第10回 リンダグラットン教授(1)

ロンドンビジネススクールより、リンダグラットン教授をお迎えした第10回の文字起こしになります。お楽しみください!

のりぞー:本日は、ロンドンビジネススクールより、リンダグラットン教授にお越し頂いています。
えり:リンダは人材論、組織論の世界的権威で、「ライフシフト」や「ワークシフト」の著者でいらっしゃいます。皆さんもご存知かと思いますが、現在政府が主導する「人生100年時代構想会議」のアドバイザーも務めていらっしゃいます。
のりぞー:今回は、せっかくの機会なので、リスナーのみなさまから頂いた質問をリンダにぶつけてみました。
えり:質問を沢山頂いたので、何回かに分けてお届けできればと思います。なお、リンダの時間が限られていた為、日本語の収録は別撮りをしており、英訳の合間に挿入する形になっています。
二人:それではお楽しみください。

リンダへのインタビューは貴重な機会なので、リスナーの皆さまに質問を募集させて頂きました。質問を通し、リンダの100年人生のコンセプトが日本でも大変ポジティブに受け入れられている事を認識しました。
一方で、日本の現実と100年人生の間には大きな隔たりがあり、そのGAPをどう埋めるか、また、長生きしていくにあたり、どういう心構えが必要か、個人の観点での質問が多かったです。
加えて、会社側の観点から、どのように100年時代に適応していくべきか、というご質問も頂きました。今回はそのGAPにどう向き合っていくべきかを中心に質問していければと思います。

質問1:30代女性 匿名希望(300~1000人規模の会社所属)
子どもが風邪をひいたなどの理由で早退を何度か繰り返していたら、理解のない上司に非常識だと責められ、部署異動をせざるを得ませんでした。これが日本の現実であり、リンダの概念にはすごく憧れますが、そこにたどり着ける気がなかなかしません。日本で本当に100年戦略を実現出来ると思いますか?

リンダの回答:
素晴らしい質問を有難うございます。私が40年前に若手女性として働き始めた頃、イギリスでも全く同じ状況でした。当時のイギリスでは、女性が子供の面倒を見て、男性が働くということが普通だったので、今の日本と同じように、女性が時短を取得したり、休んだりすることは普通ではないと思われていました。
当時は、男性は働き、女性は子供の面倒を見るという時代でしたが、時代と共にイギリスは変わり、今では男女ともに子供の面倒を見るのが普通になっています。企業文化が変わったことと、政府が男性の育休を推進して、男性の育休が増えたことが理由です。

だから、日本でも必ず変わります。そして、その変化を起こすのはあなたの様な一般女性です。では、どうやって変化を起こすのでしょうか。


一つ目は、家族の中の変化です。旦那さんと、誰が育児をするのか、つまりどうやって育児を分担するのか旦那様と話し合いましょう。彼があなたを助けられるようにしてください。


次に、会社の中の変化です。上司に対して勇気を持って、自分にとって育児が重要であることを伝えてください。


最後に、日本社会全体を巻き込んで、働く女性を受け入れる様に働きかける必要があります。これは景気が停滞している日本にとって、とても大事なことです。なぜならば、人口の半分を占める女性を、フルに活用してこなかった事も不景気の一因なのです。よって、政府の観点からしても、あなた個人が活動をすることは、とても大切な事なのです。


この様な事象に直面すると、自分だけがそういう思いをしているのではないかと思ってしまいがちですが、同じ思いをしている女性は沢山います。このポッドキャストの様に、同じ思いをしている女性たちが手を取り合って一緒に働きかけを行う事が出来れば、変化は必ず起こせます。


質問2:20代男性 Yu Koriyamaさん(300~1000人規模の会社所属)
長時間労働が評価される日本の職場環境についてです。生産性について、短時間で高いパフォーマンスを出すことがベストだと思いますが、身の回りではまだまだ長時間労働(人よりも多くの仕事をこなすこと)で成果を上げている人が評価されていることが多いと感じています。
特に日本では疲れている様子を見せずに早く帰宅する人は‘まだまだやれる’‘全力を出していない’と思われがちだと感じています。これはあくまで自分の主観です。このような価値観を改善していくために一社員が出来ることは、自らが短時間で高いパフォーマンスを出し、周囲を認めさせるしかないと考えているのですが、リンダは他にどのような考えを持っていますか?
(補足)
リンダは著書の中で、働きながら学校に行ったり勉強したりすることを推奨していますが、それを実際に日本人のサラリーマンがやろうとすると、「あいつなんで5時半に帰っているんだ?」と言われてしまいます。
それがイギリス、特にヨーロッパに来てみると、終業時間になるとみんなオフィスから消えます。興味ある業界の集まりに顔を出したり、家族サービスをきちんとしたり、仕事を夜遅くまでするという文化が日本ほどありません。
このような状況も含めてリンダに質問してみました。


リンダの回答:
日本人の働き方については世界の人々は驚いています。世界中にこんなに長く働く人は他にはいません。
なぜ日本人が長く働くのか、主な理由としては産業革命の後、日本の社会が成熟していく当時は工業が中心の社会で、長い時間働くほど生産量が増える、だから長く働くことは良いことだ、という考えが常識でした。


しかし、今の日本の社会は知識を基盤としているので長時間労働をして休暇を取らないというのは、実は生産性の低下に繋がっています。
日本の、長時間働くということに重点を置く考え方は実は間違っています。
これは研究結果からも明らかで、長時間働くことがいいことだと証拠は得られていません。会社としてもこういう働き方を是正していくべきだし、政府もきちんと介入していくべきです。


