセットを出して来る」のである。ネワール族がよく食べてる料理のセット、タカリ族のセットと、こんな分け方をしてくれる店なんか他に知らない。

しかもネパールのそばがきのセットとか、聞いた事もない物も普通に通年食べられるのである。

そういう店だからか、店内は日本人率が低く、ネパールのひとなのかなと思われる男女が大勢やって来ている。エスニック系の飲食店で、その国のひと達が食べに来るって、そりゃもう名店の証だよね。

で、だいぶ前から何回も通っているオレ様が観察した限り、同郷と思われるお客さんが好んで頼んでいるのは、実はこの500円のセットだと思う。
そういうお客さん達からすると、この店のこの500円セットって、早い話が松屋の牛丼みたいな物なんじゃなかろうか。もしくは近所の食堂の定食みたいな。
大量に盛られた米、チキンカレー、豆カレー、漬物と生野菜というシンプルな構成ながら、満足度高し。

欲を言えば、これに何か適当な1品料理を足せば、自分なりのオリジナル定食が完成するんじゃなかろうか。
お腹を埋める事だけ考えたらこれだけで充分なんだけど、色々とネパール料理の神髄を楽しみたい的なモチベーションの場合は、このセットを2人で分けて1品料理をアラカルトで頼むなんて使い方が賢い気がする。

こちらは500円セットに比べるとだいぶハードルが高いネワール族セット。中央に干し飯が盛られ、その周囲にスパイシーなお惣菜が添えられている。
で、これを頼んだ時が生憎の繁忙期で店員さんが忙しそうで食べ方を教われなかったため、何が正解なのか分からず苦労した。
おそらく、干し飯なので脇に写ってるスープをかけて、コーンフレークみたいにして食べるんじゃないかと予想したのだが、正解やいかに。

さて、これらセットメニューの紹介で、この店がいかにマニアックかつ、ネパール料理である事にプライドを持っているかは伝わったと思うので、そろそろ1品料理の紹介に移る。

上:ムラコアチャル(大根の漬物)withパパド
下:アルコアチャル(ジャガイモの漬物)
こちらは両方とも350円とお値打ちのスピードメニュー。ちなみにパパドはお通しで出て来る。
アチャルはスパイス感が強く、割と辛めのタイプ。店によっては食べやすい辛味の殆ど無い物もあるが、ここのは小さな子供には厳しいかなという刺激があるので注意。
ただ、酒を呑むオトナからすると、この辛味が旨いんだよなあ。

余談だが、ウチの息子はパパドを齧らせておけば大人しくしてくれる良い子である。そういえば赤ん坊の頃からパパド好きだったなコイツ。

串焼き盛り合わせ 950円
よくあるタンドリーチキン的なお肉を焼いたメニューなのだが、私がオススメするのはこの盛り合わせ。とりあえずこれを頼んでおけば、食事としても酒のアテとしても鉄板。

ただ、この店のズルイところは、粉物が総じてヤバめの旨さな点である。お肉や豆・野菜メニューを色々と食べたいのはヤマヤマなのだが、どうしても粉物メインの注文になってしまう。

モモの盛り合わせ(小)900円
アーガンのヤバイ粉物シリーズ第一弾。このモモは卑怯である。ただでさえノーマルのモモが美味しいのに、それをスパイシーソースにまみれさせてみたり、揚げてみたり、それぞれ全く違う味わい方をさせてくれる。これはアイデア商品だなと思う。

また、1個がそれなりのサイズで、それが8個くらい乗って来るため、1人で行った時にこれを頼むと一発で試合終了になる。せめて2人以上いる時に頼もう。(小でこの量なのに1400円の大だと何が出て来るのだろう)

ひき肉の入ったパラタ(薄焼きパン)480円
パラタシリーズもプレーン・ひき肉・ジャガイモと種類があり、この店の特徴は選ぶ楽しさじゃないかなと。
これは辛さがないお総菜パンのような物なので、子供にも安心して食べさせられる。

粉物に入れていいか微妙(というか明らかに麺類)だが、ネパール焼きそばも旨い!

まだ紹介し切れていない粉物も、クレープみたいなのとか、お好み焼きみたいなのとか色々とあり、どれも美味しいため、この店に行くといつも腹の容量を考えながら取捨選択に悩まされる。
結果的に、粉物を食べ過ぎて「カレーは頼まなくてもいいか」という日すらあるほど。

私の大好きなネパール料理屋ツートップは、今のところ板橋区大山のマナカマナと、今回のアーガンなのだが、どちらも「カレーを食べなくても大満足」「異常なコスパ」という共通点がある。
マナカマナもアーガンも、1皿の量がそれなりにあるのに安く、「この価格なら大した量じゃないのでは?」と、値段を根拠に量を予想して、色々と頼んで大失敗するタイプだ。

また、カレーを頼まなくても満足できるという事は、インド・ネパール料理屋によくある「とりあえずバターチキンカレーあればいいんでしょ」的なメニュー構成ではないということ。
ネパール人が日頃食べている料理をそのまま出したい、ネパールの食文化を日本人に教えたい、そういう想いが伝わって来る。

個人的には、こういう良心的なお店が、それこそ町の食堂のように定着してくれたらいいのになと思う。
エスニック系の店って、お店の従業員がいつまで日本にいてくれるか次第なので、別れが突然やって来るのが悲し過ぎる。

という訳でがんばれアーガン、食い支えるぞ。


[店名] ネパール民族料理アーガン
[住所] 東京都新宿区大久保2-32-3 (4F)
[TEL] 03-6233-9610
[営業時間] 11:00~23:00
[定休日] 年中無休(不定休)
オフィシャルサイト:https://akr1754865689.owst.jp/

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