ここでも先ほどの質問の答えと同じことを言いますが、変わっていくはずです。
質問者は今すごくストレスを感じるかもしれません、なぜなら目の前で変化しているということはなかなか分かりづらいからです。
しかし必ず変わります。もっと多くの人が決められた終業時間に職場を出るのが普通になっていけば、職場環境はよりよくなっていくでしょう。


のりぞー:この答えはショッキングといえばショッキングだよね。要は知的労働に向いた働き方をしていないわよね、あなたたちということですよね。どちらかといえば肉体労働的な考えで労働というものを捉えているし、習慣化しているということだと思うな。
えり:社会はとっくの昔に変わっているのに、働き方だけが変わっていないということだよね。
のりぞー:とはいえ、言っていることはわかるけど、じゃあ実際どうすればいいの?というところをリンダに追加で質問してみました。

追加質問:
具体的に企業は長時間労働を是正するためにどういうことをすればいいのでしょうか?例えば18時に強制的にオフィスの電気を消して社員を追い返すことは効果的なのでしょうか?


リンダの回答:
悪くないと思います。経営者層が長時間労働は良くないと思っていることを、従業員に伝えるツールとしては悪くないと思います。
しかし、もっと効果的なのは、リーダーが行動を変えた姿を見せることです。もし残業をやめて、部下に退社を促したいのであれば、リーダー自身がロールモデルとして、それを実践してその姿を見せるべきです。それによって組織は変わっていきます。


質問3:20代女性 西クルミさん(300~1000人規模の会社所属)
日本の女性が出産を機に職場に戻ってくることはなかなかありません。彼女たちは(企業が)雇ってくれないといい、企業側は短時間での勤務だと採用できないといいます。
企業で働くものとして、日中十数時間の勤務だとお任せできないと採用を躊躇します。初めから短時間しか働きませんという彼女たちの主張は甘いのでしょうか?改革すべきはどこからだと考えますか?
(企業側は本当は雇いたいのに、時短ですと言われると、時短じゃない人と比べたらそちらを優先することもできなくて、もどかしいですという思いも後ろにありそうだと感じたので、それも含めて質問しました)

リンダの回答:
私も会社を経営しているので、そのジレンマはよくわかります。
しかし、採用したい候補者を採用すればいい、気にしなくていいです。
もしその候補者が柔軟性を求めるならば、時間に合わせて給与を減らせば良くて仕事が出来ればOKなのです。
ワーキングマザーが仕事との繋がりを切らさないように応援することが大事です。私が経営者として働くママ達を見ていて感じたことは、彼女たちは戻れる環境があるなら戻りたいと思っています。


ヨーロッパでは女性が出産を終えて仕事に戻りたい人を歓迎しています。赤ちゃんがいてなかなか長時間働けない場合は、例えば週3回にするとか、時短にするとかフレキシビリティを持たせて、仕事とのつながりを維持してあげます。
そして1番いいタイミングでフルタイムに戻れればそれでいいのではないでしょうか。
とにかく1番良いと思った候補者を選べばそれでいいのです。

短期的にはそれは職場のコストになるのではないでしょうか?

リンダ:それは時間に合わせて給与を支払えばいいだけなので、それはコストではありません。経営者としての回答もありつつ、一般的にヨーロッパではそういう考えです。


【まとめ】
のりぞー:ということで今回は3つの質問についてのリンダのコメントをご紹介しました。
えりちゃん、どうだった?
えり:リンダの一言一言がすごく力強いメッセージとして伝わってきました。他人ごとじゃなくて、自分ごととして捉えて努力して頑張っていきなさい、と応援してもらった気がしました。
のりぞー:大学の小さい会議室で収録したんだけど、部屋がパワーで満ち溢れてたね。
えり:あともう一つ感じたのは、考え方がすごくシンプルだなと思いました。例えば時間に制約があるのならば、その時間に合わせて(給料を)支払えばいいじゃないということとか、そうなんだけどなんでそれが難しいのかなというところもまた考えなくてはならないよね。
のりぞー:40年前はイギリスも今の日本と同じ、ということに驚いたかな。今の状況は全然違うけど、 40年でここまで変われるんだと思いました。イギリスが40年前から今にかけて、どのように変わっていったのかっていうのを事例としてケーススタディーをすれば、日本も参考になることがあるかもしれないよね。
一方で、個人でライフスタイルとか企業文化を変えたいと声を上げるというのは、日本企業ではまだ難しいと感じたんだけど、どう思う?
えり:会社にいて、ってことを考えると、(声を上げることで)自分が孤立しないかとか心配になっちゃうよね。
のりぞー:自分の権利ばかり主張して義務を果たさない(と思われそう)。声を上げるためにはよっぽど優秀でものすごい実績を残していないとプレッシャーを感じてしまうかも。
えり:まずは個人が声を上げられるような雰囲気にすることと、評価する方法を変えていかないと難しいのかもしれない。
のりぞー:仕組みというところと、あとはそれを受け入れる人々の文化やマインドセット、そのセットでいかないと難しいかもね。

えり:次回以降は、日本企業の上下関係とか、個人として社員がどうふるまうべきなのか、などについてお話伺っていきますので、楽しみにしていてください。
二人:それではまた、次回~、さよならー。

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